第18話 グレンside
ようやくギンコと国に帰る事ができた。多少の無理強い感はあったかもしれないが。
ギンコは謁見の場では陛下の質問に流暢に喋っていた。ギンコは何故、いつも片言なのか?詳しく聞きたい。謁見室を出てギンコとゆっくり話をしようと口を開くが、群がってきた令嬢達に邪魔されてしまった。
群がる令嬢を躱そうとしていると、明らかにギンコは俺を冷めた目で見ながら一人先に部屋に帰ってしまった。違うんだ。俺にはギンコだけなんだ。
はぁ、ギンコに会いたい。侍女からギンコの様子を逐一聞くのだが侍女からの答えは何処となく冷たい。侍女はギンコの味方のようだ。
俺は一刻も早くギンコを妃に迎えるように走り回っており、ギンコと会う時間が取れない。寂しい思いをしているだろうか。
護衛と街に出たり、図書館で大量の書物を読んで過ごしていると報告があった。ギンコは字が読めると言う事は貴族なのか?いつも不思議に思う。彼女は謎めいている。
ようやくギンコとお茶をする時間が取れた。ドレスを着て、化粧をしているギンコはまさに女神のようだ。美しい。
俺より侍女や護衛と仲良くなっているのはどういう事だ??ちょっと嫉妬だ。
ギンコと話をしている間にギンコが置かれてきた境遇は辛い物だったのでは?と推測することが出来た。ギンコの事をもっと知りたい。側にいたい。少しでも力になりたいと思った。
が、まさかここでダニエラ嬢が乱入してくるとは。少しずつ解れてきたギンコの気持ちが一気に冷えたようだ。
軽蔑する視線をダニエラ嬢に向けている。こういった令嬢とのやり取りはしてこなかったのか。
「帰る」
立ち上がるギンコの手を咄嗟に掴んだが、間が悪い事に宰相が現れ、ギンコを連れ出してしまった。
ダニエラ嬢と少し話をしてからギンコの後を追ったが、部屋には居なかった。宰相が陛下が呼んでいると言っていたので、親父に聞いてみるが呼んでいなかった。何処を探しても彼女が見つからない。
ギンコは王宮から居なくなっていた。
国からも。
宰相に問い詰めると、観念したのか宰相が国から追い出したと自白した。
あぁ、何て事だ。俺はギンコの側にいたいのに。
宰相は修行から帰ってきた俺と自分の娘、ダニエラ嬢と結婚をさせようとしていた。陛下と約束をしていたらしい。
ギンコを世話していた侍女は、俺がハッキリと令嬢達の前でギンコを大切にしている事や庇わなかった事に怒っていた。その侍女をよく見てみるとうっすらギンコの魔力を纏っている。
・・・もしや加護?
漠然とだがギンコの正体が分かってきた気がする。
数日後、その漠然とした物がハッキリと示された。
護衛が聖女の加護を付けて東の国の国境付近から無事に帰ってきたのだ。話を聞くと、お礼とともにギンコが加護を付けてくれたのだと言う。
ギンコは国一番の聖女の可能性が出てきた。
護衛の加護の聞いて慌てた宰相。宰相の失態。いくら宰相と約束をしていたとはいえ、親父も機嫌が悪くなった。一貴族の令嬢と国一番の聖女とでは重要度が違う。
ギンコは美しく、聖女に相応しい。聖女となると色々狙われる。ローブを深く被り、他人と深く接しない事で自分を守ってきたのだろうか。どうりで魔法も上級を使いこなせる訳だ。俺の目は節穴では無かったようだ。
現在、聖結界や治癒魔法が使える者を聖女としているが、この国には加護まで使える者はほぼ居ない。これは国としても大損害だ。
聖女という可能性からすれば、ギンコはどこかの国から逃げ出すほどの何かがあったはずだ。
だが、情報が出てこない事から国ぐるみで秘密裏に酷使されていた可能性もある。
あぁ、なんて事をしてくれたんだ・・・。
宰相は戻ってくるなと秘密裏に隣国に追い出した為、大っぴらに探す事が出来ない。
ギンコ宛に魔法で手紙を送るが、真名では無いらしい。影が隣国の村で話を聞いて回るが、ギンコという名の女は知らないと誰もが口を揃えて答えた。
足取りも掴めない。何処へ行ってしまったんだ。俺の沸切らない態度でギンコの気持ちに傷を付けた。馬鹿な貴族に暴言を吐かれ、傷心のまま、この国を追い出してしまった。
この国を、俺を、嫌わないでおくれ。
俺は今すぐにでも探しに行きたい。
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