第1話 私はマルゼラ
おぎゃー
おぎゃー
おぎゃー
「奥様良く頑張りました。生まれましたよ!元気な女の子です!」
私はお父様に連れられて、お母様の元へ向かう。そこで初めて妹のリリアと対面することになった。未だ3歳だった私は、初めて見る赤ん坊の姿と大きな声で泣いている姿にびっくりして、お父様の手をギュッと握りしめると、お父様もにっこりと笑って握り返してくれた。
「マルゼラ、お前に可愛い妹が出来たよ。名前はリリアだ。仲良くするんだよ」
「・・・うん」
私は妹が出来て喜んだって言いたいけど、正直嬉しくなかった。だって、独り占めにしていたお父様とお母様を妹に奪われるなんて絶対に嫌!
お父様とお母様がとても嬉しそうにしている顔を見て、嬉しいどころか嫌な気持ちにしかなれなかった。
これから家族4人、私の幸せな生活が今日で終わる... 妹なんか死んでしまえば良いのに・・・
妹が生まれた同日、私を担当している侍女の1人が不慮の事故で亡くなったと聞いた。これで二人目。
◆◆◆
妹のリリアが成長していくにつれ、私に対するお母様の態度がどんどん素っ気なくなった様に感じた。
最初は只の勘違いだろうと気にしないようにしていたんだけど・・・
私が10歳の時、お父様の提案で、画家を呼んで家族4人の肖像画を描いて貰うことにした。
お父様はヤジュマ帝国貴族の伯爵だった為、肖像画一枚を書くのに、どの一流画家にするか、日取りを
~数日後~
「マルゼラ、リリア、今日は待ちに待った肖像画を描いて貰う日だ。化粧室へ行って目一杯お
お父様から言われると教育係のユーカが来て、はしゃいでた私達を化粧室へ案内してくれた。化粧室ではお母様が侍女と一緒に待機しているのが見えた。
侍女に案内されるまま、私とリリアはお互いに背を向け、それぞれ全身が映る鏡の前に立った。
私はチラッと、鏡越しにリリアを見た。
リリアは私と3歳差なのに身長は少ししか変わらない。きっとお父様に似たのだと思う。また、お母様に似て肌が白く、艶のある綺麗な黒髪と透き通った黒い瞳、そして小顔で足が長かった。
その事を、化粧を施している侍女達に誉められていた。
それに比べて、私の容姿は...
お父様にもお母様にも似ている所が見当たらない。
ブラシをかけてもかけてもボサボサのくすんで白髪に近い髪の色と赤茶けた肌の色、それに付け加えて濁った瞳で、お世辞にも容姿で誉められる部分は無い。
お母様はリリアに付きっきりで化粧、ドレスにあれこれ口を出し、侍女逹に何度も修正させていた。
「お母様、どうですか?」
私は、準備が整ったのでお母様の意見を聞いてみた。勿論、何か助言をくれる事を期待して。
「良いんじゃない? 準備が出来たならお父様の所へ先に行ってなさい」
お母様は私に興味が無いのか、直ぐにリリアの方へ向き直した。
「はい... お母様」
お父様の元へ戻った私の姿を見てとても誉めてくれ、唯一気持ちが救われた瞬間だった。
「お父様! お姉様! 見て見てー!」
無邪気に駆け寄るリリアの姿を見て唖然としてしまった。私が着ている地味なドレスとは正反対のとても華やかなで、装飾が施されたドレスだった。
リリアを見てショックな事があった。首に掛けられたネックレス...あれは、お母様が大事にしていたネックレスで、私が大きくなった時に譲ってくれると約束してくれた装飾品だった。
私との約束...お母様は忘れてしまったの?
きっとリリアが我儘を言って無理やり付けさせて貰ったのだと、あまり考えない様にしていた。
でもそれだけでは終わらなかった。同じ様な場面が何度もあり私の疑念は確信に変わった。
お母様は私の事が嫌いなんだ
それからと言うもの、私はお母様に対して心を閉ざしてしまった。
それだけじゃない。妹のリリアは成長するに連れて、姉の私より自分の方がお母様に溺愛されているという自覚が芽生え、何かと私を見下してくるようになった。
でも、お父様だけは変わらずに私の事を大事にしてくれる。でも仕事が凄く忙しそうで中々会えないけど、唯一の心の
◆◆◆
気づいたら20歳になっていた。
周りの同じ年頃の女性逹は次々と貴族の方達と婚約をして家庭を築き始めている。
お父様から何人かの素敵な殿方を紹介されたけど、結婚に全然興味が無いし、何よりも私の容姿を見て皆さん及び腰になってしまう。
私は、生まれつき肌が弱く、小さい頃から日の光に当たると軽い火傷になってしまい、極力外出時には肌の露出を避けるようにとお父様に口酸っぱく言われていた為、ベールを身に付けるようにしていた。私の肌は凄く繊細みたい。
一度、言いつけを守らず、軽装で家の外を出た時は、肌が火傷をして炎症を起こし、治療するのに時間がかかった事があった。
「どうしてマルゼラをほったらかしにしたんだ!」
その時に記憶に残っているのが、お父様がお母様を激しく叱っていた事。
後にも先にもお父様が怒っている所を見たのはこれが最後だった。
お父様に言い付けられたのか教育係のユーカは、私が外出する時はベールを必ず身に付けているか確認をとるようになった。そのせいで、同年代の子供達に奇妙な目で見られるようになり、次第に外出するのを避けるようになった。
だから、小さい時に外で思いっきり遊んだ記憶が無く、部屋の窓からお母様と妹のリリアが軽装で楽しそうに外で遊んでいたのを羨ましく思っていた。
何で、私だけこんなに思いをしなければならないのか?ってずっと思って生きてきた。
でも、お父様が私の為に室内でもおもいっきり遊べるように、と色々と配慮してくれた事で私は卑屈にならずに済んだかもしれない。
そんなある日、
「マルゼラ、明後日に フェレス公爵家の社交界があるんだ。ファウスト家として招待されているから、準備しておくように」
「はい お父様」
正直気乗りしないけど、お父様に迷惑をかけまいと二つ返事で答えた。
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