第28話 ルシアンside

 俺はダンジョンを侮った。全ての持ち物を捨て退却。満身創痍で逃げ出し、やっとの思いで10階まで戻る事が出来た。


はぁ、今戻っても借金の残りで奴隷落ちするのが目に見えている。ん?どこからか食べ物の香りだ。


誰かいる。転移陣を前に、ダメ元で助けてもらおうと考えた。ローブを深々被った魔法使いらしき人物が一人。


ここまでくるのは相当腕が立つんだな。よく見ると女のようだ。片言で喋った。お試し期間として無理矢理ねじ込んだ感はあるが、助かった。


オリーブという名前らしい。彼女は基本的に無口だが、ポーションや食事や寝る場所、寝具やタオル等用意してくれた。優しい人だな。それにスープが美味い。料理が出来るのか。感動に包まれた。久々の睡眠。敵の心配をしなくてもいい結界内で寝れるとは最高だ。


 狩りの様子を見ていたが、やはりオリーブは上級冒険者のようだ。使える魔法から見て攻撃魔法より、結界などの特殊魔法の方が得意なのかもしれない。


俺との息もぴったりだ。こんなに狩りがしやすく、楽しいのはいつぶりか。オリーブが教えてくれた聖水で武器を清めて戦うとは考えてもみなかった。


そんな方法があるとは目から鱗だ。彼女は戦う方法を知っているのは前もっての知識だろうか?ゾンビは苦手らしいな。そこはやはり女だな。


 ついにギルド精算の日がきた。6:4にしていたが、思ったよりも良い収入となった。これで装備類一式新調出来る。2日程だったが一緒に過ごしていて楽しいと思った。そして今後も彼女とPTを組みたいと初めて思った。


 残りの1日も一緒に過ごそうとオリーブを誘う。武器屋で店主と話しているとオリーブも剣を眺めている。剣も使えるのか。本人は苦手と言っていたが、剣の扱いを見て剣の腕もそこそこじゃないかと予想する。


俺のお勧めの店へ食べに行った。オリーブは美味しいと喜んでくれている。なんだか嬉しいな。


今後の大切な話をしようとした途端にローザに邪魔をされた。俺はお前と結婚する予定はない!!店の中は混雑しており、騒ぎを起こすと不味いので黙っていたが、失敗した。


彼女はローザに追い払われ消えた。何処に泊まっているのかも分からない。首都は人も多く探すのも困難だ。


 もう一度、ダンジョンに行こう。また彼女に会えるかもしれない。少しの希望を抱き、準備をしてからすぐにダンジョンに入った。


数日待っても彼女は現れない。


俺はゾンビ達を倒しつつ、19階で休憩を取る事を繰り返して彼女を待った。


・・・彼女に会いたい。


本当に来るかどうかも分からない。焦燥感と戦い。馬鹿だな俺は。ダンジョンに潜っていた間にかなりの数の敵と戦った。アイテムドロップもそれなりの量となり、あと数日の狩りで借金も返せる額ほどになった。


 俺は狩も一段楽したので休憩しようと19階に立ち寄る。ふと、フロアの端にテントが立っている事に気付いた。絶対彼女だ!逸る気持ちを抑えつつ結界をノックする。


「よお!ここに居ると思ったぜ」


「ルシアン、15階大丈夫だった?」


「おう。オリーブの聖水のおかげで楽に越えれたさ。飯はもう食べたのか?オリーブの作る飯が食べたくて仕方なかったんだ」


「ご飯食べてない?」


「今日はまだ食べて無い。腹へった」


彼女を見ると急にお腹が減りだし、つい言ってしまった。もっと言いようがあっただろうと思う。反省するばかりだ。


 だが、オリーブは嫌な顔一つせず料理を始める。絶対、良い奥さんになるよな。オリーブと一緒にいると居心地が良い。美味しい料理に優しい奥さん。良い家庭が築けるのではないか。


 やはり、彼女はローザの事を誤解していた。他のやつなら気にしないが、オリーブには誤解を解いておかなければならないと思った。良かった!PTも組めた!素直に嬉しい。


オリーブの食事の後は少し体力の回復が早いような気がする。


 ボーンドラゴンと戦ったが、やはりオリーブは特殊魔法は得意なんだな。身体能力が大幅に上がっている。これなら楽に倒せる。


そう思った矢先、ドラゴンの攻撃から俺を庇ってオリーブが壁に激突した。オリーブに怪我を負わせたと思うと、怒りでドラゴンの首を切り落としていた。どうやらオリーブは自身に結界を掛けていたようで無傷で済んだようだ。


 が、見てしまった。オリーブの素顔を。ローブがボロボロになり、仕方なく脱いだ彼女。なんて美しいんだ。


優しくて、美人で料理も出来る。最高じゃないか。他の男には見せたくないな。ローブ無しの生活を聞いてみたがずっと前からローブを着用していたようだ。


これだけの美人だ。ローブ着用で正解だったな。それにしても、オリーブが話した追い出される話。見る目がないやつらばかりなんだな。オリーブはまだ俺に話たくない事があるようだ。


きっと、片言で話すきっかけがあるのだろう。俺がオリーブにとっての安心出来る場所になるようにならねば!



あぁ、俺はどんどんオリーブを好きになっていく。

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