第12話 成長

 あの騒動が瞬く間に校内で広まり、またみずきさんの存在も知れ渡った。

 そして、相談者がぼちぼち来るようになったそうで、それにみずきさんは対応していた。

 様子を見ていると、初対面相手に怖がらず落ち着いていて、さらに成長したんだなと実感。

 これで僕の役割は一段落。

「どうすればいいかな?」

 花壇に咲く花達に言った。

 返ってくる事はない。それでも聞いて欲しかった。

 秋の風は冷たい。もう少しで冬が来る。

「よっ!」

さとし・・・」

 ニコニコと陽気な聡が珍しく中庭にいた。

「大丈夫か?」

 どうやら心配してくれてるの?

「元気出せよー!暗い顔すんなや!」

 肩をバンバン叩かれた。痛いよ聡。

 良いなー、聡の性格は羨ましい。

「お前、もう少し攻めたらどうだ?」

 何だ急に。

羽咲はなさきさんとの距離を縮めたくないか?」

「そりゃまぁ・・・」

 方法があるならとっくにやるさ。

「おい、耳貸せ」

「ん?」

 耳元でひそひそと語り出す聡。

 それに対して僕は納得した。

 上手くいくかな?不安です。



 図書室前、あー大丈夫かなー。

 おろおろしていると、ガラッと戸が開いた。

 顔を出したのはもちろん。

「弦大君、どうしたの?」

 屈託のない笑顔のみずきさん。

「あー、いやー」

 何と言えば・・・。頭をポリポリかく。

「とりあえず、お話しよう♪」

 そう言って貰えてありがたい。



 僕とみずきさんはテーブルを挟んで向かい合っている。

 みずきさん、可愛いなー。

 髪サラサラなんだなー。

 目が綺麗だなー。

 どうすれば、こんな可愛い子が生まれるのかなー。

「弦大君ってば!」

「おわっ!」

 まさか、また僕は。

「ぼーっとして、ダメだよ!」

「ごめん」

 だって、ね・・・。

「身だしなみは念入りにしてるけど、恥ずかしいなー」

 みずきさんは頬を赤くして何かぶつぶつ。

「弦大君ぼーっと私の事見るから、余計に気にしてる自分、恥ずかしい・・・」

「えっ?」

「あー聞かなかった事に!」

 慌てている。うん、可愛い。

「あのーさっ」

「何かな?」

 ふぅーと息を吐く。

「黙って聞いてて欲しいんだけどさ」

「うん」

 みずきさん、そんな深刻な顔をしないで。

「友達がさ、気になる人がいて、その子との距離を縮めるにはどうしたら良いと思う?」

 “友達が”は、大体嘘で自分の事を指すわけで。

 バレたらバレたで反応はあるって聡が言っていた。

 みずきさんの様子を見ると、真剣に考えていた。

 腕を組み、うんうん考えている。

 まさか、バレてない?

 この子、僕より賢いんじゃなかった?

「うーん、相手の性格によっては攻め方は変わるからね」

 おお・・・師匠。

「追いすぎて引かれたらダメだから、難しいなぁ・・・」

 こんなに真剣に、申し訳ない。

 気になる人って、目の前にいるあなたなのになー。

 まだまだ、距離は縮まらないようです。

 ちゃんちゃん。

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