幸福の男の楽園

 サラと仲良くなって暫くたった頃、サラの先輩だった人に声を掛けられた。サラと仲良くしている、俺に興味を持ったようだった。

 サラは俺と仲良くなってから、穏やかになった。棘のついた薔薇から棘が無くなったような、ツンとしているのは変わりないが、人に優しくなった。自慢話もしないし、人の者にもちょっかいを掛けなくなった。皆、サラの変化を不思議に思いながら、受け入れていった。女達は、自慢話や自分の男を取られる心配をしなくてすむし、男達は、サラに振り回される事が無くなったからだった。だからと言って、サラの魅力が無くなったかと言えば、そんな事はなかった。思わず手を伸ばしてしまうような、香しく美しい大輪の薔薇の花の様に、より魅力的になった。リズは、サラの変化を疑問に思い、親しくしている俺とマリアに近寄って来たのだろう。


 リズは、金持ちの商人の後妻だった。夫は、俺が町に来る前に死んだそうだ。自由の未亡人は、暇を持て余していた。サラが俺に振られたという噂もあって、ついでに俺を落とそうとしていた。リズは、サラの先輩というだけあって、口が達者で魅力的だった。サラとの関係を、上手く誤魔化し切れる気がしなかったので、俺はリズにキスをして、誤魔化す事にした。


 リズとのキスは、上手くいった。リズの屋敷に俺とマリア、サラの三人で招待された時だった。部屋に四人だけになった時、サラとマリアが、リズを後ろから羽交い絞めにした。リズが驚いている間に俺がキスをした。俺とサラの関係を疑っていただろうが、まさか、恋人公認の関係と思わなかっただろう。

 リズを落としてから、この屋敷で雇われている使用人にも、キスをする事にした。他の女の同伴としても、俺がリズの屋敷に、度々招かれるなんておかしい。だからと言って、俺の来訪を使用人に、バレないようにする事はできない。それに、近くにいる使用人が、リズの俺への思いに気が付かないでいるとは思えない。リズが俺なんかに夢中になるなんて、もっとおかしい。噂話を流される前に、対処する事に決めた。

 リズの屋敷の使用人は、全員住み込みだったので、気が楽だった。町に家族や親しい人がいても、仕事が忙しいと、一時、疎遠になってしまえば、変化を紛らわせられる。

 野郎や爺にキスなんて気持ち悪いが、仕方がない。これで、自由な遊び場を手に入れられるんだと思って、我慢した。

 使用人たちへのキスは、あっという間だった。一人一人呼び出して、リズの時と同じようにすれば、簡単だった。


 俺とマリアは、町での仕事を辞めた。リズの屋敷で住み込みの使用人として、雇ってもらう事にした。これで漸く、周りを気にせず楽しめるようになった。俺とのお仕置きが余程お気に召したのか、サラが色々と用意してきた時は驚いた。派手なサラが、地味なマリアに責められて喜ぶ様は、良い光景だった。リズも、豊富な知識と経験で、楽しませてくれた。

 男共の反応が不安だったが、俺の為にと、忠義を尽くしてくれるのは、気持ちが良かった。愛は恋愛だけじゃなく、親愛や敬愛もある事を忘れていた。俺のギフトは、純粋な愛を相手に抱かせるのだろう。改めて、ギフトの力のすごさを知った。




 リズの屋敷で楽しく暮らしていたら、リズの義理の娘が、訪ねてきた。そして、父親の遺産を返せと言ってきた。リズは、その時初めて義理の娘に会ったそうだ。うるさくて、面倒だったので、大人しくなってもらったキスをした。そして、大人しくなった義理の娘から、ゆっくりと話を聞かせてもらった。

 父親と同じ、商人の道を進んでいたが、知り合いが金を持って、いなくなったそうだ。どうにもならなくなって、疎遠の父親に金を借りようと、町に来て、父親が亡くなっている事を知って、屋敷に来たという事だった。俺はリズに頼んで、金を出してもらった。話を聞くに、商売は順調だったようなので、頑張ってほしいと思ったからだった。彼女が商人として稼いでくれるのなら、これからも安心して暮らしていける。


 彼女は期待通りに、有名な商会の会長になった。さらに、彼女の周りには、裏切らない有能な部下達がいるから、その立場は安泰だ。

 俺は彼女の様に、外で稼いできてくれる人を大勢、造った。何かあった時の心配もなくなるし、

一人一人の稼ぎが少なくても、集まれば結構な金額になる。それなら、一人一人の負担も少なくなると思ったからだ。無理をして、身体を壊されたら、気分が悪い。それに、長く働いてもらえる方が、儲かるだろう。

 独り身の奴等を誘い出して、キスをしていった。警戒する奴もいたが、複数人で囲んでしまえば簡単だった。男と何度もキスをする羽目になっちまったが、これで、素晴らしい生活が送れると思えば、安いもんだ。

 そして、今の悠々自適な素晴らしい生活楽園を、手に入れる事ができた。

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