第18話 アリオの新兵器2
「で、どうする? さっそく外に出る?」
朝食後、僕はエフテに声をかける。
「今日は遠慮しとく。まだ少し情報を整理したいし」
「あ! そうか、どうすっかな」
エフテの答えと別にアリオがいきなり声を上げる。
「どうしたの?」
「いや、ほら稼働隊員のレベルが揃わなきゃ次のレベルに行けないって言ってたよな。今日はさ、キョウのレベルを2から3まで一気に上げようと思ってたんだよな」
いや、2万ポイントも溜まんないってば。修羅の道だから、それ。
「どういうこと?」エフテが目を細めて聞いてくるので、レベルアップシステム? についてあらためて説明をしておく。
「わたしがレベルを上げないと、アリオが2万ポイント獲得してもレベル3には成れないってことね。ごめんね悪いタイミングで目覚めちゃって」
「いやいやいや、謝るなよ。二人でガンガン上げようって言ってただけで、仲間が増えれば戦闘の幅も広がるんだからさ、気にスンナ」
アリオはニカっと笑いながらエフテの肩を叩く。
「なんとか今日中に心の準備をして、明日は一緒に行けるようにするわ」
エフテは不安そうな顔を隠さず、薄く笑う。
―――――
朝食後、トイレなど済ませ、居間で排泄制御のサプリなどを摂取し、エフテに見送られ出撃通路へ。
「それで、ポイントは使ったの?」
「もちろん! とりあえずレベル2用の装備を選んだらレベル1に戻っちゃったからさ、レベル1の装備も選んでみた」
レベル2までのリストは昨日のうちにアリオから送ってもらっていた。
左手首のデバイスにリストを表示させる。
・100:焼夷手榴弾(単個)良く燃える
・200:L2サーモバリックグレネード(単個)燃料気化爆弾もっと良く燃える
・500:ブーメラン
・500:回転式拳銃(ブラックホーク)弾丸はサービス
・600:チェーンソー(充電式)
・800:三節棍
・1000:小刀(鞘付)
・1000:防刃スーツ(他のスーツと併用可能)
・2000:機械アシストスーツ(充電式)
・2000:L2大刀(鞘付)
・2000:L2小型ミサイルランチャー:10連装
・2000:L2電気グローブ:左右のグローブで挟み通電
・3000:L2炸薬式パイル(パイルバンカー):30ミリのパイルを炸薬力でストローク
・4000:L2狙撃ライフル(サコーTRG42)
L2と表記があるものがレベル2専用装備だ。
相変わらずネタかロマンか分からんラインナップだな。
「ライフル選んだらレベル1になっちゃったからさ、手榴弾10個と小刀を選んだ」
アリオが合計6000ポイント消費して僕らの現状はこれ。
キョウ―LV1:6950P
アリオ―LV1:11230P→5230P
「それにしても、また古典的な装備だね」
とことん電子アシストを使わない方針なのだろうか。
「起きたばっかりだし、体の練度を高めたいってのもある。まあ本音はさ、視線トリガーに慣れないだけなんだ」
アリオは偉そうな物言いの後、頭をかきながら恥ずかしそうに笑う。
「でも、体の動きを洗練させるってのは分かるよ。僕も実際、動きが良くなっている気がするからね」
お互い、得手不得手がある。
気を遣う言葉を掛け合いながら出撃準備を済ます。
「で、そんな格好で行くわけ?」
アリオはライフルと電磁砲をスリングベルトで両肩に吊るし、手榴弾の入ったバッグと、銃弾の入ったバッグを持ち、右腰に拳銃、左腰に小刀(鍔付の鞘に入った湾曲した刀)を下げていた。
「可笑しいか?」
「可笑しいとかどうとかじゃなく、なんだっけ、ムサシボウベンケイ? フルアーマー? そんな姿を記録で見たことある。そもそもまともに戦えるの?」
「出撃時も装備を厳選する必要があるってことか」
『船外に出たら、索敵ドローンの下部フックに吊るせますよ』
こっそり覗いていたのだろうか、メロンの声が聞こえる。
「おお、そんな用途にも使えるのか」
『任意位置で待機させられますが、当然、索敵や各種情報収集には使えなくなります』
「
『……特別にコンテナドローンを解放します。出撃、どうぞ』
船外ゲートが開く。
「なんだよ、追い出さなくてもいいだろうに」
アリオは苦笑しながらガチャガチャと音を鳴らし歩いて行く。
というか、二人のやりとりがよくわからない。
外に出るといつものようにゲートが閉まる。
すると船の後方辺りからピョコンと細長い棒のような物体が飛んでくるが、あれがコンテナドローンとやらだろう。
上部の丸い天板はソーラーパネルか。その下に小さな丸いファンが円周上にずらっと並ぶ。
全体形状は、釘を大きくした様な形。
直径800ミリ、全長1000ミリほどのボディがガパッと開き、アリオはその中にバッグを二つと電磁砲を収める。
「俺の直上10メートル付近で待機。呼んだら来てくれ。射線に入るな。自動防御は?」
『回避のみです』メロンが答える。
「おっけ、自律判断で上空へ退避してくれ」
コンテナドローンとやらは上空にスイッと上がって行った。
「あのさ、メロンはなんでコンテナを出してくれたの?」
僕はマイクのスイッチを切ってアリオに聞く。
「キョウのドローンを索敵に使っちゃうと、キョウのモニターができなくなるだろ?」
「? 今までだって一人の時はそうやってきたと思うんだけど」
「だから、その時から二台出てたんだよ」
「なんで?」
「それはメロンに聞いてくれ。で、一人一機ってわけだから、俺のをコンテナ代わりに使うと、キョウのドローンを索敵に使うってなっちゃうだろ? もしキョウに危険が迫ったとしてもそれを知る方法はないはずだよな。それでもいいの? って鎌をかけた」
僕の索敵ドローンはメロンに管理してもらってた。
索敵だけだと思ってた。
知らないところで保護者がついていたってことか。
嬉しいやら、恥ずかしいやら。
「アリオって頭がいいんだな」
その洞察力に舌を巻く。
「いや、頭じゃなくて目がいいだけ。だってキョウの直上、高高度にずっとドローンがいるんだもんさ、そりゃ気付くよ」
アリオは似合わないウィンクをして笑う。
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