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『9月9日(水)

 曰く、桜の部活の無い水曜は、執行日に決まったらしい。殆ど誰も利用しない旧校舎の個室で、桜に用を足させる。トイレに入っている桜に向けて、天井からホースで、執行者が水をかけ続ける。叫び声も悲鳴も届かない。入り口には使用禁止の看板を立ててある為、絶対にばれる恐れは無い。ばれたとしても、もみ消すくらい容易いんだろう。俺はそれを、こうして、眼を背けずに、記録しなければいけない』


『10月7日(水)

 今週からカメラでの撮影も義務付けられた。撮影した映像を見返し、内容を纏めてレポートの様に書けと言われた。今日は、ライターで熱した鉄の焼印を、桜の腹に突立てた。肉の焦げる音と、微かな香りと、誰にも届かない桜の絶叫。痛い、熱い、止めてと泣き叫ぶ桜。それを止められない恋人の俺。そして、それを無表情に桜に突立てるあいつ。刻印のマークは、アルファベットの『H』だ。俺とあいつ、傍観者と、執行者。桜から見れば、本当の悪魔は、どっちだろう』


『10月28日(水)

 桜に与えられた指令は、昼飯を食べずに取っておけと言うものだった。桜はいつも、手作りの弁当を学校に持ってきていた。指示通り弁当を持ってきた桜は、その弁当を旧校舎のトイレにぶちまけられた。そして、手を使わずに、一つ残らず食べろと言った。泣きながら、旧校舎のトイレの床を舐める桜。俺も泣いている。あいつも泣いている。ここは本当に、現実の世界なのか? もしかしたら、地獄なんじゃないのか?』


『11月11日(水)

 今日は桜を体育館の倉庫に閉じ込め、柱に縛り付けて一晩中放置すると言うものだ。俺は定点カメラだけセットして、後で映像を見ろと言われた。映像には、執行者は帰宅前に桜にたらふく水を飲ませる様子も映っていた。だからだろう。朝、桜の縄を解きに行くと、体育倉庫中にアンモニア臭が立ち込めている、酷い状況だった。急いで縄を解いてやると、桜は一目散に洗い場に行き、スカートや、その他諸々を洗いに行った。だけど一日中、教室は臭くなったし、桜からも臭いがした。家に帰り、映像を確認しながらこれを書いている。桜が泣き、叫び、最後は涙を流しながら笑い、それと共に催していた。こんな事、よく思いつくなと思いながら、桜もそろそろ限界かもしれないと、思うようになった。それと同時に、これを冷静に判断出来るようになってしまった俺も、相当壊れてしまっているのだろう。すまない、桜』

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