第10話 マック

 マックまでの道すがら、女子達は何かと質問してきた。

「ねえ、藤堂君って、当然、モテるでしょ。今、彼女は居るの?」


 ストレートだ!

 ストレートに訊くコイツは、もちろん早乙女だ。

 いきなりのこの質問は、実は想定内だ。

 と言いたかったが、実は何も考えていなかった。


 イケメンになったとは思う。

 もちろん、中学の時には告られたこともある。


 その時は、オレってまだ彼女とか作れるほどの良い男になっていないから、恋愛とか無理だし、彼女を作る気はないからって断っていた。

 いや、実際、その通りだから。

 でも、今は、彼女を作りたい。

 いや、作るんだって決めてるから、この回答ではダメだ。


「あははははは!オレのこと、そう思ってくれてありがとうな」

 時間稼ぎだ。

 こういう場合の、「あはははは」の出だしで考えるっていう技だ。


「でも、早乙女、オレにそれを聞く前に、君から先に言ってもらっていいかな?前に決まった相手とか居ないって言ってたけど、本当かどうか、白藤さんの前ではっきり訊きたいんだけど?」

 ふぅ~~、これだ。

 同じような質問返しの技だ!


「むむ、質問を質問で返すなんて、マナー違反だよ」(早乙女)

(えっと、確かボーイフレンド多数で特定の恋人無し設定だよね、わたし)


「そうよね、藤堂君からまずは答えてほしいかな?」

(ナイスフォロー、紫苑!)by早乙女


 ちぇっ!紫苑が余計な事を!

 でも、マジで事実を答えるしかないと答えが出たわ。

「まずは、モテるって程でもないし、もちろん恋人とか居ない。唯一のガールフレンドが早乙女だ、以上」


「なるほろ~~、唯一のガールフレンド・・・・(ぐふふ)」(早乙女)

「えっ、そうなんだ。てっきり、3,4人は居るのかって思ってた」(紫苑)


「えっ!!そんなことないって!・・あっ、ごめん、大声出しちゃって・・・」

「ムキになるとこ、可愛い」(早乙女)

「なんだよ、からかうなよな」


「ふぅ~~ん、ごめんなさい。ちょっと、わざと多目に言ってみたんだ。だって、藤堂君のこと見てる女子、多いから」

「えっ?それは初耳だ。そうなのか?」

「紫苑、あんた、藤堂君のこと、よく見てるわね」


「うふふ、だって、藤堂君て、見てて飽きないから」

「なんだそれ?って、そんなにオレのこと見てたのか?」

「う~~んと、藤堂君も、時々私のこと見てるよね?」

 やばい!

 バレてたか!

 どう言おうか・・・むむむ・・・。


「あはははは!バレちゃった?いや~、早乙女も美人だけど、白藤さんも可愛いからね」

 これだよ。

 これしか、思いつかなかったぜ。

 ここで紫苑だけを褒めると早乙女がブー垂れそうだし、かと言って、褒める以外に思いつかねーし。


「うふふふふ、藤堂君って、そう言って、女の子を泣かせるわけね」

「紫苑、そうなの?やっぱ、藤堂って女を泣かせるヤツなの?」

 もう、君づけ止めたのか?

 ってか、紫苑の突っ込み、なんか昔の素の紫苑に近いな。

 もう、人見知りの、大人しい紫苑ではなくなったのかな?


「おい、それより、し・・らふじさんが言った、見てて飽きないって、どういう事なんだ?」

 あぶねーー、しおんって呼び捨てにするとこだったよ。


「そうそう、それ聞きたいわ、私も・・・あっ?なんかわかっちゃったかも!」

「うふふふ、たぶん、それよ、香織」

「そうか~~、だったら、私たちだけのムネの内に留めとこうかな」

「そうね、ごめんね、藤堂君、そういうことで許してね」


 許してね、許してね、許してね・・・・・この言葉がオレの脳内にリフレインした。

 早乙女への質問がいつの間にかスルーされていたのも気がつかなかった。


 ってところで、マックに着いた。


 それぞれ、注文を受け取り、2階席に座る。

 この時間くらいからは、他の高校生も居たりする、高校生のためのマックになっている。


「では、ホントの自己紹介をしましょうか?」(紫苑)

「えっ?それって?」

「つまり、私も、紫苑も、あなたの事、殆ど知らないのよね。もしかして、あなたが私達を襲ってきたら、私達危ないじゃん。私達、か弱いJKだし」


「もう、香織ったら。でも、藤堂君て、ちょっとミステリアスなわけよね、女子の間では。田辺中の女子も言ってたよ。藤堂君のこと、あまりよく知らないし、他人ひととあまりしゃべらなかったって」


「そうよ、藤堂、白状しなさい。あなた、ヤバい人なの?それとも、ホントにスーパーマシーンなの?それとも・・・」


「ああ、まあ、それじゃあ、オレからオレの身の上を話そうか」

 オレは、どこまで話したらいいのか、まだ決めていなかった。


 オレの、あの小学校でのことを話すべきか、それとも・・・・。


 そして、オレは決断した。


 紫苑、どう思う?

 オレの話しをどう思う?



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