片想いから始まるファンタジーがあってもいいじゃないか！～～幼馴染をはじめ、誰からも拒絶され病んだオレが勇者となり、苦難を乗り越え世界を守って、マジメに真摯に勇者ハーレムへ突き進む物語

第29話 何揉んでんだ？！

　護道は、バットでレフトスタンドを指し示した。

　あそこへ入れるぞって、ことなんだろう。

　あいつ、バカじゃね？

　また、それに呼応するように歓声が上がり、護道コール。

　アイツ等も、バカじゃね？

　勝手にやってろよ！

　そして、早く構えろ！

　っていうか、今すぐ投げろ！！

　インプレーなんだからな！！

　一球目、投げた！！

　はあ？

　ど真ん中？

　しかも、おっそいカーブじゃん！！

　護道は、しかし、タイミングが合わなかったのか、唸りが聞こえてくるような大きな空振りをした。

　ふふふふ、あはははは、バカじゃねーか、やっぱ。

　と、心の中で思ったが、佐山は、なるほどと言った。

「なんで、なるほど？」（オレ）

「いやさあ、あの護道の振り方って、ストレート系には強そうだろう？それに、あんなカーブは、打ったことがないんじゃないかな？」

「それに、アイツ、器用じゃないかもな」（飯野）

「緩急に弱く、変化球にも弱い？意外と、おっそーい球は打てねーかもな。なんでも打てるってヤツでは無さげだぜ」（幸助）

「ふぅ～～ん」

　コイツ等、一球見ただけで、そこまで考えてるの？

　野球が好きなんだな。

　だが、オレが護道を三振に取る方法は、もう考えている。

　後は、練習するだけだ。

　チョットしかしないけどな！

　護道にどんまいコールが鳴り響いた後、２球目が投じられた。

　今度は内角低めへのフォーシームだった、球は遅いけど。

「ガキン！」

　鈍い音がして、ピッチャーゴロに終わる。

「きゃーーーーーーーー！！！！」

「護道、おしいいいーー！」

「おしいぞ護道、おしいぞ護道、悔しいぞ護道！！」

　子分が、護道の気持ちを代弁して言ったのには笑えた。

　護道は、なぜか、バットを睨みつけていた。

　そして、バットを地面に叩きつけた。

　手が痛そうだった。

　護道、金属バットに八つ当たりしても、自分の手を痛めるだけだぞ、バカめ。

「で、佐山、何がわかった？」

「見ての通り、護道が凡打したことが、藤堂の時にバットでズルをしたことの証明だよ。あの時も、内角低めのフォーシーム。ほぼ同じコースで、またもバットの芯より手前に当てたよね。でも、結果は、全く違って今度はピーゴロ。もう、疑う余地なしさ」

　後で、詳しくその話を聞き、田辺中の面々は佐山のファインプレーを褒めたたえた。

　しかし、オレは、そんな話を聞いても、護道へのリベンジの方法を変えるつもりはなかったので、その事はどうでも良かった。

　ただ、護道のヤツが、以前と変わらず、卑劣でクソなヤツって事がよくわかった。

　そして、次は、何が何でも勝つっていう闘志が沸々と沸き上がるのだった。

「じゃあ、待ってるから！」

　早苗ちゃんは、そう言って、他の女子マネの所へと駆けて行った。

「おい、藤堂、お前、早苗ちゃんと・・」（幸助）

「まあ、まあ、幸助。悪いけど藤堂、オレ達もマックに行くんで、一緒に行こうぜ」（飯野）

「向こうに着いたら、席は一緒でなくていいからね」（佐山）

「うん？早苗ちゃんは、奢ってくれるらしいだけで、一緒に食べるとかは約束してないから、お前らと一緒で構わないけど？」

「はあ？おまえ、鈍感なの？」（飯野）

「いいじゃん、いいじゃん！藤堂もそう言ってることだし、とにかく、みんなで行こうぜ！」（幸助）

「お腹空いたね」（佐山）

　で、マックにて。

「あっ、早苗ちゃん。待った？」

「あっ、藤堂君！」

「えっ？なに？早苗、藤堂君と仲良しなの？」（トモエ）

「えっ？ううん、まだ仲良しってわけでは・・・」

「まだ？じゃあ、仲良くなりなさいよ！」

　そう言って、トモエは早苗ちゃんをオレへと押しやった。

「あうっ！」

「えっ？」

「キャッ！」

　早苗ちゃんの顔は、みるみるうちに真っ赤なった。

　オレは、早苗ちゃんの柔らかなムネの感触を手に感じていた。

　あろう事か、咄嗟に出したオレの両手の手の平に、早苗ちゃんの両ムネがすっぽりと！

「とうどう〜！お前、何やらかしてんだよ！」（幸助）

「あら、藤堂君て、以外と大胆！」（トモエ）

「なに、ずっと、揉んでんだ！」（幸助）

「あっ！ご、ごめん！」

　オレは、慌てて手を離した。

　えっ？

　視線を感じた。

　右斜め後方からの痛い視線・・・。

　見ない事にしよう！

　気がついてない事にしよう！

　知らないフリだ。

　これは・・そう・・事故なんだ。

　ワイワイ言ってるオレの周囲とは別に、オレの頭は冷静だった。

「えっと、二階に行こうか？」

　し、しまった！

　冷静ではなかった！

　振り向かないと二階に行けない！

　振り向いちゃダメだ！

　でも、振り向かないと！

　オレは、暫し、葛藤していた。