嫁くんと旦那ちゃん②
しばらくの間、洗濯機を回したりリビングの掃除をし、一通りの家事が終わったのでソファに座り、スマホに入ってるゲームアプリを起動し休憩を取る。
初夏、遠くでセミの声も聞こえるじんわりと熱い夏らしい気候だ。
「あ、このゲーム13時からメンテだ。そう言えば今日はイベントの更新日だったっけ? スタミナ消費しとこ」
現在時刻は11時40分。もうすぐ正午の時間帯。アプリを遊んでいると、階段を降りてくる足音が聞こえた。海美が起きて来た。予想より2~3時間早い。
ガチャっとリビングの扉が開く。海美が立っていた。下着姿で。
「ブフっ!?」
「お、氷魔法」
「ナンデ シタギ ナノ?」
「え~? いいじゃん別に~夫婦なんだし~! 気にしないし~! 夏熱いし~!」
「気にするの! うら若き乙女が、そんな姿で家を闊歩するんじゃありません!!」
「お腹空いた~~~」
「聞いてないし……。準備するから、服着てて。寝起きだけど何でも食べれる?」
「何でもは食べられないわよ。食べれるものだけ!」
「うわウザ」
「ヲタクはこういうチャンスを逃さないのだ~。てかお昼か~よく起きたな私」
「予想より2~3時間早いよ。今日何かあるの?」
「あ、そうそう! 今日はゲームアプリのイベントの更新日で、しかもマンガの新刊の発売日なんだよね~! こういう嬉しい事が重なる日をハッピーデイと呼ぶ!」
「ああ、マンガの新刊ってそれの事? 朝、小包で荷物が届いたよ」
机の上に置かれた小包。朝掃除をしてた時に受け取った荷物だ。宛名が空になっていた為、空けずに置いておいたのだ。
「うおおおお! 速ぇー! 夕方くらいになると思ってたってばよ! 感謝~! サンピース90巻!!」
「読み終わったら僕にも読ましてよ。続き気になってた」
「オッケ~」
服を着て小包を開けて、お目当てのマンガを読み始める海美。しかしお昼ごはんの準備が出来たので、後にしてもらう。
「はーい、お昼ごはんですよ~」
「おっと、じゃあ後にしよ~っと」
読みかけのマンガを閉じて、彼女もテーブルについた。今日のお昼ごはんは熱い夏にピッタリな冷麺と、副菜の塩オクラだ。
「「いただきま~す」」
手を合わせていただきます。詠唱。冷麺は日本の夏場ではポピュラーな食べ物だが、副菜として用意した塩オクラはその反応も気になって作ってみたのだ。
「オクラ? これは初めて食べる料理だ。シェフ、これはいったい?」
「うん、塩オクラ。よく塩もみしたオクラを醤油ベースの出汁に漬け込んで冷やした食べ物だよ。食べてみて、自信作」
「ほほう~ではでは、いただきます。……っ! うまっ!」
「でしょ?」
「ジュワっと出汁が溢れ出して、オクラのネバネバとよく絡んで、おいひー!」
大好評。彼女の笑顔が最高に嬉しい。
塩オクラのレシピは簡単。
①オクラをまな板の上に並べて、上から塩を振り、こする。これを板ずりという。これをすることで、オクラの表面の毛を落とす事が出来る。
②よく板ずりしたオクラのヘタの部分を包丁で切り落とす。ヘタと本体の境目くらいを切っていこう。本体寄り過ぎるとオクラの中身は空洞なのでネバネバが出過ぎちゃうよ。
③醤油をベースに酒、お酢、好みで砂糖を加えて、お酢の角が取れてお酒が飛ぶまで加熱する。
④耐熱タッパーにオクラを並べ入れて、塩昆布を振りかけ、アツアツのお出汁をかけ入れる。その後鷹の爪を1本、もしくは輪切りにしたものを適量入れてタッパーに蓋をする
⑤しばらくタッパーを密封し、お出汁の熱で火入れしていく。終わったら冷蔵庫に入れて冷やしてからいただく。
「お酢も入ってるから、夏バテにも健康面にも優秀だよ」
「オクラがこんなに旨いのはじめてだったかも。いや~美味しかった~ごちそうさまでした~!」
「好評みたいで良かった。また作るよ。あ、そうそう、今日の予定は?僕は今日はバイトも無いから1日中家にいるけど、海美は配信?」
「そうね~、これからマンガ読むでしょ? 配信はゲームアプリのメンテ開けてからやるから18時以降かな~。それまでは気になる配信のアーカイブ見て、他のゲームして~……あ~……夏休みボイスの原稿上げなきゃだ~! やんなきゃマネの益田さんに怒られる~! よし決めた! 原稿書く!」
「エラ~い! 手伝える事あったら何でも言ってね? 今日は家にいるから」
「ん、今何でもって言った? 言ったな? 言ったよね?!」
「何なにナニ?! その圧何?!」
「ふっふっふ、これから私は原稿を書きます。勿論その後はボイス収録です。夏休みボイスなので夏休みがテーマです。私が喋ります。喋るのは私だけです。会話が成立してるっぽいけど独り言です。単独のボイスなんてそんなものです。だから~」
「だから?」
「行間を読ませる為に、適切な間が欲しいので、嫁くんのセリフも書きます! ボイスを撮る時は、一緒に台本通りに会話をしてください! 嫁くんのボイスは編集で消します!」
「な、なるほど。それなら全然手伝うよ。原稿が書けたら言って」
「よぅし! やったりますかー! 私は自室に籠ります! では!」
意気揚々とリビングを出て行こうとする海美。そうだと思いつき、僕はとっさに彼女を呼び止める。
「海美!」
「ん? なに?」
「はい、カフェオレ」
そう言ってコップに注いだ冷たいカフェオレを渡す。
「サンキュー! 支援物資の投下、感謝する!!」
敬礼しながら彼女は2階の自室へと向かって行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます