第3話
ついにお城を出て行く日がきた。用意された鞄にノートなどを突っ込み、大きなリュックにも服や市井に降りる最低限必要な物を詰めた。宰相には心配され、少し多めのお金を貰っていざ出発。
ルイス君が言ってたけど、魔法や魔法郵便を使い相手に連絡を取る時は真名を使用するとの事。私の名前は 牧野 楓 だから桜に送っても連絡来ないわね。連絡は誰とも取らなくていいや。むしろ取りたくない。
ここに来てからというもの冷遇はされてはいなかったけれど、いつも可哀想な子という感じで哀れまれたり、通路で会う貴族からは馬鹿にされたり、嫌味を言われたり、俺の女になれとか本当に嫌な思いをしたのよね。
ルイス君やお世話になった騎士さんや侍女さん達は私に優しかったけれど。私は彼等にお礼を言ってお城を出る。
ルイス君はまず、身分証明が必要になるだろうからギルドに登録する方が良いと言ってたね。
王都と呼ばれるこの街に降りて最初に向かったのは宿屋。まずは休む場所を確保する。
道行く人に何軒かの宿屋を教えて貰い宿を見つけた。早めに宿を取り、街を一通り見学する予定。一応念のために付けられてるかどうかは確認してみる。
・・・が、見張られてはいないみたい。多分。魔力無しの庶民は見張る価値も無いと思われているのかも?でも何があるか分からない。念には念を!魔法屋に直接行くと怪しまれるので武器屋や薬屋、目的の魔法屋、雑貨屋等全て寄ることにしよう。
一番宿から近くにあった薬屋に入る。店には所狭しと名前の書いた薬瓶が置かれていて何を買えば良いか分からなくてなりそう。
「いらっしゃい。何が必要かね?」
迷っていると店主が無愛想ながらも聞いてくれた。
「ポーションを1つ下さい」
「はいよ。120ギルだ」
ポーション1つ120ギルね。これは高いのかよく分からないけれど他の店も覗けばそのうち物価も分かってくるはず。私はお金を払い、お店を後にする。
武器屋ではちゃんと武器を見てみる。斧やサーベル等が飾られていた。まだ初心者の私には良さが分からず支給された装備で充分な感じ。そそくさと店を後にする。
そして、ようやく、目的の魔法屋。店構えは何だか胡散臭い事この上ない。心配になるけど看板にはちゃんと『魔法屋』と書いてある。
「いらっしゃいな」
いかにも、な恰好の魔法使いのおばあちゃんがいた。
「おばあちゃん、私ね、初級と中級の魔法の本が欲しい。あと、私に合った杖も選んで下さい」
「おやまぁ、剣士から魔法使いに切り替えかい?珍しいね。どれ、この初心者用の杖はどうかね。大丈夫そうだね。ローブは必要かい?」
「目立たない茶色のローブをお願いします」
「ほれ、これが初級魔法本と中級魔法本。あと、お勧めなのがこの生活魔法本だよ」
この魔法使いのおばあちゃんは私を見て何か察してくれてる!?もしや、異世界人の魔力は何か違いがあるとか?私はドキドキしながらもそれ以上なにも言われなかったので内心ホッとする。
「ありがとう。おばあちゃん。全部魔法が使えるようになったら上級本買いにくるね」
そう言って店を出る。
よくよく考えたら剣をメインで冒険していたけど、限界を感じて魔法使いに切り替えたとか、王都の暮らしを辞めてオラァ冒険者になる!って魔法覚える人とか色々いるわよね。
あと立ち寄った野菜屋さんや肉屋さん、果物屋さんと王都なだけあってとにかく市場は賑やか。名前も食べ方も分からない物ばかりで困る。何となく、芋っぽい物や南瓜っぽい物という大まかな括りでは分かるんだけど。鑑定魔法が欲しいかも。
色々と街見学をして宿に戻ってからは魔法の本と格闘した。本を読もうにも字が読めないのがこんなに辛いとは!
字を書き記したノートを片手にひたすら睨めっこする事となった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます