第1話②

私は妙な緊張感が戻ってきた。

(本当に動くんだなぁ)とこの時はただ軽く思っただけだった。


「やっと動いたー」「良かったー」

「ねぇ、誰から質問する?」


動いた事への安堵感からか少し笑顔が戻ってきた三人は誰から質問するか相談し、好きな人が居るミホから行く事になった。


質問前に鳥居に移動してもらい、ふぅーと息を吐いてから質問をした。

「本谷君に好きな人は居ますか?」


十円玉は数秒後、ゆっくりと はい へ移動した。


「それは誰ですか?」


十円玉がゆっくりと、けれど確実に文字列へと移動していく。


「……さ……と……み……!」


示し終わった十円玉は鳥居にゆっくりと戻ってきた。


同じクラスの男子の名前を出したミホの質問は違うクラスの女子の名前が出てくる結果となってしまった。


(可愛くて優しいもんなぁ、さとみちゃん)


ちょっと落ち込んでしまったミホの質問は終わったようで軽く慰めてから次にミナが質問した。


「明日の天気はなんですか?」


ゆっくりと十円玉が動き出し文字を伝える。


「……は……れ……」

「えー、明日晴れるのかぁ、じゃぁ体育は外でマラソンだねー」

「雨なら体育館なのになぁ、やだなぁ」


ゆっくりと十円玉が鳥居に戻る間に明日の天気への不満を口にするミナとナナコ。


(ナナコ走るの嫌いだもんなぁ)

明日の天気に苦笑いして三番目のナナコが質問する。


「アイコ先生の年齢は何歳ですか?」

「え?それ聞くの?あの厚化粧の?」

「だって本人に聞いても教えてくれないからぁ」


和気あいあいに三人は楽しみながら動くのを待っていた


数字へと動き出し年齢を指し示した十円玉はゆっくりと鳥居に戻った。


暫く適当な質問をしていた三人は

「何か他に質問とかある?」と見物していたマナミやサヤカそして私、マユへと聞いてきた。


そんな中、マナミがふと思った事を口にした。

「こっくりさんって誰なんだろう?」

「誰?動物じゃないの?」

「まぁいいや、聞いてみようよ」


三人は机に視線を戻して問いかけた。

「あなたは誰ですか?」


私は最初からちゃんと見たのは初めてで、そして10分以上こっくりさんを続けているのを見るのも初めてだった。

(誰とか聞くのもありなんだ〜)位にしか思ってなかった。本当に。


ゆっくりと十円玉が動き出す。

「……き……つ……ね……」

私はこの時に初めてやっと気付いたのだ。

休み時間の度にずっと行われていた「こっくりさん」や「キューピット様」等が全て降霊術なのだと。


そして何となく空気が重くなって何となく寒くなった気がした。

決して口には出さなかったけど何か寒いよ?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る