第18話 じゃあ行くぞ!

「ちょっと、4,5球投げてから勝負だ!」


 オレは、キャプテンのモーションと球の軌道をインプットした。


 野球は、TVで見て覚えた。

 投げ方、打ち方、守備の仕方など。

 もちろん、ルールも。

 そして、ソフトボールとは違い、ボールが小さいので、飛ばす事よりも当て方が問題だということがわかっていた。

 どんなスウィングでも、上手く当てれば飛ぶ。

 バットを操作する自由度はソフトボールの時よりも高い。


「じゃあ、行くぞ!」

「はい」


 イメージしろ!

 そして、予測しろ!

 オレは投球モーションの仕方、腕を振る速さと角度、方向などから予測し、イメージの修正を即座にする。


 最初から変化球などは却下だ。

 つまり、ストレート系しかない!


 来る!

 ボールの握り確認。

 ボールの動きを確認。

 オレの目は、集中力をアップさせたチカラで見ることにより、投げられたボールが遅く感じられた。

 その為に、冷静に分析し、対処する。


 ボールの方向、速度、回転など、ほぼ予測通り。

 ボールのスピードが遅いので、遅く始動し、スウィング速度は速めに。



 フルスイーーング!!


「カキーーーン!」


 澄んだ良い打球音が響いた。

 予測通り。

 イメージ通り。

 真芯に当たったので、気持ちが良い!


 レフト方面にある柵の遥か上を越えて行った。


 そこは裏山の斜面になっているところだった。


「よく飛んだなぁ」(幸助)

「スゲェー!」(その他の人)


「ナイスバッティン!」(早苗)


「キャプテン、サービスしすぎだよ!」(翔子)


「まぐれにしても、飛んだなぁ。よし、次は本気で行くぞ!」


「えっ?1打席じゃあなかったんですか?」


「うん?今のはウォーミングアップだ!常識だろ?」


「そうよ、キャプテン、頑張って!」


「藤堂君、頑張って!」


 〜〜〜ここからは、女子だけの会話

「早苗ちゃん、お兄さんの味方じゃないの?」

「えっ?違います!」

 キッパリと早苗ちゃんは、言い切った。


「じゃあ、賭けをしない?お兄さんが勝ったら、私とデートをするようにお兄さんに言ってね。お兄さんが負けたら、私がお兄さんのアンダーシャツやアンダーパ、パンツを洗ったげるわ」


「えっ、いいんですか?」

「いいよ!」

(逆に良いんですかって?なんか、わたし、良い提案をしたみたいじゃない?)


「じゃあ、勝負です!」

 早苗ちゃんは、藤堂の勝ちを確信しているかのように、即断した。


 〜〜〜女子トーク終わり


「キャプテン、それでは、何か賭けませんか?」


「うん?何を賭けるんだ?」


「もう一度オレがホームランを打ったら、今見学している体験のみんなをホントに体験させてやってください。オレが打てなかったら、オレはキャプテンの下僕になります。どうです?」

「お前を下僕にしてもなぁ?・・そうか!ちょっとこっち来い!」


 〜〜〜男同士の秘密の会話

「お前、モテるよなぁ?モテないとか言わせねーからな!だったら、お前、女を1人でいいから寄越せ」

「寄越せって言われても」

「まあ、つまりだ、アレだよ!紹介しろって事だ。そうだ、アレだ、Wデート的な?グループ交際でも可だ!どうだ?お前に取っては簡単な事だろ?」

「ええ、まあ、そんな事ならお安い御用ですよ、先輩。でも、オレ、負けませんけどね」

「よし!よし!決まりだな!」

 〜〜〜男の会話了




「チーフ、ここだけの話し、早苗は、藤堂君の事、中学の時から好きなんですよ」

「えっ!そうなの?」

「やめてよ、トモエ。そんなんじゃないから」

「ほら、赤くなってる」

「そうなんだ〜。でも、早苗ちゃん、ダメだよ、藤堂君を好きになったら!」

「チーフ、なぜです?チーフも兄の事」

「しっ!これから真剣勝負が始まるよ!」


 そう、これから真剣勝負が始まるのだった!


 オレは、たぶん、さっきよりは少し早目のストレート系で、ホームランを警戒して低めに来るだろうと予想した。


 モーションを見る。

 やはり、ちょっとチカラが入っている。


 腕の振りを、なに!!


 オレは、予想を捨てた!

 オレの予測だと、これは!!


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