第16話

 結局、その日は部屋を出る事すら出来ず、侍女さんにお風呂を案内されてお風呂に入って寝たわ。グレンは部屋に来なかった。


 次の日もそのまた次の日もグレンは忙しいらしく、私は部屋に軟禁状態。流石に飽きたわ。


侍女さんに街を見に行きたいってお願いしたらグレンに聞いてくれたようで護衛を付けてならいいと返事をもらった。護衛という監視よね。



 ローブを着て街に出る。久々に外の空気を吸ってスッキリ。やっぱり外はいいね。旅に慣れたせいか部屋に引きこもっていると疲れてくるのよね。


 私は折角なので新しい服や下着を買ったり、武器屋を覗いたり、護衛の人とお昼ご飯食べたわ。流石王都。品揃えも素晴らしい。


 魔法屋に寄ると最新式の茶色のローブが売ってたので即買いしちゃったよ。軽いのにローブ内の温度を一定に保ってくれるんだって。冬は大助かりね。はぁ、久々に外を満喫出来たわ。


また軟禁されるのかしら。このまま街を出たい衝動に駆られる。でも、何もしていないのに逃げて犯罪者みたいな扱いになるのも嫌だ。仲良くなった護衛に促されてそのまま部屋に戻った。


 翌日からは王宮の図書館で読書。これまた数日読書に励んだわ。


「ギンコは楽しそうだね」


「節穴か」


「明日はちゃんとギンコとの時間とるからね」


そう言ってまたグレンは立ち去った。侍女さんが言うに3年も放浪生活をしてきたツケで各所に呼ばれ忙しいらしい。


 グレンと会った翌日、侍女さんがドレスを持ってきた。どうやらこのドレスに着替えるらしい。ローブを剥ぎ取られ、コルセットで締められ、化粧をし、髪を結ってもらう。


「ギンコ様。とても綺麗ですわ。女神様のようです。グレン様が妃に迎えたいはずです」


侍女さんや護衛の人はベタ褒めしてくれた。侍女さんに案内されてお城の中庭へ案内される。


「待っていたよ。ギンコ。なんて美しいんだ。やはり我が妃にぴったりだ」


私、お茶のマナーなんて知らないんだけど!さぁ困った!


「ありがとう」


とりあえず、過去の知識を総動員してなんとか過ごすか。


「ギンコは何処の生まれなんだい?」


「(グレンが)知らない(世界)」


「ギンコは冒険者になる前は何をしていたの?」


「一般人」


「長く喋れるの?」


「喋れる。が、喋りたくない。(王侯貴族と)関わりたくない」


「何故?」


「嫌いだから」


「俺のことが?」


「全てが」


「そっか。辛い事があったんだね」


 少しずつではあるけど、グレンは話を聞いてくれようとしている。こんなに無口な私なのにね。優しい人よね。そう思っていると、一人の令嬢が現れた。


「グレン様、ここにいらっしゃったのですか。探しましたわ」


「ダニエラ嬢。何か用かい?」


「あら、自分の婚約者を探してはいけませんこと?こちらの方は?」


「彼女はギンコ」


軽く会釈してみる。挨拶の仕方分からないしね。


「あぁ、身分のない夫人予定の方ね?」


あぁ、こいつも人を下に見るやつなのね。


「今、一緒にお茶していたんだ」


「あら。そうでしたの?今から私とグレン様でお話をするので庶民のギンコさんはお部屋に戻って下さる?」


「いや、今ギンコと一緒にお茶し始めたばかりなのだが」


「私との時間は取りたくないのですね」


シクシクと泣き始めたダニエラ嬢。面倒な女だと思ったのは内緒。グレンもきっぱり言わない所も(一応)女の私の中での評価はマイナス50点だわ。もちろん連日の軟禁もマイナスよ?


はぁ、それにしてもこの茶番に付き合うの?私は邪魔者よね。2人のやり取りを見ても私の必要性は感じないね。


「帰る」


さっと立ち上がり、去ろうとするが、グレンに手を掴まれる。


振り向くとダニエラ嬢は射殺さんばかりに見つめてくるし、グレンは手を掴んで離さないこの状況。どうすれば良いんだ?


「おやおや、殿下ともあろうお方が婚約者に冷たいとは。さ、ギンコと言ったな。陛下がお呼びだ。付いてこい」


 誰かわからないが、中庭に入ってきた男は私に声を掛ける。きっと宰相。それっぽい体型と服だし。


胡散臭い事この上ない。


でも仕方がない。この場にいても修羅場を見るだけだろうしついて行くか。私のお世話をしてくれている侍女さんと共に宰相っぽい人の後をついて行く。慣れないドレスで歩くのは面倒だわ。王宮の廊下をゆっくりと歩きながら前にいる宰相っぽい人に言ってみる。

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