幸福の男の子ども達

 マリア達に会う為に、街へ向かった。マリアとサラ、リズの三人は、子どもを学校に行かせる為に、街で暮らしている。屋敷から街までは、結構離れているので、俺の護衛に、元傭兵の人達が付いてきてくれた。

 傭兵達は、リズの別荘に行った時に出会った。獣退治で怪我を負ってしまった彼らに、助けを求められたのだ。彼等の近くには、牛よりもデカい狼みたいなのが、何体も転がっていた。男四人に女二人の六人だけで、あんな化け物みたいなのを、何体も倒したのかと、俺は感動した。医者を呼んで、別荘で手当を受けてもらった。そのついでに、医者にも協力してもらって、彼らがぐっすり眠れるようにしてもらった。そして、怪我と疲れで、ぐったりしている彼等にキスをしていった。

 本で読んだり、人から話を聞くだけだった憧れが、目の前に現れた。是非とも、彼等と仲良くなりたかったのだ。

 彼等と仲良くなって、色々な話をしてもらった。物語のような派手さはないが、物語では味わえないような、生々しさが堪らなかった。

 彼等のおかげで、傭兵というこれまで縁が無かった世界の人達と、仲良くなっていく事ができるようになった。


 街に着いた時には、辺りは真っ暗になっていた。マリア達の住む屋敷に行くと、子ども達と一緒に、マリア達が出迎えてくれた。子ども達は三人とも、母親に似て、見た目も性格も良い子だ。碌に家にいない俺に、大喜びで駆け寄って来てくれた。

 子どもの頃の俺は、親に何かを言われるのが、嫌だった。俺を思っての言葉だと分かっていたが、何故だか腹が立って仕方がなかった。俺の子どもが良い子なのは、優しくて穏やかな親に育てられ、食うに困らず、学校にも通える豊かな暮らしのおかげなのだろう。俺の時とは大違いだ。

 何時まで経っても、俺の傍を離れない子ども達に、絵本を読み聞かせて寝かしつけた。俺も小さい頃は、お袋に寝かしつけてもらった。絵本なんて上等なもんは無かったから、適当な昔話だった。何度も同じ話をするもんだから、今でも細かく内容を思い出せる。それでも、俺は毎晩、お袋に話をせがんでいた。今思うと、お袋が話をしてくれるのが、嬉しかったのだろう。そういう所は、俺も、子ども達も変わらない。


 俺が起きた時には、子ども達はもう、学校に行った後だった。幾ら疲れていたからと言っても、これは情けない。普段は、離れて暮らしているのだから、一緒にいる時くらいは、子どもが満足するまで、付き合ってやりたい。もう少し、身体を鍛えるとしよう。

 子どもが学校に言っている間は、マリア達と穏やかに過ごした。一時期は、バカみたいに熱くなっていたが、子どもが産まれてから、マリア、サラ、リズの三人に、そういう感情を抱かなくなった。子どもが住んでいる所で、そう言う事をするのは気が引けるし、子育てはマリア達に任せっきりにしている。子育てで大変だろうに、無理をさせる訳にいかない。

 子供たちが学校から帰ってきた。学がないから、勉強を見てほしいと言われたら、どうしようかと思っていたが、その必要ない程に、俺の子どもは出来が良かった。本当に母親たちに似て、良かったと思う。子ども達が学校の課題が終わらせた後は、一緒に遊んだ。夕食の時には、学校であった事や好きな事の話をした。夜は本の読み聞かせをして、そのまま、一緒に眠った。

 休みの日には、子ども達と一緒に、遊びに出かけた。最近流行りの劇を見たり、買い物をしたりした。三人とも、笑顔を浮かべていた。見てるこっちまで、楽しくなる程の眩しい笑顔だった。


 しかし、街の暮らしは、どうにも俺には向いていないらしい。人が大勢いる所に行くと、うんざりしてしまう。それに、街で暮らしている奴等は、どこかお高くとまっていて、馴染めない。街にいるだけで、疲れていってしまう。そろそろ、屋敷に戻るとしよう。

 俺が屋敷に戻ると言って、子ども達が泣き出さないか、心配だった。しかし、子ども達は、そうかと言って、「また来てね」と笑顔で答えてくれた。少し寂しい気もするが、この家にいないのが当たり前なのだから、仕方ない。それに、また会えると、俺を信頼してくれているのだろう。

 しかし、俺の子ども達は、子どもにしては聞き訳が良すぎる。悪い人に騙されたりしないか、心配だ。


 朝に、街の屋敷を出た。子ども達は街の門まで俺を見送りたがったが、学校に遅れるかもしれないので、家の門の前までにしてもらった。もう少し、街に来る頻度を上げようと思った。

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