第77話 戦いの準備
「そっちはどう?」
悩んでいると、頼れる指揮官エフテ様が現れた。
女性陣は工作室で、修理交換用のGユニットや修理工具の確認をするって言ってたから、その目処が付いたんだろう。
「装甲車は四人乗り、予想通り付属武器は無し。武装のチョイスに迷ってる」
「期待していた重機関銃は無かったのね」
苦笑するエフテが立てた作戦は、レベル5までの解放装備の中にある装甲車をメインに積めるだけの武器を満載し敵陣に切り込み大殺戮を行うというものだ。
その間に、サブリが船体の修理を行う。
装甲車で死を告げる役目がアリオ。
死神の運び手がプロフ。
僕とエフテは、サブリの護衛と修理アシスタントを流動的に行う。
プロフの運転にアリオが難色を示したけど他に人材がいなかった。
どこの担当も危ないことは間違いないが、アリオが何故、運転手に立候補したプロフを恐れているのかは分からない。
本人曰く「ココロが恐怖を感じてる」んだそうだ。
プロフ激おこである。
紆余曲折の末に担当は決まったが、具体的な兵装がはっきりしなかった。
「ミサイルは、あれだけ広範囲に展開されると効かない。爆風にもある程度耐えやがるからな。ブラックホークやライフルの特殊弾は効くだろうが、装弾数の関係でメインウエポンにはならない。レーザーは強力だが一撃必殺タイプ。ボウガンやパイルバンカー、チェーンソウは論外っと。高速移動しながら実体弾をばら撒くってのが一番効果的だったんだがな」
「わたしたちは、有資源運用する単独行だからね、エネルギー変換できる兵装はともかく、火薬式の弾丸ってばら撒くほど在庫も無いし製造もできないんでしょ」
「ブラックホークやライフルは使ってるのに?」一応聞いてみる。
「単発運用だからな、その代り弾頭の種類は豊富だ。量より質で勝負しろってことなんだろ」アリオが答える。
「機関銃の弾幕の代わりになるのは……火炎放射器かしら?」
「そこも微妙なんだよ。燃料の性能が良いと、まあずっと燃え続けるわけだ」
「いいことだろうに。あいつらの剛毛、耐火性能も高そうだよ?」
「で、火達磨になっても動き続けるわけで、船や俺たちに抱きつかれたらって考えて見ろよ」
オークと文字通り熱い抱擁を交わしながら死のダンスを踊るのか。
嫌な死に方ベスト5に入るな。
「あら、せっかく格納庫も無理やり解放させたのに手詰まりかしら?」
装甲車を使用するにしても、外に出てから乗り込むなんて悠長な隙を見逃してもらえるほどヤツらと仲良くしてないからな。
どう考えたって、できる準備をして、格納庫の出入り口からヒィヤッハー! と飛び出すのが望ましい。
よって格納庫への入室もメロンにお願いしたわけだ。
併せて、修理準備のため工作室も解放してもらった。
「とりあえず、銃座に、レーザー銃とミサイルを固定して、焼夷手榴弾をばら撒いて、船の前に火の壁を作るかな……」
「火を恐れてくれるといいけど」
「重機でもあれば船の周りに塹壕でも掘れるのに」
エイジスにスコップを持たせたらどうだろう。
「キリが無いわね。掘るそばから人海戦術で掘を埋められると思うわよ」
僕の提案は瞬殺だ。
まあエイジスは使わせてもらえないからな。
「オークたち、何体いるのかね……あいつらってポイントいくつくらいだろう?」
「リストを確認したけど500だって」
アリオの疑問に先日確認しておいた情報を披露する。
「俺が今40000ポイントで、エイジスまで残り50000だから、つまり……100体倒せばいいんだな!」
「レベルが上がるごとに獲得ポイント半分でしょ? 最初のレベルアップまでは20体でいいけど、レベル10までだと620体よ」
「そう聞くと、いくらでも湧いて来いよって気持ちになるから不思議だな」
ニヤリと笑うアリオ。
今のところ一体倒すのにも苦労してるんだが?
「取らぬ狸のなんとやら、ね。モチベーションを上げるのはいいけど、無茶な行動はくれぐれも控えてね。誰ひとり失うわけにはいかないんだから」
エフテは苦笑で釘を刺す。
「分かってる。俺だけならともかく、プロフを危険に晒すわけにはいかないからな」
アリオの目には今のところ理性が宿っている。
戦い始めたらどうなるか分からんが。
結局、使えそうな武器を後部座席に満載し、アリオの指摘通り、銃座にはレーザー銃とミサイルランチャーを二基取り付けた。
固定作業はサブリが手早くやってくれた。
「手際がいいな」
「ふふん、もっと褒めてもいいのよ!」
工作室の加工機器を操作し、武器の固定マウントなども手づくりし、装甲車の上面は武器商人の出店みたいな異様な威容となった。
プロフも装甲車の運転席で操作方法の確認に余念がない。
「ほら、ぼーっとしてないで残りの装備を確認しましょ」
僕とエフテは武装以外の装備品を確認していた。
とは言え、防御スーツの類は、オークの攻撃に耐久性は確保できなさそうで、動きを優先させるため採用は見送る。
バイクやバギーも今回の作戦では必要ない。水上バイクも論外。
ショックアブソーブシールドは、一対一でじっくり戦う分には効果的だけど、攻撃を受けるって発想がそもそもアウトである。
高機動シューズは、高圧エアによってホバークラフトみたいに滑るような起動を得られるが、結局は二次元移動になってしまう。
鈍重な相手ならともかく、オークには使えない。
で、最後に残ったのがこいつらだ。
・Dドローン(直上待機、自動防御)
・Aドローン(直上待機、自動攻撃)
「あーメロン、DとAのドローンを出してくれ」
デバイスでメロンに話しかけると、並んでいるガレージの一つから、台座に乗ったドローンが二つ現れる。
上部のメインユニットは他のドローンと共通だが、下部はコンテナに似てる。
直径80センチ、1メートルほどの円筒で、それぞれ青と赤に塗られている。
『Dが青、Aが赤です』
「それぞれ能力が知りたいな」
ディフェンスとアタックなんだろうけど、僕らのチームに入るには厳しい審査が必要なんだぜ!
『ではDから』
遠隔指示で起動した青いドローンがスイっと浮かび、前方の空きスペースへ移動する。
二メートルほど上昇すると円筒部が、下部を支点に四方向に開く。
四本の腕が伸び、先端のプレートがパラボラアンテナみたいに、円周上に展開。
それぞれの腕が、直径30センチほどの円盤を持っている。
「なるほど。これで飛んできた攻撃を防ぐのか」
なんか、地味だし、展開した円盤はペラッペラだぞ?
『続いてAを展開します』
Dの横に赤いドローンが浮き上がり、同じくボディを展開する。
こちらはシールドじゃなく、刃物が円筒の最下部、円周上の四方に伸びる。
刃先の先端直径としては3メートルほどになるか。
「まさかの物理攻撃……これでチクチク攻撃するのか?」
「レーザーとかじゃないのね」エフテも苦笑い。
『……では、起動します』
何を?
と聞く前にAドローンの下部が回転する。
それは巨大な草刈り機。
いや、命を狩り取る悪魔の円盤だった。
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