第7話 ランチタイム

 お昼休みになった。


 オレは、昨夜の残り物と、卵焼きに野菜炒めと梅干し乗せご飯だ。


 ご飯は、玄米ごはんで、よく噛まないといけない。

 しかも、ご飯は、お茶碗3杯分が入っている。

 もちろん、ご飯とおかずは別容器だ。


 これを食べて、直ぐにでも昼寝がしたいのだが、少しペースを落として食べないとな。

 なにせ、コイツ等と話し乍ら食べるんだから。


「へえーー!!藤堂は、玄米ご飯か~~!!それにしても、量が半端ねー!」(松村)


「いや、普通だろ?昼はしっかり食べないといけないんだぞ!」


「ええっ!そうなの?私、ダイエット中だし」

「加藤、そんなに太ってるか?女子の場合は、高校生の時、少し太ってる方が普通なんだ。大体、大脳生理学的に考えて、思春期の女子は性ホルモンの活性期でもあり、その影響が身体的特徴としての第2次性徴を・・」


「はいはい、ご飯は美味しく食べましょうね!」(加藤)

「お前、そんな辞書の文句のような言葉が自然と出てくるのか?流石は、マシーンだ」(横山)


 そうなのか、つい、どこかで見たことのある文句が出たけど、別に難しいことを言ってないし、こんなの小学校高学年で習うだろ?


 なんか、会話って、よくわからんな。


「でも、それだったら藤堂君のそのサイコロステーキ、貰っちゃっていいかな?わたし、お弁当のおかず、サラダ中心だから」(加藤)


「ぬあに~~!!お前、サイコロステーキを昼弁に入れてるのか!しかも、多いぞ、これ!」(横山)


「なんだよ~、これは昨日の残り物だから」


「ぬあに~~!!残り物って、お前、昨日病気してたんじゃねーのか?」(横山)

「だからだよ、食べきれなかったから、その分、余ったんだよ」


「いや、ちげーよ。お前、病気してて、その夜にステーキだって、それって普通、消化しやすいモンを食べるんじゃないのか?」


「それ、間違ってるし。病気中はあまり食べてないだろ。だから、すぐにエネルギーになる食事をすべきなんだよ。それに、オレ、大事を取って休んだだけだから。そんなに身体の方は、ダメージを受けてなかったからな」


「まあ、そういうことにしとくか!オレにもくれよ!」


「ちょっと、みんな、藤堂君のモノがなくなっちゃうじゃない?」(一葉)


「楽しそうだね、田辺中のみんなは」(早乙女)


「早乙女さんも、藤堂君からもらったら?」(加藤)


「おいおい、なんでオレのばっかなんだよ」


「じゃあ、みんなで、美味しそうなの、交換しない?」(紫苑)


 こうして、唐揚げやら、各種肉やら、ウインナーやら、ミニトマトやら、卵焼きやらがお互いの間を飛び交った。


 そして、紫苑もオレのサイコロを狙いに来た。

「藤堂君?これと交換しない?」


「ああ、美味そうだね」

 それは、定番中の定番、タコさんウインナーだった。

 昔の昔、紫苑からあ~んをしてもらったことのある、あのタコさんウインナーだ!


「えへへへ、私が作ったんだ」


「えっ!そうなんだ・・・」

 おばさんが作ったのと、多分、同じような形だ。

 足がこれでもかと曲がってるし。


 おばさんからの直伝だよな、これ。

 食べるのが、勿体無いと思った。


 あ~んとか、昔は嫌だったけど、今はしてほしい・・・。

 アレ?

 なんだよ、オレ!


 いかん、いかん!

 なんだ、その妄想は!

 こいつ(紫苑)は、もう、あの頃の紫苑とは違う他人ひとだ。


 だめだな。

 まだまだ、違うってことのイメージが出来てないな。

 って、あの抱き合ったシーンを何回もリフレインするってことか?


 いやいや、それは心が折れる。

 まあ、いいや。

 イメージできない時の方法をするしかないよな。

 それは、地道な方法なので、詳細は省く。


 オレは、タコさんウインナーを思い切って、全部口の中に入れた。

 お、おいしいっす!!


 サイコロより、いや、どんな料理より、すてーきです!

 そう、言葉には出さずに、心の中で叫んでいた。


 まあ、ダジャレが出たので、よしとするか。


「このサイコロステーキ、すてーきなソースを使ってるよね?」

 ちょっと、上目遣いをしてきた。


 うん?ダジャレか?

 まさか、ダジャレなのか?

 しかも、オレと似たようなダジャレを?

 紫苑って、こんな子だっけ?

 もしかして、護道の影響か?


 でも、かわいいいいい・・・・。

 いかん、いかん。


「えっと、あはははは!!うん、すてーきでしょ。ちょっと、工夫されてるんだ。隠し味にエビのエキスっていうか、エビを使ってるんだよ。他にもあるけど、秘伝のソースなんだ」


「へえーー、なんか、贅沢だね。美味しかったです、ありがとう」

(ダジャレに反応してくれたわ。うふふふ、ヘタクソだけどね。初対面は面白いことを言うべきって、香織が言ってたし。面白いことって、ダジャレくらいしか思いつかなかったから。昔、幼馴染とダジャレゲームしたからかな?)


「君のタコさんウインナーも、とっっても、美味しいよ!タコさんが羨ましい・・・いや、こっちのこと・・・えっと、もっと、たこさん(たくさん)食べたくなったよ」


「うふふふふ、じゃあ、今度も、もっとたこさん作ってこようかな。うふふふふ」


 やったーーー!

 オレのダジャレが通じたよ!

 うん?

 いやいやいや、この子は、昔の紫苑じゃないし、彼氏持ちだから、何を喜んでるんだ、オレ!!


「はいはいはい、紫苑、次は私の番だからね!えっと、あ~んとか、する?」

「早乙女、お前も冗談を言うのか?」

 ちょっと、早乙女、悪乗りすんなよな。

 みんなの前で、しかも紫苑の目の前で、ちょっと、誤解されそうだし・・・。

 えっ?

 ああ、別に、紫苑がどう思おうと関係ないのか・・・・。


「うふふふ、ちょっとドキッとしたでしょ?どうなの?」

「ああ、まあ、それは・・・おまえな~、からかうなよな」


「あら、お前呼ばわりされちゃった?ってことは?」

「あっ!つい、言っちゃったよ」


「なになに、二人って、仲が良いじゃん。早乙女さん、ちょっと女子トークしない?」(加藤)

「うふふふ、受けて立つわ」

「私も、混ざっていいかな?」(一葉)

「私も、あなた達とお話ししたかったんだ」(紫苑)


「よし、オレ達は、男子トークだな」(松村)

「まっつん、それ、おもろないから。だから、もう一つ、最後のサイコロちょうだい、藤堂」(横山)


「なんかわからんが、いいよ。その代わり、お前のミニトマトをもらうよ」

「藤堂は、このミニトマトの価値がわかる奴だな」


「いや、お前の弁当箱、もうそれしかないから」


 こうして、とりあえずは、恙無つつがなく終了した昼食会だった。









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