第27話 疑問

 この数日間、互いに隠してきた事を打ち明け合った。

 それで関係が壊れる事はなかった。

 そこが安心したなーと。

 話して何かが変わるなら、それまでの関係と思って、下手したら別れていたのかも。

 うん、大丈夫で良かった。

 ただ、疑問もあったりする。

 そこを聞いてみよう。



「みずきさん」

「はい、弦大げんた君」

 いつ見ても綺麗な顔だなー。

「どうしたの?」

 可愛いなー。


 ぷにっ。


「弦大君、大丈夫?」

「あっ」

 僕は人差し指でみずきさんの頬をつついていた。

「ごめん」

 手を引っ込めた。

「良いけど・・・」

「うん」

「ぼーっとしてる時に無意識はダメ」

「はい、反省します」

「なら、よろしい」

 無意識とはいえ、僕は大丈夫だろうか?

 不安だな。

「みずきさん、この前の事でさ」

「うん」

「少し気になる事があって」

「何かな?」

 一息吐いてから。

「その・・・僕と会った時、大丈夫だった?」

「というと?」

「あんな事があったなら、男の人に対して恐怖心とか拒絶とかなかったのかなーと」

 あんな酷い事がきっかけで、男性恐怖症になってもおかしくない。

「覚えてない?高校受験の日の事」

 えーっと何かあったかな?

「弦大君、誰か助けなかった?」

 うーん・・・あっ。

「筆箱を忘れたって言っていた女の子に、予備の鉛筆と消しゴムを渡したような・・・」

「いつか返さなきゃと思って・・・はい」

 みずきさんの手元には、その時の鉛筆と消しゴムがあった。

「もしかして・・・でも、その子は黒髪だったような」

「ごめん、ウィッグ使ってました」

「てことは、あの時の子は」

「そう、私だよ」

 まさかの新事実。

「初めて図書室に弦大君が来た時、直ぐ分かったの。あの時、鉛筆と消しゴムを貸してくれた人だって」

 そうだったんだ。

「だからね、弦大君の事は怖くなかったの」

 嬉しいな。

「弦大君、受験の日もいろんな人にぶつかりながら歩いていたから、この人大丈夫?って思ったよ」

「あー」

 その時の自分、バカだなー。

「でも、大丈夫だったから良かった」

「こちらこそ」

 返事は正解?

「ふふ♪」

「ん?」

 みずきさんがじぃーっと僕を見詰める。

 こういう時ってどうすれば?

 とりあえず、うーん・・・。

 考えていると。

「鈍感なんだから」

 とか言われて、頬に柔らかい何かが当たった。

「えっ」

 目を丸くしてみずきさんを見ると、彼女は頬を赤くしていた。

「教えないからね!」

 と言って、図書室から出て行った。

 うーん、もしかして・・・えっ?

 冷静に考えたら、理解した。


 みずきさんは僕の頬にキスをした。


 だんだんドキドキしてきた。

 頭の中が、ふわふわしてきた。

 とりあえず、考えないようにしよう。

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