第4話 早乙女香織
オレの席の近くには、あの早乙女香織が居た。
オレは、初めて会った風を装いながら、彼女にそれとなく話しかけた。
「君、早乙女さんだよね、第1中の?」
「はい、あなたは?」
「オレは、田舎の田辺中だった藤堂って言うんだ。よろしくな」
「はい、よろしくです。その~、何か運動部に所属してました?」
「うん?いやいや、オレの友達が君のファンだったから、名前を知ってるだけさ。ところで、君の一中からはこのクラスに何人居るんだい?」
君のファンってなんだよ?
「今年は、少なくて、8人かな?」
「へー、そうなんだ。オレのとこは今年は多いって言ってたけど、5人だけだけどな。やっぱ、人数が多いから違うね。でも、私立にも賢いヤツが一中から流れてるんだろ。最近は、私立を狙うやつが多いからな」
「そうよね。でも、わたし、この高校の歴史がある所が気に入ってるし、両親もここの出身だから」
よしよし、タメ口みたいになってきたぜ。
「へー、そうなんだ。オレ、両親が居ないからさ、羨ましいな」
ここですかさず、彼女の同情を引くっと。
「それは、ごめんなさい。悲しいことを思い出させちゃったわね」
すかさず、キラッと口元の白い歯をのぞかせて、笑顔だ!
「いや~、もう昔の事だからさぁ~、そんなに悲しいとか思ってないから、大丈夫だぜ。それより、あそこで喋ってるガタイのデカいイケメンが居るけど、あの人、一中じゃなかったっけ?」
「ええ、そうよ。彼は、やっぱり有名なんだ。彼は、護道君って言って、野球部のキャプテンしてたんだよ。結構、モテて、中学時代は、好きな子がたくさんいたわね」
「そうか、野球部かー。野球部って、モテるのかな?」
「そうね、中学の時は、たいてい彼女が居たようね。その護道君と話してるショートボブの子、可愛いでしょ。私の親友だよ。後で、紹介しようか?」
「えっ?いいよ、君の方が、美人だし」
おおいに紹介して欲しいけど、まだ早い。そして、ここでさりげなく、さっき学習した、横山のやった女子の容姿を褒めるという技を使う。
「えっ?・・不意打ち的に、私に告っちゃった?」
「えっ?いや、まあ、君に告ったって思われても、嬉しいしかないけどね」
「えっ?それは・・つまり・・うふふふ、またお話ししましょうか、藤堂君」
「えっ?いいのか?君にも彼氏とか居るんじゃない?」
「決まった相手は居ないわ。ボーイフレンド(男友達という意味で使った早乙女)しかいないから、気にすることなんかないわよ」
(ウソをついちゃった、でも、1人も居ないなんて言えないし)
「そうなんだ、じゃあ、僕も君のお友達(ボーイフレンドを文字通り男友達と認識した藤堂)として、話しかけてもいいって事?」
「うん、もちろん。よろしくね」
(やったーー!!イケメン君ゲットだーー!!高校生活は、委員長的なお堅いイメージを払拭して、楽しく、特にステキな恋とか、ステキな経験をするんだ!!)
「ああ、よろしく」
やったーーー!!うまく女子と話せたぞー!!
それに、あの気の強そうな早乙女だ。
勇気を出してトライしたけど、やっぱ、案ずるより産むが易しって、ホントだったんだ!
それから、ラインを交換したら、やっぱり、紫苑と一緒に話そうって来た。
構わないと送った。
ついに来たか!
白藤紫苑、お前とこんなに直ぐに繋がりができるとは思わなかったぜ。
オレに気がつくだろうか?
パッと見はわからないハズだが、癖とかを知ってたら、疑いをもたれるかな?
でも、オレは別人のようにふるまう事が出来るハズ。
たとえ、幼い頃からの幼馴染に対しても。
オレにとっての、これまでの究極の能力を使った身体と顔面と知能の変化に対する、幼馴染によるこれも所謂究極の試験が始まろうとしていた。
そして、アレが護道?
全然、感じが違うんだけど?
って、オレも他人の事、言えないんだけど。
しかし、あのゴリラ顔が、どうしたら、あんなにイケメンに?
まさか、オレの技とか使ったりはしてないよな。
だって、爺さんから教わった方法は、門外不出のハズ。
ああ、オレはその唯一の門下生だからな。
だとすると、アレしかないよな?
それも、調べた方が良さそうだ。
とにかく、これからの小学時代の同級生との交流は、大げさだけど、自分の変化を確めるための、試金石なんだ。
オレは、そう思うと、ドキドキするのだった。
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