第7話 近づく夏
夏休みまであと1週間。
することは何もない。
ただ、学校の花壇とプランターの花に水やり手入れ。
家の観葉植物達にも同じ事をする。
そして話し掛ける。
試したい事は音楽を聞かせてみる事くらい。
明るいポジティブな曲や落ち着いたしっとりした曲をと考えている。
そうしてー・・・。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん!」
「ん?」
振り返るといつの間にか部屋に入って来た妹の
「ご飯だよーっておばあちゃんが!」
「ありがとう」
パタパタと弦姫は階段を駆け下りた。
弦姫はこの話し方からして幼いと思った方は間違いです。
妹はもう中3です。
ほんわかした性格でして、素直さが危ないと思いつつ。
居間に行くと美味しそうなおかずがズラリ。
「美味しそう」
「そうかいそうかい」
笑顔のおばあちゃん。
「
陽気なおじいちゃん。
「私、頑張って里芋のにっころがし作ったの!食べて食べて!」
「はーい」
我が家は平和です。
この時間を大切にしよう。
※
「これはどうしたものか?」
スマホのメッセージアプリのトークを眺める。
「うーん」
ふいに、僕の指が先に動いた。
すると2コールで出た。
『もしもし、みずきです』
「もしもし、弦大」
『どうしたの急に?』
「時間大丈夫?」
『うん良いよ』
夜10時、遅いよねと思ったけど、大丈夫のようだ。
「トーク見た?」
『うん見たよ』
「何で僕ん家?」
『それは、何でだろう・・・』
話の流れか。
「良いんだけどね」
『そうなんだ』
「突然だなと」
『だよね』
「とりあえず、家の人には許可貰ったからさ」
『あとはみんなで持ち寄って楽しむだけだね』
「うん」
僕、みずきさん、
話の流れで、“僕の家で打ち上げ花火を見て、市販の手持ち花火をする”という。
「みずきさん、大丈夫?人数とか」
『大丈夫、いつものメンバーだから!』
「ヤバくなったら直ぐに送るから」
『ありがとう弦大君』
電話越しの声はいつも聞く生の声とはまた雰囲気が違った。
「良い声、だね」
口からポロリと出た。
『いや・・・いやいや!』
電話越しでも分かる慌てぶり。可愛い。
「自信を持って」
『えと・・・ありがとう』
照れてるな。
「んじゃまた」
『うん、またね』
暫く互いに切らない。
「えーっと?」
『先に切ると思って』
「僕も」
『同じ』
「だね」
なんだか可笑しくて、2人して笑った。
「じゃあ、いっせーのーせで切ろ」
『うん』
「いくよ?せーの・・・」
「いっせーのーせ」
『いっせーのーせ』
ようやく電話が切れた。
とてつもなく淋しさが残った。
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