第14話 たこ焼きを焼くもの

隼人は、大輔の方を見る。


「ん?どうしたのかな?」


「このたこ焼きってお兄さんが作ったの?」


隼人がそう尋ねると大輔が答える。


「うん。

 師匠と一緒に作ったんだ」


「師匠?

 お兄さんは、たこ焼き屋さんなの?」


「そうじゃないけど。

 なんて説明すればいいか……」


「ふーん。

 まぁ、どうでもいいや」


隼人は、そう言ってたこ焼きを頬張る。


「どうかな?」


「美味しいよ。

 妹にも食べさせてあげたいな」


隼人が、そう言うと大輔が答える。


「だったら、今度熱々のたこ焼きを作ろうか?」


大輔が、そう言うと銘と千春の顔が青くなる。


「うん。

 できるだけ早めに作りに来て欲しいな」


隼人がそう答えると大輔は、うなずく。


「うん!

 任せて!」


すると慌てて千春が大輔に耳打ちする。


「隼人くんの妹さん亡くなってるのですよ……」


そして、隼人が言った。


「マコに会いたいな……」


「それは……」


銘が困る。


「マコ、黒焦げになったんだよね?」


「え?どうしてそれを……?」


銘が尋ねる。


「親戚のおばさんたちが話しているのが聞こえたんだ……」


「今は会わないほうがいい」


銘がそう言うと隼人は、うつむく。


「えっと葬儀とかはしないの?」


大輔が、そう言うと銘がうなずく。


「お通夜は、明日かな……」


「じゃ、そこに行きたい」


「それは、いいと思うけど。

 隼人くんひとりで大丈夫?」


「え?ひとりで行くの?」


大輔が、そう言うと銘が困った表情で答える。


「私も千春も仕事が忙しくて抜け出せそうにないのよ……」


そう言って大輔の方を見る。

大輔は迷った。

でも、迷っても答えは同じ。


「んー。

 じゃ、僕が付き添おうか?」


「いいんですか?」


千春が、そう言うと大輔がうなずく。


「うん。

 まぁ、お仕事がお休みだから付き合えるよ。

 熱々とは言えないけどたこ焼きも持って行くよ」


「ありがとう」


銘が、そう言うと大輔は照れ笑う。


「暇なのだけが取り柄だから……」


「あの。

 お願いします」


隼人は軽くお辞儀をした。

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