第10話 あとから理解

 皆川みなかわさんの相談を聞いた日から1週間。

「では、どうぞ」

 僕とみずきさんと皆川さんは、緊張感ある図書室にいた。

「はい、あの後どうなったかと言うと」

 ドキドキ、ドキドキ・・・

「我慢したら向こうから連絡きました!嬉しかったです!」

「おおー」

「やったね!」

 出だし良いね。

「それから向こうから連絡くるようになって♪」

 へぇー。

「毎日ニヤニヤしてます!」

 幸せそうな顔をする皆川さん。

「なるほど・・・」

 あれ?

「みずきさん、どうした?」

「あっ、いや、なんというか」

 みずきさんは少しもごもごした後。

「なんか・・・心変わりが気になって」

 ん?

「皆川さんに黙って私、3年生の教室を覗いたの」

 だ、大胆!

「言っていた通りの、見た目がちょっとチャラかった」

 行動力がついてきたなー、成長してますなー。

「休み時間に、私じゃなくて、友達に頼んで、その人の人柄の情報を収集してもらって」

 友達?そういえば、優愛ゆめが最近休み時間にどっか行ってたけど・・・これか!

「それでね、なんというか・・・」

 不穏な感じ。


「単刀直入に言うと、止めた方が良い」


 そうなんだ・・・。


「どうしてですか?」

「“友達”なら良いけど、“恋仲”は進めない」

 はっきりとみずきさんは言った。

「理由は?」

 みずきさんは深呼吸をしてから言った。

「言うこと聞くような子に近づいて手を出したら終わり、そんな人だと聞いたの」

 皆川さんはどんどんと泣きそうな顔に。

「そんな人には」

「優しいフリしてとんでもない人だよ」

 諭すようにみずきさんは言う。

 分かって欲しくて、傷ついて欲しくないから。

「でも・・・明日、その人の家に遊びに行くんです・・・」

「「!?」」

 これは大変だ!

「まずは今断ろう」

「なんて?」

「用事とか!」

 早速、断りの連絡をした。

 すると秒で返信が来た。

「秒はやっぱり、やり手かも」

「女の子みんなにそうなのかなー」

 女好きの気持ちは分からん。

「なんか凄いです・・・」

 画面を見ると。


『なんで?』『どうして?』『急だね?』

『嘘でしょ?』『俺よりもそっち大事?』


 しつこい。

「これは大変だなー」

弦大げんた君、今から電話します!」

「誰に?」

「優愛ちゃんに!」

 あー、ならなんとか解決出来そう。



「お待たせー♪」

 風紀委員の仕事でまだいた優愛。

「あのクソ男に鉄槌を!」

 なんか面白がってません?

「あなたが皆川さんね!私は小園こぞの優愛、よろしく!」

「よろしくお願いします!」

 皆川さん、優愛に若干ビビってません?

「んで、明日なんでしょ?会うの?」

「はい」

「まず皆川さん、目を覚ましなさい」

 ごもっとも。

「あなたがしっかりすれば、明日の事は怖くない」

 優愛が、優愛が・・・まとも。

「弦大?」

 優愛が僕の事を睨む。

「すみません」

 直ぐ謝った。何で僕の心を読めるの?

「・・・小園先輩・・・私・・・」

「うん」

 俯いていた皆川さんは顔を上げた。

「やっつけたいです!」

 そこに迷いはなかった。

「よし!決まり♪」

 僕達は明日の事を話し合った。

 どうなることやら。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る