第13話 踏み出す先には
自由参加の文化祭。
なのに、まさか委員会で参加になるなんて。
僕は変わらず中庭の花壇の世話をしていた。
今日も綺麗に咲いている花。見ていて癒される。
静かな中庭は今は文化祭で賑やかな場所になっている。
「さてと」
帰ろうかなー、どうしよう。
「いたいた!おーい!」
「ん?」
先輩は走って僕の所に来た。
「何ですか?」
「
「えー」
「嫌がるな!」
一体何ですか?嫌だなー。
体育館に連れて行かれた僕。
「この子を急遽出すから!生け贄ね!」
物騒だな!
「君が宮藤君?」
「あーまぁー」
あなたは誰?
「私は3年の
えーっとー、生徒会長さん?
「ふんふん・・・へー」
僕の事を360度見ていた。やだなー。
「うん、OK!後はこっちで変身させるね!」
「はぁー良かったー」
「えっ?えっ?」
怖い、怖いよ。
「さっ着いて来て!」
清水先輩の後ろを着いて行った。
※
ステージの上に僕はいた。
「では自己紹介を!」
「2年の宮藤
うーん、とんでもない所にいる。
「何故、出場を?」
「清水先輩に言われて・・・はい」
「生徒会長様、直々!?」
あー、あの人、人気者だったなー。
ファンいるみたいだし、他校にも。
“様”かー。
「いやー、イケメンですねー!」
いやいや、あり得ない。
眼科に行った方が良いよ。
「でも、見かけませんね」
「あー、こんな髪型初めてでして」
「そうなんですか?」
「ワックスも初めてだし、こんな服装も」
「えー!?」
ごめんなさい、今時じゃなくて。
「普段学校では教室以外どこに?」
「えーっとー、中庭とか畑とか」
「園芸委員?」
「はい」
「植物に優しいんですね」
「それほどでも」
当たり前のように気にかけているだけ。
土に花に触れてないと落ち着かないし。
僕の癒しを邪魔しないで下さい。
「ありがとうございましたー!」
「こちらこそー」
ステージからはけた。ふぅー終わったー。
会長さんのせいで、いや、司城先輩のせいで、散々な目に合いました。
あとで必ず来年に向けての園芸委員会への予算を上げといて下さいってお願いしよう。
さて、恥かくなー。あーやだやだ。
イケメンじゃないのに、コンテストに飛び入りしてしまいましたとさ。
※
元の姿に戻った僕はフラッと図書室へ。
文化祭はさすがにいないと思っているけど、いるかもしれないと思って覗いて見ると。
「あっ」
みずきさん、いる!?
僕は戸を開けて入った。
「弦大君!」
「みずきさん、どうして?」
「図書委員の委員長さんに頼まれて」
「へっ?」
「お留守番だよ」
「朝からずっと?」
「うん!」
なんと。
「弦大君いないと思ってた」
「僕はみずきさんがいないと思ってた」
「ふふ♪」
くすくす笑うみずきさん。
「ねぇ?文化祭ってどんな感じかな?」
「賑わってるよ」
「体育館での発表は?」
「楽しそうだったよ」
「弦大君、回った?」
「いやー、そのー」
黙ってもどうせ
話し終えるとみずきさんはくすくすというより、きゃっきゃっ笑っていた。
「そうだったんだ!見たかったなーイケメン弦大君!」
「あり得ないよ」
「ううん、あり得る!」
えー?いやいや。
「写真は?」
おねだりしないで。
「まあ、記念に撮っとけーって撮られた」
観念して見せた。
「どれどれ」
すると、みずきさんの目が大きくなった。
「嘘・・・えっ?えっ?」
写真と僕を見比べるみずきさん。
かなり驚いてるようだ。
「弦大君・・・」
「はい」
「写真の時の方が良いよ」
「ん?」
みずきさん、まさか。
「断然、この時の弦大君の方が良い!」
オーノー。
「あっ・・・」
どうしたみずきさん。
「やっぱり・・・今で良い」
「えっ?」
みずきさんの様子がおかしい。どうしたの?
「毎日カッコ良い姿だと、ダメ」
「それって?」
どういうこと?
言葉を待つ。
待つこと体感的に5分。
黙っていたみずきさんはゆっくりこう言った。
「一緒にいる時間が減ってしまうから・・・」
ドクン・・・
息を吸う事を一瞬忘れた。
それだけ衝撃的だった。
なんと言えばいいのか少し考えてから言った。
「大丈夫」
「えっ?」
「僕はみずきさんとの時間は必ず作るというか、こうして自然といつも来てるでしょ?」
「あっ」
「だから、大丈夫。心配ないよ」
すると、みずきさんは安心したのか表情が柔らかくなった。
「だね、ありがとう」
素敵な笑顔になった。良かった。
「こちらこそ」
僕も顔が綻ぶ。
「弦大君」
「何?」
「好き」
・・・
「さて、そろそろ帰るね!」
あれ?えーっと?
みずきさんは鞄を持って立った。
「それじゃ、またね!お疲れ様!」
笑顔でみずきさんは図書室を出たのだった。
置いてきぼりになった僕は放心状態になって、動けずにいた。
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