Tale21:やめておきなさい、そこに挟まると死にますよ
相互ブックマークの欄からアキラちゃんを探して、転移許可のメッセージを送る。
何事もなく送ることができたので、ちょうど『テイルズ』の世界に入ってきているようだ。
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【名前】アキラ
【レベル】27
【ジョブ】ナイト
【使用武器】ハイミスリル・ソード:習熟度7
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しばらくして転移が許可されて、私の視界はふわっと切り替わった。
がやがやと人混みの音がする。
周囲を確認すると、いつものカラフルな煉瓦造りの街並みが確認できた。
アキラちゃんとキャロちゃんは私と同じ街を拠点にしているから、おそらく冒険の準備かなにかをしているところだったのかな?
「こんにちは、リリア様」
「こんにちは」
私が転移してくるからだろう、道の端に寄ってくれていた二人がそれぞれぺこりとしてきた。
背が高めで凜々しい顔つきのアキラちゃんと、おかっぱ頭で可愛らしいキャロちゃんの組み合わせはなんだかすごく収まりがいい。
「こんにちは、デート中にごめんね? 私たちに気を遣わないで、手を繋いだままでよかったのに」
「えっ、み、見ていたんですか?」
びっくりした様子で目を丸くするアキラちゃん。
その横から、察しがいいキャロちゃんが発言を遮ろうとしたが、間に合わなかったようだ。
「いや、冗談のつもりだったんだけど」
まさか、本当に手繋ぎデートの真っ最中だったとは思わなんだ。
ようやく自分が墓穴を掘ったことに気づいたアキラちゃん。
一気に耳まで赤くなる反応が初々しく、ボーイッシュな見た目とのギャップがなんともたまらない。
そして、キャロちゃんは「もう、ばか……」とつぶやいたきり、口をとがらせてそっぽを向いてしまった。
もしかしたら、意外とキャロちゃんの方が尻に敷くタイプなのだろうか。
うん、それはそれでアリだと思う。
「お盛んってことですか?」
わかっているのかいないのか、きょとんとした顔で問いかけるスラリア。
真意の読めないその問いかけに、アキラちゃんもキャロちゃんもさらに押し黙ってしまう。
パートナーとして、ちゃんとスラリアを注意しなければ。
「スラリアっ、そっとしておかないとダメ、馬に蹴られちゃうんだから」
「えっ、お馬さんいませんよ?」
スラリアの頭をぺしっとたたき、私は顔を寄せつつ言う。
すると、きょろきょろと辺りを見回しながら、スラリアはすっとんきょうなことを返してきた。
たまに有名な慣用句でも伝わらないことがあるのよね、まあ可愛いからいいんだけど。
「そういう例えなの、
まったく、外野からからかわれることが、どれだけ好き合う二人の障害になると思っているのか。
ほんと、反省した方がいい。
「ほえー、そんな意味があるのですか……好きな人同士のアキラとキャロ、ごめんね?」
「この子スライムだから、ちょっと空気が読めないの。許してあげてね?」
私とスラリアが謝っても、アキラちゃんとキャロちゃんの二人は、そわそわもじもじして俯いたままだ。
よく見るとキャロちゃんの耳も真っ赤になっている。
うーむ、これだけ恥ずかしがらせてしまった後で申し訳ないのだが、今回は装備作成のお願いのために来たのだ。
もし断られてしまったら、早く他の手段を考えなければいけないし。
切り出しづらいと思いながらも、私は口を開く。
「それで、キャロちゃんにお願いがあるの」
「えっ、私、ですか……?」
意外な申し出だったのか、キャロちゃんは顔が赤くなっているのも気にせず前を向いた。
おそらく、転移してきたときにアキラちゃんにメッセージを送ったからだろう。
キャロちゃんとも相互ブックマークであるのに、ということだ。
「うん、どうせアキラちゃんといっしょにいるだろうと思ったから」
時間短縮、ブクマの欄はアキラちゃんの方が先に出てくるからね。
キャロちゃんは口をぱくぱくさせるだけで、私が言ったことに反論してこないし。
常にいっしょにいるのは事実なのだろう。
「あぅ……あの、お願いってなんですか?」
やがて、さっさと話を始めるのが最善だと気づいたキャロちゃん。
頬を赤らめた状態で、おずおずと聞いてくる。
「えっと、かくかくしかじかで、攻撃に特化した装備を作ってほしいの」
「かくかくしかじか……?」
ここも時間短縮しようとしたのだが、キャロちゃんの頭上には疑問がいっぱい浮かんでいた。
どうやら、いくらゲームの世界とはいえ小説とか漫画みたいに都合良くはいかないようだ。
このあと私は、狼ちゃんの故郷の話からホワイトドラゴンへのリベンジの話までをかいつまんで説明するのだった。
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