第17話

 行こうとしたら、護道の友達も一緒に来た。


 コイツ等は、ひょっとして?!


 思い出せない。


 オレを羽交い締めにしたヤツ等なのか?


 護道の子分みたいだけど?


 オレは、今後、この2人の護道の友達にも注意を払うことにした。



「ちーす!」

「ちーす!」

「ちーす!」


 なんかの宗教か?

 オレ等は、部室に入った。


 結構、散らかってた。


 なんか、独特の、オトコ?の臭いが?

 いや、足の臭いヤツが居るに違いない!


 と、ここに女子が入って来た!


「はいはいはい!ちょっとどいて!」

 スプレーを撒き散らす!


「もう、キャプテン!いつも言ってるでしょ!部員達をしっかり躾けないと、私達が困るんだからね!わかった?」


「ああ、ごめんよ、翔子しょうこ!厳しく言っとくから」


 こう言ったキャプテンに、翔子さんは、あろう事か、持っている消臭スプレーをかけた!


「まったく!頼んだからね!」


「ホントにもう!・・あれっ?ヤダ、護道君居たの?それに、あら、この前の?」


「どうも、翔子先輩!お世話になっています!」(護道)

「どうも」


「やったー!入部だよね!君、入部だよね!おーい!早苗ちゃーん!また入部だよ!早く用紙持って来て!」


「いや、その」

「で、何組の子?もしかして、護道君と同じ特進?」


「そうです、翔子先輩。藤堂っていうヤツなんです。体験希望です」


「えっ?そうなの?あっ、私、江崎翔子えざきしょうこ。あっ、来た来た。で、この子、後藤早苗ごとうさなえちゃん。キャプテンの妹さん。可愛いけど、手を出したらダメだよ!」


「どうも、後藤早苗と言います。よろしくお願いします」


「ああ、こちらこそ、藤堂カズトです。体験希望です。よろしくお願いします」


「えっと、カズト君は、中学の時、何番打って、どこ守ってたの?」


「あの、野球って、した事ありません。見るだけでした」


「えっ?・・・・大丈夫かな?」


「翔子先輩、コイツ、とりあえず体験だから」


「うん?ああ、そうよね。じゃあ、早苗ちゃん、彼、案内してあげて」


 グラウンド脇に移動した。

 服も着替えないとは、体験させる気が無いのはミエミエだ。


 なんて扱いをする部なんだよ。


 それと、先輩を紹介するとか言って、護道、お前、何もしてくれなかったよな。


 お前は、やっぱ、変わってねーよ!

 好きな女子の前では、いい格好して、本性はクソだ!


 最初は、紫苑の事なんか見向きもしなかったのに、なんか小5になってから胸も膨よかになってきて、急にペッタンな地味な感じから、体型に合う女性らしい服に変えたら、見る目が変わったよな。


 元々、笑顔が可愛いし、いつもニコニコしてたけど、それが更にパワーアップした感じになって、いつの間にか、紫苑はクラスでも早乙女と人気を二分していたよな。


 護道はその時から急にシオンへの態度が変わったな。


 そういう奴なんだよ。

 それが護道なんだよ!

 なんで、紫苑はわからねーのかな?


 いや、わかってるんだよな。

 そういうヤツだとわかってても、今、付き合ってるんだよな。


 しかし、アイツの顔がイケメンになったからってだけで付き合うのか?

 いや、人気になったアイツの彼女というポジションが居心地が良いから付き合っている?

 そうだろうな、紫苑は猫被りで、外面を良くするヤツだからな。


 それに、オレのことなんてどうでも良かったから、オレが何かをされていたっていう過去の事は、別に自分には何も関係ねー、どうでもいい過去の事なんだよな。


 ずっと、バカな女に片想いしてたよ、オレは。


 だが、見てろよ!


 そんな事をまたしても考えながら、見る気も無しに練習を見ていた。

 他にも、3人、オレと同じ様に体験してた。


「あの~、君って藤堂君だよね?覚えてる?オレ、田辺中のエースだった藤原幸助ふじわらこうすけ

「ああ、君、エースの・・・・」

 知らねーけど、そこは高校生らしく大人の対応だ!


「うん、君にはソフトボールの授業で、ホームランを打たれたのを今でも覚えてるんだ。藤堂君、キミ、野球部に入るの?君が入るんだったら、僕も入ろうかな。絶対に面白くなりそうだし」


「う~~~ん、まだ決めてないんだけど」


 その時、護道が大声でオレを呼んだ。

 その横には、なぜか、あの後藤早苗が居た。


「藤堂!!ちょっと来てくれ!」


「なんだ?」


「キャプテンが、お前のことを少し知ってたみたいで、ちょっと打ってみないかって。どうだ?」


「いいの?」


「ああ、その恰好で良いってよ」

「藤堂君、がんばってね」(早苗)


 キャプテンが投手になってくれるらしい。


 部の練習は、今、一休みしているところだった。


「ホントは、面倒なんでこんなことはしねーんだがな。いいか、1打席だけ、サービスしてやる。田辺中で噂だったスーパーマシ―ンを見せてみろよ!」


 このキャプテンは、どうやら田辺中出身だったのか?

 スーパーマシーンとか言うし。


「いつでもいいですよ」

 軽く素振りをして言った。


 オレは、練習など見るつもりはなかったので、つい、マイナス思考の闇に入ってしまっていた。

 そこから、急に解放されたので、藤原幸助に感謝しつつ、そして、このキャプテンにも感謝していた。


 向こうから、やって来たよ、チャンスが!


 もうアレだよ!

 早乙女の時といい、オレに運が向いて来た感じか?


 為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり、だったっけか?


 強い気持ちでやる!

 絶対やる!

 こんな時の為にやってきたんだ!


 よし!

 全力を出してやる!


 オレは、バットをギュっと握るのだった。

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