第9話 新しい事
2学期がしれっと始まった。
というのも、僕はほぼ毎日学校に行って園芸委員会の仕事をしていたため、学校が2学期に入ろうが感覚的には、ただ賑やかさが戻った、という感じ。
花に音楽を聞かせる事を試した。
水やりと太陽と光合成に加えた音楽。
なんとなく、花がいつもより元気になったように見えたし、枯れにくくなったなと。
そして、この暑さに負けていなかった。
家では花壇の隣に畑があるから、自然と音楽が畑にも流れているわけで。
収穫した野菜の糖度を計ったら上がっていた。
家族みんな『今年の野菜は特別』と口を揃えて言っていた。
美味しくなるんだな、凄い凄い。
引き続きやってこう。
いつものように図書室を覗くといた。
「やあ」
「
図書室でお馴染みの妖精さん・みずきさん。
「どうしたの?お昼食べた?」
「食べ終わったから来た」
「ふふ♪嬉しい!」
僕も邪魔者にされてなくて安心。
「そうだそうだ!これ見て」
「?」
1枚の2つ折りの紙が手渡された。
開いて見ると。
『相談したい事があるので放課後お願いします』
えーっと?何だこれ?
「どこにあったの?」
「カウンターに」
「どうする?」
「一応、聞いてみようかと」
みずきさん?
「初対面かもよ?」
「でも、困っている人なら」
「うーん」
困ったなーと思っていると。
「弦大君、一緒に聞こう!」
えっ?
「役には立たないよ?」
「私の付き添いってことで!」
「あー」
なるほどー。
「分かった、良いよ」
「ありがとう!」
こうして2人で放課後の図書室に来る相談者を迎える事になった。
※
放課後の図書室。
僕とみずきさんしかいない。
とても静かだ。
「そろそろ来ても良いよね?」
「確かに」
30分待ってもまだ相談者は現れていない。
「いたずらなら悲しい」
「だよね」
うん、本当にそうだ。
「あと、10分したら帰ろう?」
「うん、そうする」
と言っていたその時。
「すみませーん!遅くなりました!」
大きな声で図書室に入って来たのは女子生徒。リボンは青なので1年生だ。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
急いで来たんだね。
「大丈夫?」
「あっはいはい、大丈夫です・・・はぁー・・・」
苦しそう。
「とりあえず、座って」
「はぁー・・・ありがとうございます」
少し落ち着いたようだ。
「あの、私、1年の
「私は2年の
「僕は2年の
まずは名乗る、常識。
「あの、手紙にも書きましたが、相談がありまして」
「とその前に」
「弦大君?」
疑問、解消したい。
「どうしてみずきさんに相談を?」
何故かなと。
「図書室の前を通ったら羽咲先輩がいて、何度か通っている内に、この人になら相談しても大丈夫かなーと」
なんという事でしょう。
1年生でもみずきさんの存在を知っているって驚いた。
「そうだったんだ」
「なるほどー」
納得した。
「では早速、相談を聞きましょう」
みずきさん、落ち着いている。
成長したなぁ。
「相談というのは・・・恋愛・・・でして」
「「!?」」
デリケート問題。
「あの、僕、退室しようか?ほら女子同士の方が話しやすいでしょ?」
恋愛なんてよく分からないよ。
「いいえ、聞いて下さい、宮藤先輩」
「えっ」
「大丈夫なので!」
いやー、うーん・・・。
「本当に良いの?」
「はい!」
あちゃー。
「うーん」
迷っていると、僕の制服をくいくいとみずきさんが引っ張った。
「聞こう?」
上目遣いで首を傾げたみずきさん。
ドキッ・・・
「分かった」
何だ、あの上目遣い。何だ、あの目。
心臓に悪いし、言うこと聞いちゃうよ。
「では話します」
皆川さんは深呼吸をして。
「私、3年生に仲の良い人がいて、その人の事が好きで・・・」
「ふむふむ」
「多分、私の気持ちに気づいてないと思うんです。でも気づいて欲しくて」
「ほおほお」
「夏休み中に1度だけ2人で遊んだし、あとは友達と一緒に遊びましたけど、なかなか」
へぇー。
「どうすれば伝わりますかね?」
親密過ぎなんだろうな。
「毎日連絡してる?」
「はい」
「なら、一旦連絡せずに待つのはどう?」
「それは私が寂しいです」
「自分から連絡しているなら、なおさら待つ!」
どんな意味があるの?みずきさん。
「言葉の駆け引きより、行動の駆け引きは簡単かと」
みずきさんが恋の師匠みたいです。
「なるほど・・・」
「心を鬼にして!」
あれまぁ。
「分かりました、やってみます!」
「相手から連絡くると嬉しいので!」
「はい!ありがとうございます!」
「あと相手の方はどんな方か教えて」
みずきさんは皆川さんの好きな人の情報を事細かに聞いた。
「うん、また来てね?どうなったか知りたいから」
「はい分かりました!」
皆川さんの顔色が良くなっていた。
「ではまた!失礼します!」
「またね♪」
手を振って見送った。
「どうなるかな?」
「良い方向にいくと良いなぁ」
本当にそうだ。
この相談をきっかけにとんでもないステップを踏む事になろうとは、この時のみずきさんと僕はまだ知らない。
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