第15話 三人目の隊員
4時間、休憩も取らずに戦いに明け暮れた。
E―001から004まで、合計で何体倒したのだろうか。
この辺りって、脅威度が少ないって言ってなかったっけ?
倒しても倒しても、つーか倒せば倒すほど新たな敵が襲い掛かってきた気がするんだけどな。
そんな中で驚くのが、アリオの倒し方。
電磁砲以外、例のブラックホークで30体、肉弾戦で10体は倒しやがった。
ピンクボムもブラックホークの特殊弾で直接破裂させた。
モンロー効果を使ったHEAT弾だとか言われたけど、よく分からなかった。
僕なんか、おこぼれを遠距離からちくちくと、数体程度。
それでも共闘の恩恵で獲得ポイントはすごいことになった。
キョウ―LV1:3330P→6950P
アリオ―LV2:980P→11230P
「なあメロン、これ全部ポイントとして使うとレベルってどうなるんだ?」
『10000を下回るとレベル1に戻ります。その時点で交換可能品もレベル1のものになりますね』
アリオとメロンの通信内容は僕も共有している。
いくら僕の方が早起きだとしても、知る内容は初めてのものばかりだ。
なんとなくこの一か月、何をしていたんだろうな? とさすがに罪悪感というか焦燥感が湧き上がる。
「ふーん、レベル2のリストにも面白いのがあるんだけど、どうすっかな」
アリオは不敵な笑みを浮かべながら嬉しい悩みに困っているらしい。
それにしても、たった一日でレベルアップか。なんだこいつ。
「とりあえず帰ろうよ、さすがに疲れた」
船外活動が4時間を超え「船外活動超過」と表示される警告を見たのも初めての体験だ。
上機嫌なアリオと二人、船に帰還する。
室内着に着替え、居間に戻る。
「お帰りなさい」
そこにいたのはメロンじゃなかった。
僕らと同じ室内着を着た、黒髪のショートボブ。
目立った外見的印象は、大きな丸いメガネ。
メガネ?
ゴーグルじゃなくて?
ソファから降り立ったことで、全体のシルエットが明確になる。
ちっさ!
「いま、小さいって思ったでしょ?」
メガネの奥、丸い大きな瞳がスッと細くなる。
「いや、滅相もない」
僕の隣でアリオがあたふたしている。
なるほど、お前も僕と同じ印象を抱いたってことか。
つーか誰だって、ちびっこつるぺたメガネって思うよなそりゃ。
「……なんで聞かないの? 性別とか」
聞けないんだよ、察しろよ!
メロンは三人目の性別を明確にしてなかったけどさ、そっち側の居住区を準備してたんだから、そりゃ女の子だろうと思ってたけどさ、身長が140センチくらいで凹凸も無いボディなら、性別質問は地雷って相場が決まってる。
ちなみにメロンが155、僕が165、アリオが175くらいの身長だ。
「ふっ、目的遂行のために共闘する仲間だ、性別も身長も関係ないだろ?」
僕の軽口は火に油を注ぐ懸念もあったが、彼女(いいんだよね?)は少しだけ柔らかい表情に変化する。
「まあ、そりゃそうなんだけどね。メロンから簡単に説明を聞いたとはいえ、稼働中の隊員二人が屈強な男って聞いて普通でいられると思う?」
「俺は紳士なんだが……」
俺はって言うなよ。俺らって言えよ。
「いきなり襲い掛かってくるケダモノじゃなくて安心したわ。わたしはエフテ、16歳くらいで、もちろん女の子。ま、性別以外は聞いた情報なんだけどね」
「きみもか……」
僕とアリオは視線を絡ませる。
「きみもって何? それになに、二人はデキてるの?」
「デキてないし。いや僕らもきみと同じで記憶が無いんだよね」
「ふうん、そう聞いたところで、わたしも判断する情報が無いから、あ、そうなんだくらいしか感想は無いけどね。メロンは忙しそうにどっか行っちゃうし、二人が戻って来るからいろいろ聞いてって言われたから緊張して待ってたのよ。で、名前、教えて」
「ああゴメンね。僕はキョウ、15歳くらい。人畜無害の少年です」
どうしようか迷ったけど、一応右手を差し出す。
エフテは一瞬躊躇した後、握り返してくれた。
小さく、冷たい手だった。
「俺はアリオ、17歳らしい、紳士な好青年です」
アリオも僕の真似をしてエフテと握手をする。
「二人の自称が胡散臭いけど、悪い人じゃないのは分かったわ。もっとも悪い人だった場合、わたし的にはどうしょうもないから、性奴隷に堕ちるくらいの覚悟はしてたけど」
「「しませんから」」
きみは自意識が過剰だぞ? 出るところを出したらもう一度覚悟するがいいさ。
しないけどさ、仲間なんだから。
「で、早速で悪いんだけど、いろいろ教えてほしいのよ。知らないってすごく心細くてね」
エフテはそう言って不安そうに笑った。
で、説明を始める前、喉を潤そうと各自が用意した飲料、ホットコーラ、蜂蜜入りコーヒー、鰹のだし汁がテーブルに並ぶ。
「……なに、記憶だけじゃなく、味覚にも障害が出てるわけ?」エフテのジト目が僕らの飲み物に注がれる。
時間的にはお昼なんだけど、エフテはまだ食事は遠慮したいとのことで、僕らも付き合って飲み物だけにしてるのに、まさかこんなモノを飲むヤツに文句を言われるとはな。
「だし汁ってなんだよ」
対面に座ったエフテは悪びれもせず美味そうに湯呑を啜る。
僕の隣のアリオは美味そうに蜂蜜コーヒーを飲む。
「いや、あなたたちがいいなら嗜好は尊重するけど」
「認識が共用できない趣味嗜好の議論は不毛なんで、話を進めていい?」
「お願いします」
エフテは両足の膝に両手をちょこんと載せて、ちいさくお辞儀をする。
「つーかアリオ、説明も経験値になるらしいけどどうする?」
「効率が悪すぎるからパス。それに情報ソースは一定の方がいい。わざわざ俺の
涼しい顔でもっともらしいことを言うが、こいつ絶対めんどくさいか、僕がした説明を忘れてるだけだろ?
「じゃあ、僕の説明を聞いて、補足があったらよろしく頼む」
そして、また長い説明をする羽目になった。
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