第11話 逃げたら何とかなる!

 当日。待ち合わせの15分前には、僕とみずきさんと優愛ゆめ皆川みなかわさんは公園に集合した。

「いよいよね」

 と優愛。

「緊張します」

 と皆川さん。

「大丈夫、大丈夫」

 とみずきさん。

「うーん」

 部活でさとしが来れないのは不安。

 僕、喧嘩とか暴力とか出来ないよ。

「いい?昨日決めた通りにやること」

「はい」

「ポケットにはある?」

「はい、あります」

「想定外な事が起こった場合は、何が何でも外に出ること」

「はい」

 優愛はいつから皆川さんのお母さんに?

「あっ、来た」

 皆川さんを残して、僕達は木々の後ろに隠れた。

「おはよう、お待たせ」

「おはようございます」

 私服、チャラい。

「私服、可愛いじゃん。似合ってる」

「ありがとうございます」

 皆川さんの笑顔がぎこちない。

「んじゃ行こっか」

「はい」

 公園を出る2人の後を追うように尾行した。


 男の自宅に到着。

 2人は中に入って行った。

「後はきちんと掴めれば良いわね」

「心配だなぁ」

 優愛とみずきさんは心配な表情に。

 でも僕は心配というより危機を感じていた。

「何かあれば、出てくるよ。待とう」

 信じるしかない。


 僕が残って優愛とみずきさんはさっきの公園に戻った。電柱の影に隠れつつ様子を見ていること30分。

 そろそろ交代してもらおうかなーと思っていたその時。

「ん?」

 ドタドタと騒がしい音が聞こえてきた。

 ついにヤバいか。スマホでみずきさんに電話をすべく繋げた時。

「さよなら!」

 皆川さんが慌てながら出てきた。

 僕はスマホに耳を当てず皆川さんのいる方向にスマホを向けた。

 あとは察してくれ。警察にでも連絡をしてくれと願って。

「待てよ!待てってば!」

 怒った顔で男が出てきた。

 彼は皆川さんの腕を掴みグッと引き寄せようとしている。

「は、離して!」

「絶対離さない」

 行かなきゃ。

「皆川さん!」

宮藤くどう先輩!助けて!」

 決定的な“助けて”は効果抜群。

 スマホの向こうから微かに『今から警察に電話するから!』とみずきさんが言った。

 よし、これで良い。

「誰だお前?」

 あー、ターゲットが僕に。

「2年の宮藤です」

 ビビってません、すまし顔すまし顔。

「知らんけど、美都みつと何だよ?」

「先輩後輩」

「そうじゃなくて!」

 事実を言ったのにー。

「とりま、美都は渡さないからな」

 僕の事勘違いしてるなー。

「ダサッ」

「は?」

 ヤバい、心の声が出ちゃった。

「俺の事、バカにしやがって!」

 よし、ここはアレしかない。

 皆川さんの手を掴んでいた相手の手が緩んだ隙に、皆川さんをグッと引き寄せ彼から離した。

「あっ、この野郎!」

「逃げよう!」

「は、はい!」

 2人で走って逃げた。

「待てやコラー!」

 追っかけて来た。うーん、疲れたしどうしよう。

 必死に逃げていると。

「大丈夫かー!?」

 警察が来た!


 この後は警察がアイツを捕まえたお陰で何とか切り抜けた。

 事情聴取はめんどくさかったけど、起こった事を話して、皆川さんに持たせたボイスレコーダーを提出して、後は帰っても良いということで、優愛とみずきさんがいる公園に僕と皆川さんは着いた。

「怪我ない?」

 心配するみずきさん。

「大丈夫」

「大丈夫です」

 無事が奇跡的だなー。

「良かった良かった」

 のんきな優愛。

「はー、お腹空きましたー!」

 おお!若い!

「なら、食べに行こっか?」

 緊張の糸が切れるとそうなるよねー。

「みずきはどう?大丈夫?」

 一応、聞かないとね。

「あっ、うーん」

 悩むなら行かなくてもいい。

「ごめん、僕とみずきさん用事あるからここで」

「えっ、げっ・・・」

 目を丸くするみずきさん。

 人差し指を口元に当てて「しー」とみずきさんを黙らせた。

「そっかー♪ふーん♪」

 ニヤニヤしてんな!

「皆川さん、行こ行こ!」

「はーい!」

 2人で行くんかい!

「宮藤先輩、羽咲はなさき先輩、ありがとうございました!」

「「どういたしまして」」



 優愛と皆川さんが居なくなった。

「弦大君、私用事なんて」

 ですよねー、でもね。

「僕と少し話さない?」

 どう出るかな?

「えっ?」

 みずきさん、驚いてる。

「嫌なら送るよ」

 保険無くても良いのに、身を守ってしまった。

「ううん、お話する!」

「じゃぁ、ブランコにでも」

 2人並んでブランコに乗りながら会話。

「今日は危なかったね」

「うん、でも逃げていたら警察来たから良かったよ」

「連絡したからね!」

「助かりました」

「どういたしまして」

 怪我なくみんな無事で本当に良かった。

「私、決めた」

「ん?」

「これから、また相談があれば、乗って解決出来たらして、話を聞くだけでも良いなら、安らぎをと思って」

 みずきさん・・・。

「どうかな?弦大君?」

 みずきさんとの時間が減るのは嫌だけど、別に僕は彼氏ではないから何も言えない。

 だから、僕は。

「うん、良いと思うよ。応援する」

 背中を押した。

「ありがとう!」

 笑顔のみずきさん。

 これで良い。みずきさんのしたいように。

 それを応援していく事が友達としての役割。

 だから、これで良い。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る