第13話 グレンside

 俺は武者修行の旅に出てはや、2年。今では一人で大体の事はこなせる自信もある。


 そんなある日、食堂の隅に居た一人の深々とローブを被って食事をしている魔法使いがなんとなく気になった。


他人を寄せ付けない感じ。食べにくくないのか?揶揄い半分で声を掛けてみたが、あからさまに拒絶された。


 自慢じゃないが、俺はモテる方だと思っている。いや、思っていた。魔法使いは俺を一目見て後は知らんぷり。初めての事だった。俺に惚れないなんて。目が悪いのか?それとも男に興味は無いのか?そこまで拒否された俺は魔法使いに興味を抱いた。


 半ば無理矢理パートナーにと言ってしまった。少し後悔はしたが、1人で戦いに明け暮れる毎日だったし、たまには息抜きでもいいか。


 俺の予想は大当たり。彼女は俺を置いて街から出る所だった。早朝に宿前で捕まえる事ができたのは僥倖だ。彼女はギンコという名前なのか。ギルドでギンコのランクに合わせた依頼をいくつか取っていく。街を出てからまず、ギンコの実力が見たくて敵を倒して貰った。サックリと倒してしまったな。


ギンコの育成を手伝っていて感じたのはアンバランスさ。ギルドでは収入のためにホーンを中心に倒していたらしい。聞けば片言で答える。不思議なやつだ。


 魔法をぎこちなく使う割に魔力が底を付かない。どこか特殊な環境にいたのか?しかも結界を張る事ができる。


 普段から無口で素性は知れないが、魔法は覚えたてを使っている感が否めないが剣は弱いながらも基礎は出来ている。そして覚えが早い。上級魔法も扱える。このまま仲間にしても良いとさえ思うな。料理も美味い。手際の良さをみると普段から料理をしていたのだろう。


ふと、俺は疑問に思い、ギンコに質問してみた。


「ところでギンコ。君はいつまでそのローブを被っているつもりだい?汚れないのか?」


「気に入って着ている。清浄魔法でいつも綺麗。」


なんだと!!清浄魔法も使えるのか。俺は使える魔法に偏りがあり、清浄魔法は使えない。早速、綺麗にしてもらった。さっぱりして気持ちいいな。洗濯って地味に面倒なんだよな。テントの中では乾かない事もあるし、パンツを干しながら歩くのも俺的には精神を削られるのだよ。これからはギンコに頼むとするか。

ギンコは逆にびっくりしていた。浄化魔法はみんなが使えると思っていたらしい。相変わらず知識の偏りが凄いな。


 ギルドに着いて依頼の宿に着いたのはいいが、完了手続きで目を見開いていた。それはそうだろう。俺の依頼に付いていけるようにランク上げ用の討伐依頼をこなしていたんだからな。ギンコはレベルとランクが合っていなさ過ぎる。


明日の試験に向けて俺達は宿で休むことにした。1部屋しかないのか。ギンコは引き入れたい仲間だし、構う事はない。ギンコは女だから一応気にしているようだが。今更だな!

ギンコはフラリと部屋を後にする。どうやら風呂へ行ったようだ。俺も久々の風呂を満喫するか。


 風呂から上がって部屋に戻ると先にギンコは部屋へ帰ってきていた。ふとギンコに視線をやる。


・・・。息を飲むほどの美人じゃないか。


こんな美人今まで見た事がないぞ。


ミルクティー色の髪に透き通るような肌。ブラウンの瞳。


やべぇ。


俺はこらからどうすれば良いんだ。


普段ローブを被っているから気付かなかった。俺はこれからの旅の予定を変更する事にした。と、とにかく、首都に向かわねば。


ギンコは我が妃に迎える。


これは決定事項だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る