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『2014年、4月6日、日曜日。

 明日は高校の入学式。つまり、明日から女子高生になります。折角なので、何か新しいことを始めてみようと思い、今日から日記を付けてみることにしました。初日だから何を書いていいのか分かんないけど、この日記が、素敵な物になればいいなって、思ってます。この日記には、なるべくいい事だけを書くようにしよう。読み返した時に、素敵な思い出で一杯になるような、ポジティブな物にしよう』


『4月7日

 今日、入学式があった。晴れて高校生だ。志望校のランクを上げて正解だった。小・中時代の知り合いは殆ど居ない。知っている顔も、時折見かける程度だ。以前までの俺の事を知っている奴は殆ど居ない。新しい学校で、俺は新生活をスタートする。新生活に当たって、らしくなく日記なんてつけてみた。気張らず、三日坊主程度の気持ちで、時折記して行こうと思う。今夜は、よく眠れそうだ』


『2014年、6月15日、日曜日。

 今日は所属しているバレーボール部の初めての公式戦でした。私は一年生だから、応援だけど、先輩達のプレーは凄かったです。初戦は見事勝利。今は毎日必死にボールを追いかけたり、基礎練習の毎日だけど、来年の今頃には、私達も大会に出場したりするのかな? 全然実感が湧きません。でも、先輩達みたいに頑張って、必死に練習に食らいついていきたいと思って居ます』


『7月7日

 久々の日記だ。生徒全員部活動強制加入と言うクソみたいな校則のせいで、部活動をしなきゃならない羽目になっている。強いて言えば宇宙や星が好きだったのと、個人主義な奴が多そうだから、一応天文部に籍を置いたが、7月7日は学校に宿泊して天の川を見るイベントがあるなんて知っていれば、入らなかっただろう。今から泊まりの荷物を持って、もう一度学校に戻らなければならない。面倒くさい。あー、面倒くさい』


『2014年、8月6日、水曜日。

 夏休み中も毎日部活があるなんて聞いてなかったです。でも、毎日部活仲間に会えるのは楽しくもあります。水曜と日曜だけはお休みなので、今日は部活の皆で息抜きがてらに海水浴に来ました。熱い砂! 眩しい太陽! ああ、ようやく夏って感じがします。すっかり慣れたと思っていたのに、塩水だと違うみたいで、アンダーレシーブでボールを受ける所と、豆の潰れた後の足の裏がヒリヒリしてヤバかった! でも青春って感じで楽しかったなぁ。女ばっかり6人で行ったけど、来年は、男の子とも行きたいな、なんて、言ったりして』


『9月8日

 今日は気分のいい日だ。中秋の名月なのに、風邪やらなんやらで、天文部には俺一人。今、屋上に鍵をかけて、月と孤独を堪能している。雲は少し掛かっているが、別に気にならない。天文部の奴らは気に入らないが、星や宇宙を見る事と、屋上の空間は気に入っていた。闇の中、柵の外を眺めてみる。月が見事なせいか、いつもより屋上が高く感じられ、吸い込まれそうな程に、闇が愛おしい。自殺の時、飛び降りを選ぶ奴の気持ちが、少し分かった気がした。この綺麗な景色を焼き付けられるなら、悪く無い最期だ』


『2014年、10月2日、木曜日。

 学園祭の後夜祭で、人生で初めて、男子から、告白と言うものをされました。相手は、7組の、門倉桃慈君。全然知らない相手だったけれど、文化祭の出し物で、うちのクラスでやっていたメイドカフェに来てくれて、仲良くなりたいって思ってくれたらしいの。だから、お友達からお願いしますって言われて、じゃあ、そう言う事でって、なりました。今、とっても幸せです』


『11月

 あれは、何日前だったか、もう覚えていない……。ただ、人生でこんなに、誰かを殺したいと思う日が来るとは思わなかった。あいつが憎い。仲良し面していた癖に、俺の事を突き放して幸せを謳歌しているあいつが憎い。こんな事、普段口に出したりしたら、完全に危ない奴だ。でも、日記の中くらいでなら、毒を吐いてもいいだろう。憎い、殺してやりたいほど。自分の中に、こんなどす黒い感情があったなんて、正直ショックだった』


『2014年、12月21日、日曜日

 クリスマスがド平日なので、その前のお休みでの早めのクリスマスデート。桃慈君からは、可愛い蝶のブローチを貰っちゃって、私からは、値段はお安めだけど、シャレてる銀色の腕時計にしました。それと、おまけとして、水色の表紙のノートを一冊、プレゼントしました。これを、二人の交換日記にしませんかって。気恥ずかしい桃慈君の顔がとっても可愛かったです。そうそう、初めて、キスをしました』


『4月

 最悪な事が起こった。2年に進学し、クラス替えをした結果、あいつらと同じクラスになった。馴れ馴れしく話しかけてくるが、もう以前の様な顔であいつらを見れない。今日は表面上、笑って返したが、俺の精神がいつまで持つか……。だけど、逆に考えたらこれは、神様が俺に与えてくれたチャンスなのかもしれない。そう考える事にした。精神を鍛える試練なのだと。だが、いつか、もしも爆発してしまったとしても、誰が俺を責められよう。毎日が、地獄だ。辛い、つらい、つらい』


『2015年4月6日

 今日から二年生。そしてそして、嬉しい事に桃慈君と同じクラスになることが出来ました。二年生って言ったら、修学旅行もあるし、彼氏彼女になって初めての学園祭もあるし、楽しみでしょうがないです。ああ、そうだ、懐かしいお友達とも一緒になりました。私は昔、彼女を酷く傷つけてしまった事があって、それから、疎遠になってしまっていました。今日も、話しかけようとしてみたんだけど、もう彼女は私以外の仲のいい子を見つけたみたい。だから、勇気の無い私がいけないのだろうけど、今は前みたいに、話す事が出来ません。もしもまたいつか、仲良くお話が出来る時が、来ればいいなって、思ってます』


『8月31日

 明日からまた学校が始まるかと思うと、気が狂いそうだ。夏休み中は、あいつらの顔を見る必要が無くて良かった。だけど、今日、夏休みの最終日に、あいつらが二人で街で買い物をしてる所を見かけてしまい、その幸せそうな姿に、思わず胸を切り裂かれそうになった。急いで家に帰り、これでもかと言う程愚痴を聞いてもらったので、今はちょっと冷静になれた。いつか、またあいつらとも普通に、話をする事が出来るのだろうか? 友達に戻る事が出来るんだろうか? 俺は、一体どうしたいんだろう。明日からの学校が、憂鬱で仕方ない。いっそ、消えてしまえたらどんなに楽か』


『2015年11月28日土曜日

 ポジティブな事しか書かない日記に、やっと書く事が出来ます。これから学校に行って、全てが終わります。大体は遺書に書きました。それでは、さようなら』

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