第1話③

質問する事も無くなり飽きてきていたミホ、ミナ、ナナコは辞める為に最後の言葉を口にする。


「こっくりさん、質問は以上です。ありがとうございました。鳥居からお帰り下さい。」


十円玉が上の方へと動き出す。

そのまま鳥居に向かい三人で「ありがとうございました」と言えば終わりのはずだ。

それがいつもチラ見していたこっくりさんだ。


十円玉が鳥居へ向かう……と思われたのだが、すすすっと横に移動し いいえ の上で止まる。


「え?何これ、誰か動かしてるの?」

「ねぇ、もう疲れたー、早く辞めようよ。」

「こっくりさん、鳥居からお帰り下さい。」


スーッと少しだけ動き出すがまた いいえ の上で止まった。


「何で?!今までこんな事無かったよ?早く帰ってよ!」


見学していたサヤカがふと思った事を口にする。

「ねぇ。なんか寒くない?早く帰ろうよ。」


スーッと十円玉が動き出す。

鳥居の方ではなく文字の方へ……

十円玉は や と た へと動いて止まった。


指を置いている三人は軽いパニックになりながらもこっくりさんに帰るよう促しているが、十円玉はずっと や と た を行き来しているだけだった。

ミホが声を荒げて言う。


「ヤダじゃなくてもう帰ってよ!」


や と た の行き来が数分続きミホの声に十円玉は止まり、ふいに十円玉が や と た 以外に動いた。


「……し……ね……?」

「きゃぁ!!」

「やだっ!」


十円玉はゆっくりと動き続ける。

や と た の行き来だったのが今度は し と ね の行き来に変わった。


(初めて見たなぁ、帰らないこっくりさん。パニックを見て楽しんでるのかな?)


見てるだけのマナミとサヤカでさえ怖くなって泣きそうになる。

「もうやだよー」

「怖いんだけど」

見てるだけでも泣きそうなのに、半泣き状態の三人は指を離さずにずっと口々に「お願いだから帰って」と頼むように言い続けた。

それでもこっくりさんは帰らない。


こっくりさんは帰らない。


十円玉は動き続ける。


ふと思った。


誰と聞かれて認知されたモノはもっと遊んで欲しくなったのか

それとも仲間が欲しくなったのか

それとも泣きそうな皆を見て楽しんでいるのか……


どれが正解かは分からないけど


震える足を踏ん張り、出来るだけ冷静を装い、私は1度小さく深呼吸する。


(落ち着け、落ち着け。皆パニクってるから一人でも落ち着いていれば打開策があるはず)


私はすぅっと息を吸い、ふぅーと大きく息を吐いた。

そして十円玉に指を置いているミホの両肩に手を置き、真剣な表情、なるべく真剣な声でこっくりさんに話しかけた。

ミホは突然肩に手をかけられてビックリしてしまったがお構いなしだ。ごめん。


「こっくりさん、止まってください。」


ミナとナナコもふいに止まったがお構いなしだ。


こっくりさんはまだ止まらない。


「止まりなさい。」


十円玉の動きがピタリと止まった。







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