第19話 アリオと共闘3
衝撃の事実!
ってほどでもないのか。
それだけ僕が不甲斐なく弱弱しく思えるんだろう。
「でもバレたんならコンテナ出さなくても、いや便利そうだからありがたいんだけどさ」
合計三台出てるんなら、一つを荷物運びに使っても問題はないだろうに。
「そこは気が動転したんじゃないか? 俺だって、実は監視用のもう一台があるのでそれを活用しましょう、くらいの切り返しをすると思った」
「そこんとこどうなのメロン?」一応マイクのスイッチを入れて聞くけど、おそらくスイッチなんか関係なく僕らの会話はダダ漏れだろうなと思う。
『……LV2ボーナスでコンテナドローンが解放されただけです』
「だってさ。俺らにそれをどうこう言える根拠はないからな。時間ももったいないし、始めようぜ」
ま、アリオがいいんならいいけどさ。
僕だけ特別扱いされて、気を悪くする権利はアリオにあるはずなんだから。
「なんか、ごめん」
「ん? 大丈夫。キョウは俺が守るよ。もちろん、メロンと二人で一緒にな」
惚れてしまいそうな男気だな。
それはともかく、みんなに心配されないように、僕がもっと強くなればいいんだろ? いいぜ、やってやるよ!
索敵情報に警告音。
30°方向にE―005の文字。
「兄貴! お願いします!」
「いや、いま思いっきり、やってやるよ! って顔してなかったか」
それは敵次第です。
あれはまだ怖いんです。
「鳥形の高速タイプ。突っ込んでくるし電磁砲も避ける」
「じゃあ早速こいつの出番だな」
アリオは肩からライフルを降ろす。
「サコーのTRG42って言う軽量ライフルなんだけど、個人的にはもっとヘビーなヤツがあれば良かった」
「これで軽量?」
僕なら持っているだけで体力を消費し続ける呪いの武器だろうさ。
「ボルトアクション、装弾数6、射程1500メートル」
アリオは言いながら虚空に構え、スコープを覗き込む。
ゴーグルの情報は相対距離2000メートルを切った。
「距離2000」
知っているだろうけど、一応声をかける。
バン! シャコッ バン!
撃ってボルトを引いて撃つ。
一瞬でその三つのアクションを行ったかと思ったら、E―005の反応は消えていた。
立射であいつをこの距離で二発?
なんだこいつ。
「やっぱ弾丸の個体差はどうしょうもないか。それでも一発で仕留めなくちゃいかんな」
ボルトを引いて空薬莢を排出しそんなことを言う。
言ってみたいセリフだよまったく。
「アリオってさ、何者なの? ホントに記憶が無いの?」
「記憶は無いけど、今のところ手に持った武器の使い方や特性は理解できてるな。どう使えばいいか、どの敵にはどれを使うのが適切か」
アリオは地平線とほぼ平行に構え、引き金を引く。
「E―002(アイアンモール)、この距離だと150ポイントか」
その立ち姿は、軍人というよりは、職人って言葉が似合うと思った。
討伐職人は順調にキルスコアを積み重ね、300ポイントもあるE―005の群れなどに遭遇した事もあり、最終的に以下の様になった。
キョウ―LV2:6950P→10050P
アリオ―LV2:5230P→25530P
「これでエフテが10000P獲得すれば、俺はLV3になれるんだよな」
全裸洗浄が終わり、乾いた熱い乾燥風が髪や肌を撫でて行く。
『……はい』メロンがふて腐れている。
「で、僕とアリオは娯楽室に入れるんだよね?」
『……娯楽室? あ、ああはいはい』
ちょっと待て、なんだ今の間は!
外と居間と自室しか知らない僕がずいぶんと楽しみにしてた施設なんだぞ!
「なんならこれからすぐに行こうと思ってるんだけど」
『片付けますので、少々お時間を。用意ができたらお呼びします』
「まあ慌てずに、先に昼メシにしようぜ」アリオが苦笑する。
仕方ない、楽しみはとっておこう。
それにしても、どんな設備があるのかな。ディスコかな、クラブハウスかな、綺麗なおねーちゃんが並んでいるのかな。
そんな僕の妄想顔を見たアリオは侮蔑の眼差しだ。
読むな心を。
「お帰りなさい」
居間ではエフテが出迎えてくれる。
良くできた妹みたいだな。
身体年齢は僕よりお姉ちゃんらしいけどさ。
エフテは淡水魚の塩焼きフルコース。
アリオは天丼と鰻丼。
相変わらず偏ってるなぁ。
僕はきつねうどんにしよう。
「なあキョウ、その麺の上に載ってるのなんだ?」
「きつねうどんなんだから狐肉に決まってるだろ?」
何言ってんだこいつ。
「狐の好物も元々は肉の油揚げだったみたいだけどね……」エフテまで変な顔しやがって。
楽しい食事をしながら、先ほどの戦闘結果を報告する。
併せて、戦闘中、アリオに聞けなかったいろいろを確認しておく。
情報のすり合わせは大事。
知ってると思った的な「常識」ってやつは人によって解釈が違うことが多々ある。
できるだけ客観的な事実と数値で明確にする必要がある。
「二人とも1万ポイントを越えたから、わたしが追い付かないと先に行けないのね」
「そういえばさ、このままポイント加算した場合どうなるんだ?」
アリオはすでにレベル3の条件ポイントを満たしている。
「貯まるだけだと思うよ。それにレベルが上がらなければ、獲得ポイントも減らないからお得でしょ?」
「どういうことだ?」
「001(ホーンラビット)と002(アイアンモール)はレベル1で倒すと100ポイント。レベル2になっていると倒しても50に下がるんだ。で、レベル3になるとさ、獲得ポイントが25に下がるんだよ」
「到達レベルが上がると、獲得ポイントが半分になるわけね」
「そ。だからさそれを逆手にとって、今の内にポイントを稼ぐわけ」
レベル制限ってやつは、稼働隊員全員が足並みを揃えるための措置なんだろうけど、経験値っていうポイントの積み増しだけは別だもんな。やればやっただけ貯まるのは当然だ。
「でも効率は悪いんだけどな。俺としてはもっと割のいい狩場で高得点を狙いたい」
アリオにしてみれば100P程度の敵は作業だろうけどさ。
「リスク管理は大事だよ」
正直な話、エフテがまともに戦えるのか疑問なんだ。
ここはじっくりゆっくり、ポイントと言う経験値を稼ぐべきと思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます