第19話

 そろそろ安住の地を求めてもいいかな。それには家も買わなきゃいけない。まずはお金を貯めつつ、住みやすい国を探すかな。


最初の国は今のところ一番最悪。あそこはもう絶対行かないし、寄り付きたくもない。次の国は良い所ではあるけど、宰相に戻ってくるなと言われたしなぁ。令嬢達の庶民を見下げる感覚も好きじゃないわ。それにグレンの婚約者も私がいると目障りだろう。


まず、ここトルナの街を探索してみるかな。街の規模としては小さい方だとは思う。けれど、治安は良さそうなのよね。


市場を除いてみるとプラム類が沢山置いてある。おじちゃんに聞いてみるとこの街の名産品なのだとか。自宅に果物の木があると嬉しいわ。後で種を取っておくためにプラムを一袋買う。こういう時に時間を止めておけるマジックバッグが欲しいのよね。でも、種なら数年保つし他の野菜の種も買おうかな。


次に武器屋に寄ってみる。相変わらず武器の知識は少ないから見ても分からないんだけどね。武器屋のマスターに声を掛ける。


「マスター、この剣を研いで欲しい」


マスターはどれどれ、と剣を見てくれた。


「刃毀れだらけじゃねえか。こんなに傷むまで使ったのか。これなら研ぐより新しい武器を買う方がいいぞ」


「マスター、お勧めある?」


マスターは私の事をまじまじと見て1本の細身の剣を出してくれた。


「お前さんにゃこいつが向いてそうだな。どれ、持ってみろ」


私はマスターの言うまま細身の剣を手にして振り下ろしてみる。凄い。軽い。


「コイツはちと高いがよく切れるし、軽いからお前さんにいいな」


「マスター、有難う。お代は?」


「コイツの値段は30万ギルだ」


た、高い。


「もう少し、安くなる?」


「残念ながら無理だな。コイツは特注品なんだ。すまんな」


仕方がない。諦めて30万ギルを支払った。まぁ、お金はあるからいいけど。新しい武器を腰に下げて武器屋を後にする。一応、念のために古い剣も研いで貰って袋の中に収納した。何かあったら怖いもん。


今日はこのまま宿に泊まる。この宿名物の魔鳥のフルーツソース焼きはとても美味しかった。また食べたい。


 翌日は朝からギルドへ相談に行く。よし、受付のお姉さんに聞いてみるかな。


「お金を沢山稼げるクエストってある?」


「Cランクのオリーブさんには厳しいかと思いますが、首都コルの街外れにダンジョンがありますよ。腕の立つ方はそこで稼いでいますよ。今のランクでしたら現地でPTを組むのが良いと思います」


「ここから首都は遠い?」


「この街から徒歩で5日程かかります」


「ありがとう」


どうしようかな。討伐しながら首都を目指してBランクまでは上げるかな。思い立ったら吉日っていうよね。


 早速受付に討伐依頼を受け、首都に向かうとする。マジックバッグに沢山の食糧を買い込み、いざ出発。


魔兎、魔猪、オーク、ゴブリン、コウモリトカゲ等。依頼書の魔物をどんどん討伐しながら首都に向かう。もうすっかり狩りの上級者なんじゃないだろうか?

テント張りも素早く出来るようになったし、料理も更に上手くなったと思う。


 5日目、ついに首都コルに到着。ギルドで討伐依頼の完了手続きを行うやはり。規定数を上回る狩りをしたのでBランクの昇格試験が受けれるようだ。


「ではオリーブさん、昇格試験を行いますね。あそこで立っている魔法使いのロダに参ったと言わせてきて下さい」


「ロダさん、宜しくお願いします」


「オリーブさん、いつでも来て大丈夫だよ」


「では、遠慮なくいきますね」


私は【結界】を唱える。ロダさんに向かってギリギリ身体が入る程度の結界を作り、閉じ込めた。そのまま【ウォーター】で結界内にジワジワと水を入れていく。いわゆる水責めってやつね。


「ロダさん、どうですか?」


ロダさんは結界を破壊しようとしているが壊れないようだ。腰まで水に浸かった所でロダさんが両手を挙げる。


「参った」


「おめでとうございます。Bランク昇格試験合格です」


「いやはや、結界を攻撃に使うとは予想外だったよ。オリーブさんおめでとう」


 受付のお姉さんにタグの更新をしてもらい、ダンジョンの話を聞いてみる。


「コルのダンジョンは中級者以降の方のみ入る事が許されるダンジョンで、オリーブさんは入れますよ。コルのダンジョンでは鉱物が取れるので稼ぐのにはもってこいです。特に宝石は貴族からの要望があり、高値で取り引きされています」


ふむ。楽しそう。宝石かぁ。稼ぐには良さそう。


「ツルハシ等必要ですか?」


「ふふっ。必要ありませんよ。ダンジョンでは敵を倒すと消え、素材が残るようになっています。敵から鉱物や宝石が出るので、基本的な装備とお泊まりグッズは必要ですね」



「説明ありがとう」

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