片想いから始まるファンタジーがあってもいいじゃないか！～～幼馴染をはじめ、誰からも拒絶され病んだオレが勇者となり、苦難を乗り越え世界を守って、マジメに真摯に勇者ハーレムへ突き進む物語

第11話 オレはどうしたい？

「ちょっと、待って。そのう、何かさあ、紫苑のこと白藤さんとか、ちょっとアレよね。みんな、さんくん付けは、止めない？」（早乙女）

「そうね、白藤さんって言われるよりは、紫苑でいいよ」

「うふふ、わたしも香織でいいよ」

「そうか、オレも、一人（かずと）でいいけどね。でも、早乙女は早乙女でいいかな？」

「えっ？なんでよ？じゃあ、紫苑はどうなの？」

「白藤は、紫苑でいいかな？」

「えっ？なんでよ！」（早乙女）

「なんとなく」

「まあまあ、私もいきなり”かずと”って言うのは、もうちょっと仲良くなってからかな？だから、”かずと”君でいいかな？」（紫苑）

「だったら、白藤って言うよ。オレも君らのこと、まだよく知らないしさ」

　ちょっとは知ってるけど、それは小学校のガキの頃のことだけだから、ウソは言ってない。

「でも、わたし、かずとって言うほうがいいかな？ダメ？」（早乙女）

　なんで、また上目遣いしてくるかな？

「まあ、いいよ、別に」

「うふふふ、それじゃあ、”かずと”のこと、聞かせてくれる？」

「ああ、オレは」

「ちょっと、待って！」（早乙女）

「なんだよ、もう」

「ちょっとトイレ、ごめん」

「いってら」

　オレは、僅かな時間、紫苑と二人きりになった。

「藤堂君・・あっ、えっと、一人（かずと）君、あの何か運動部に入ったりするの？」

「う～ん、今考え中なんだけど、野球部とかどうかなって思ってるんだ」

「ふぅ～～ん、そう、野球部ね。じゃあ、野球とかしてたんだ？」

「えっ？いや、全然」

「えっ？それって、大丈夫なの？大変じゃない、野球部って？」

「うん？どうしてそう思うんだい？」

「だって、朝練とか、休日はほぼ毎日練習とか試合とかあるし。その、一人（かずと）君って、昨日学校を休んだでしょ。身体が強くないと、ちょっと大変かなって」

「そうなんだ。あまり休日とか休めないのが痛いかな。でも、まあ考えてみるよ。そうだ、白藤はなんか、野球部について詳しそうじゃないか？どうしてだ？」

　ちょっと探りを入れた。

「うんと、それは護道君って子が野球部のことを教えてくれたからかな。別に、私は興味はないよ」

「そうなんだ。でも、その護道ってヤツ、君のこと好きなんだろ？」

「えっ？なんでそんなこと知ってるの？」

「いやー、それはクラスで君と護道がよく話したりしてるのを見てるし、早乙女も言ってたと思うから」

　早乙女が、そう言ってたかは、忘れたけどな。

　でも、そんなこと、いつも二人で喋ってるのを見れば誰でも察しが付くと言うもんだが。

「でだ、白藤も護道の事が好きなのか？」

　確認だ。

　直球だが、早乙女の様に直球だが、これは是非とも聞いておかねばならんからな！

「う～～んと、それは」

「おっ、まっ、たっ！！」（早乙女）

「やん、香織、それ久美子の十八番。ちょっと、やらしいよ」

　久美子！

　久美子って言ったか？

　くそ、あいつとは、まだ繋がりがあるのか、コイツ等は。

　そうか、そうかよ！

　クソだ！

　オレが苦しんでる間、そんな事を言って、中学生活を楽しんでいやがったんだろうな。

　コイツ等は、オレの事を無視したり、変態呼ばわりしたりと、イジメをしたことの自覚無しに、のうのうと中学生活を楽しんでやがったんだろうな。

　とくに、この紫苑。

　お前なんか、護道と、オレを貶めた護道とイチャつきながら、それでは飽き足らず、オレのような、またタイプの違うイケメンとお近づきになりたいっていう・・・なんともあきれ果てた、まったく、なんてビッチな女になっちまったんだよ！！

　だいたい、あの頃の紫苑はもっと、大人しく、恥じらいがあって、それでいて二人で喋っていたらお茶目なところもあって、楽しくて、そう、二人で居るだけで、オレは楽しくて幸せだったよ。

　今のこの紫苑はどうだ？

　これが成長するってことなのか？

　そんな成長、いらねーよ！

　オレは、心が暗く闇の中に沈み、どす黒い感情が湧き出てくるのを抑えられなかった。

　コイツ等、やっぱ、嫌な奴等だ。

　白藤紫苑、お前のこと好きだったよ。

　だがな、やっぱ、今のこいつは、オレの知らない紫苑だったわ。

　もう、コイツ等と話すこともねーや。

　正体が知れたってヤツだ！

「ごめん、なんか、マックのポテト食べたら、胸やけがしてきて・・・まだ、オレ、身体が本調子じゃなかったわ。悪い、帰るよ。ごめんな」

「えっ？大丈夫？」（紫苑）

「えっ？残念だけど、帰ったらちゃんと休んでね。無理しちゃだめだよ」

「ああ、ごめんな、急に。早乙女、お前、オレの母親じゃねーんだから、そこまで言わなくてもいいんだぜ」

　ちょっとクギを刺そうと思ったが、ヤブヘビだった。

「ううん、だって、心配じゃない、”かずと”は私の大切な、こ・・友達なんだからね！」

「ああ、ありがとう、大人しくしてるよ」

　そう言って、オレは、マックを出た。

　オレは、どうしたい？

　アイツ等にどうしたい？

　そんな事を考えていた。