少女の恋と、作家の恋文。そして少年はギターを弾く。


複雑に絡まった糸を解く方法があるなら

私は100万払ってもいいから知りたいわ。



頭がパンクしそうなの。

あなたなら…どうする?




◇◇◇


私天崎天(アマサキテン)は山の怪異ヤマノケが

正体の怪談師兼人気アイドルだ。


幼馴染の口裂け一家の兄弟とは生まれた頃からの付き合いだ、弟朔夜とは人間界での名称で説明する所の幼稚園小学校中高が同じ

私個人の話は一先ずは別の機会にでも語ろう

甘いミルクティーに大好きなアップルパイでも並べて――。






 ◇◇◇◇


その日は急な雨のせいで外での仕事がバラしになり

、以前から相談を受けていた友人に会うために

新宿へ向かった。


待ち合わせ場所の新宿ドンキ前に行くと

普段とは若干違う地雷系な服を着た友人が立っていた


「てんちゃーん!」


「バカ!外では山ちゃんでいいのよ!」

私は外で私の名前を叫ぶバカな友人の頭を叩いた。

叩かれた少女町子はへへっと笑った

場所柄目立つからパセラに部屋を取った。


「今日服なんか違くない??可愛いけど。

いつもそのくらい可愛かったらいいのに」


いつもは私があげた

アンクルージュの黒のパーカーワンピース

か朔とお揃いのCIVARIZEのパーカーをワンピースとして着ているのに今日は

胸元に大きなリボンがついた多分アンクルージュのシャツワンピースだ。

なんだ、可愛い服もってんじゃんと思いながら

オーダーした紅茶を飲みながら町子に話しかけた。


「バイトの日とさっくんのライヴの時だけは可愛い服を…ってこの間悩んで1着買いました!天ちゃんに見せたくて着てきた!」


「は?朔のライヴ?は?」


私はききなれない言葉を聞き思わず聞き返した

町子はやばっと言いそうな顔をして黙った。


「ちょっと、何その話」

「いや、だって誰にも言っちゃダメって…」


やばいかなり面白いと思い町子をくすぐって吐かせた


「さっくん、最近セッションだけどたまにライヴに出てて下北と新宿で…」


「何それ…ジャンルは?」


「これ言ったら怒られちゃう!だめ!」


私の前で町子は手を×にして言えないよアピールをしてるけど大体服装の感じからバレバレだ


「どうせヴィジュアル系とかでしょ」

あの服装でバンドなら多分朔を知らない人でも

一発で言い当てる。間違いない

あの服で爽やかな青春⭐︎って感じの曲を歌い上げるわけがない


「あー!当てた!絶対にさっくんに言わないでくださいね!町子怒られちゃう」


と言いながらiPhoneを出し幼馴染のライヴ動画を見せてくれた。

まぁ、なかなかうまいんじゃない??

と感想を述べたら安心した顔を見せた


そうか、あいつにはあいつの夢があるのね。

となんか安心した。

たしかに昔から兄が置いていったギターやらCDやらをずっと触ったり聴いてたなとぼんやり思い出した。

なんだかんだあの弟は兄が大好きみたいだ。


「そういえば遠くでしか相談できない内容って何よ」


気まずそうな顔をして町子はボソボソと話し出した


「あの、えっと先日酔っ払ったシュウさんに…」

「最近シュ…お兄さんが晩酌…」

「シュウさんが…」

「あとさっくんがリビングで…その時いつもみたいに噛まないしその、舐めるというか…いつもと全く違くていつも沢山噛むのに…」


内容のほとんどは兄の話だった。

「え?シュウさんってあんたあいつの名前知ってんの?」


「え、うん。シュウって呼んでって」



それを聞いて私は頭が痛くなった。


先日私は兄さんの昔亡くなった彼女の葬儀に参列した。

町子は死んだばかりと思って物凄く泣いて居た。

私達異界の住人は昔から死体だとみんな知ってた。


10年居てくれたから休ませてやりたいと涙していたのになんだこれとムカムカした。

今度顔みたら蹴り飛ばしてやると決めた

だって男が名前で呼ばれたいって…理由は一つしかないじゃない。

ふざけている


「あと、朔が噛むって?」


「はい…最近ずっと噛む…のにこの間は痛いのは何もなくて初めてあんなこと…」


町子は顔を赤らめプルプルと震えている

何をやられたんだろう…


「なんか、あの兄弟昔からクソだと思ってたけど本当にクソだわ…」


「幼馴染の性癖の話とか、なんか思ったより楽しくはないわね…なんか…うーん…」


と私が頭を抱えると町子はすみませんすみませんと

頭を下げた


「あんたが謝んなくていいのよ、ただ噛んだり痛いことって朔のイメージには無くて」


驚いただけよと言いながら町子の手を握った。


「あんた噛まれて嫌じゃないの」


「さっくんが町子を噛みたいなら町子はいくらでも身体をあげるの役に立たないと」


目に光がなくて、なんかノイズがまじったみたいに…口元だけ笑った。

その様子に少し違和感を感じた。


けど私最近仕事しすぎだったしな…疲れてんのね。とこの時はこんな解釈だった


こうして話していると町子は本当に普通の女の子で

なんで友達がいないかとかもわからないくらいだった。変わってはいるけど


それからしばらく口裂け兄弟の

話をして過ごして夕方18時を回る前に町子は

あっ!と声を出して立ち上がった。

「あっ!天ちゃん今から本屋さんついてきてもらっても大丈夫?町子ね好きな作家さんのサイン本当たったから受け取りに行くの」


にこーっと幸せそうに笑った

「今日18時にDMが届くんだったの!当たった!やったー!」


町子はウッキウキしてはしゃいでいる


「DM?インスタとかTwitter?」


「両方あるけど今日はTwitter」


なんとなく町子はSNSやってないイメージだったから意外だった。


「ちょっと教えて?私の鍵垢でフォローするから」

「だめ!さっくん達にいそうだもん!!」

「言わないわよ、女同士の秘密よ」


それに何が悲しくて個人垢にあいつら入れなきゃならないのよと付け加えたら笑ってた。


大分渋って教えてくれた。


末期文学少女@新作楽しみ

それがインターネット上の町子の名前だった

プロフィールの言葉を見て私はさらに頭が痛くなった。


「秋月末期先生の作品を何よりも愛しています。秋月先生の異次元ch、他は恐竜が好きですよろしくお願いします」



「やったー!サイン本当たった♪」

と町子は1分前に最新ツイートをしている。


秋月末期(アキヅキマツゴ)――。

それは朔の兄シュウの仕事名だ。

どのツイートも中々にキている。愛が重い


私は兄の仕事名かどうかを知って書いているか知らないかを気になり町子に尋ねた。


「なんか見たことある名前ね…この作家どんな人だっけ?」


さて、なんて返事するのかしら。


「子供むけのお化けや怪談から幅広くホラーや事件考察とか色んな書籍や動画を作って居て…ちょっと待ってね」


町子はカバンから黒いブックカバーのついた文庫本を取り出した。ブックカバーを外すと本のそで部分を開き渡してくれた。


男性とわかる手とメガネの写真コメント。


《僕は写真が嫌いです、しかし担当さんに10冊めだからと写真を頼まれてしまい…仕方なく毎日お世話になっている眼鏡と僕の手の写真を掲載することにしました。》


秋月末期


「ん?これ…よくわかんないわね」


「秋月先生この写真と、後書きに書いてあった文章で男性とわかる以外は何も情報なくて。だからこの本が宝物なんです」


町子は頬を赤らめ文庫本を大切そうに抱きしめた。


「ふーん、じゃあよくわかんないわね…」


知らないみたい…?


「姿も年齢もわからないけど、きっと素敵な人だと

思うんです。文章も詩のような表現も児童向けの言葉選びも本当にずっとずっと好き。」


ただの文字書きよ?と意地悪を言ったら困ったみたいに笑った。


「ある意味恋に近いのかも。どんな人かはわからないけどね。さっくんとはまた違う…憧れの人みたいな…」


二人で歩きながらそんな話をして

町子は書店でサイン本を購入して

初めて見る、誰が見ても恋をするような笑顔をみせた


私はその様子をさりげなくスマホの無音カメラで撮影した。


町子は多分本当に秋月末期があいつだとはしらない。

そんな気がした


「はい!今回の短編なんだけど読みやすそうだから天ちゃんに!サイン本じゃないけど今日遊んでくれたりお話を聞いてくれたから良かったら読んでみてください」


町子は私に一冊くれてバイトへと向かった。


私は町子を見送りタクシーを拾って朔達の家へ向かった。

車内でもらった本を適当に開くとある一文が気になった


「既に屍人であり、境界を越えらない僕はただ生者の君を見守るしか出来ず」


「傷付かずただそこで幸せに笑ってほしい」


パタンとわざと音を立てて本を閉じるとスマホを取り出し

町子のアカウントをただ読み続けた。


「これ、まるで恋じゃん…」


だから朔やお兄さんに見せないでか…


でも、たまたま身近な人ばかりだから地獄のような光景に思えるだけで


アイドルやタレントが好きすぎる彼女や奥さん彼氏や旦那なんで溢れている。

町子は正体を知らないんだしまぁ…憧れみたいな。

そんな感じなんだろうなと


気持ちを整理した。


「世間狭すぎ」






◇◇◇◇

私は何度も来た家のチャイムを鳴らすと

少し疲れた顔をした兄がドアを開けてくれた。


「ああ、やまちゃんか…ごめんけど朔は町子ちゃんのストーキング。町子ちゃんはバイトなんだよね」


当たり前のように実の弟をストーカー呼ばわりするこいつはいったいなんなんだろうと思った。


「今日はあんたに話があるの」


「仕方ないな…上がって」


微妙に嫌そうな顔が腹が立つ

兄は麦茶を私の目の前に置いた


「ねぇ、町子にさ兄さんが秋月末期って話してるの?」


私はまっすぐと兄を見た。

兄は視線を泳がせた


「言ってないよ。言えない。動画ヘビロテしてるのも町子ちゃんが持ち込んだ荷物中に俺の本が揃ってたのも知ってるけど…なんか恥ずかしいし知らないふりしてる」


何故か照れている


「バレてないの?」

私は再度聞いた。


「バレてないと思うけどなんで?」

めんどくさそうな顔をされた。



「兄さんさ、なんでこの間今更…葬儀にだしたの?」


兄は困った顔をして俯いた。


「長くそばにいてくれてもう、休ませてあげなきゃなと思った。あの子は人間だったしね…人間のやり方で供養しなきゃなと高崎と話して今更気付いた」


兄がやまちゃんに何話してんだろうねと笑ったのと同時に

麦茶の氷が溶けてカランと音が鳴った


「兄さん町子を好きになったから恋人の葬儀したのかと思ったわ」


私は直球でボールを投げつけた。

兄さんは驚いた顔をして私を見つめた


「ちょっと前からなんか態度違うし、と思って」


「そんなにわかりやすい?」

兄さんは気まずそうな…困ったような顔をした。


「…好きになったから葬儀に出したは違うよ」

「あの子がとても大切なのは否定しないけど葬儀とは関係がないんだ」


私は先程撮影した写真を見せた


「めっちゃ可愛いでしょ兄さんのサイン本が嬉しくて今日はしゃいでたのよ」


「え!?」


「町子のTwitterもあんたのことばかりよ。」


私の言葉に驚いたのか兄さんは立ち上がった


「Twitter?どこ、え?町子ちゃんの?何怖い」


怖いって何よ。表情がコロコロ変わるあんたの方が今までと違って不気味で怖いわよと言おうと思ったけどやめた。



「あんたの仕事の名前をエゴサしたらすぐ出てくる」


兄さんはちょっと待っててと言い残し

仕事部屋にこもった。






◇◇◇◇◇




シュウは仕事をして居た、

新刊が発売する前後は鬼も泣き出す忙しさで

食事も疎かになるほどだ。

そんな中偉そうなヤマノケ娘がいきなりやってきた

寝たかったし

追い返したかったが仕方なく迎え入れた。


するとメンタルにダメージを負う様なことばかり質問され、地味にダメージを喰らいつつあったが

やまちゃんはとんでも無いことを口走った。



「町子のTwitterもあんたのことばかりよ」


「あんたの仕事の名前検索したら出てくる」


それを聞いた瞬間仕事部屋に向かい体が動いていた

とにかく検索しまくったらおそらく町子ちゃんのじゃ無いかと思うアカウントが目に入った。



「末期文学少女…」


ツイートの中身は恥ずかしくなるくらい

俺のことしか書いて居なかった。


《秋月先生の表現本当に好き。大好き》


《学校は嫌だけど、秋月先生の文字を読んで自分をまもる…》


《ずっと先生の手がロック画面だったけど…変えるときがきちゃった》


《世界は嫌になるけど、雪みたいに降る言葉が守ってくれる》



嬉しくて嬉しくて俺はスクリーンショットを撮りまくった。フォローしようと思ったけどいきなり作家としてのアカウントで

フォローしたら怪しいのでそれ用のアカウントを作ろう…と思った。


やまちゃんの存在を思い出し

部屋から出るとやまちゃんは笑いかけてきた


「愛重いでしょ?」


「正体…話したら?」


やまちゃんは町子に貰ったと説明しながら新刊を見せてきた。


「正体…話したら朔から取れるんじゃない?」


何を考えているかわからないヤマノケ娘はニヤリと笑った

「秋月末期として…口説いたら?好きそうなワード選んでさ!」


悪魔の囁きだった。


俺たちと知り合う前のツイートに


《どんな人なんだろう…あの手に触れられたらアイスみたいにきっと溶けちゃう。すごく好き》


そんなツイートを見つけ先日の事を思い出して赤面したのが数分前だった。


「お前さ、朔の幼馴染なのになんで朔に不利になる様なことばっか言ってんの?わかってる?」


俺は本当にヤマノケ娘のことが理解できなかった



「私は朔の幼馴染だけど町子の友達でもあるし、

幸薄でバケモンからの求愛しかない可哀想な子にせめて幸せになってほしいなって思ったのよ。

それにただの女の子のツイートに赤面したり、

女の子の話題で表情がくるくる変わったり…あんたのそんな顔初めて見たわ。

この部屋で赤い糸が絡まってるだけで…あの子にぴったりな相手はあんたなんじゃ無いの?って思ったのよ朔にはわるいけど」



やまちゃんはまっすぐと俺を見据えた。

ただの18のガキに言われたことで

赤い糸なんて言葉に流されそうになった。

ドキドキとした。我ながら引く


「いや、だめだよ。俺は朔夜じゃないし町子ちゃんが好きなのは俺じゃなくて朔夜だよ。」


「いくら町子ちゃんが好きな作家でも好きな人には…朔夜には勝てないよ。

だから気持ちは伝えないし、やっぱり…りっちゃんの思い出を大切にしないといけないし」

 

「案外腑抜けなのね。ガンガン行くかと思ったわ」

とやまちゃんは舌打ちした。


俺はしってる。

町子ちゃんの朔夜を呼ぶ甘い声

だから俺ではダメなんだ。



「でもほら、やまちゃんのおかげで

作家としては1番だとわかったしそれだけで充分だよ。ホラー以外のも好きだと思ってる人が居ただけで満足だよ仕事バリバリ頑張れるよ」


そう。たまに出すホラー以外の普通の小説は

評価がきっぱり分かれているのだ。

全て肯定してくれる町子ちゃんはありがたいとTwitterを見て思った


そしてこの、微妙に気不味い話を終わりに持っていきたかった


「…最初は亡くなった人の気持ち考えろよとかムカムカもしたけど、よく考えたらあんたは生きてるし…ほぼ10年近くも尽くしたんだし。」

「私は私が死んだ後自分の大切な人が自分に縛られてる方が嫌だわ。」


「それに…初恋は実らないの。この意味を考えて

私が出たドラマのセリフだけどね。

いらない事を言ってごめんなさいね、ここ以外に友達居ないし…出禁にしないでね。帰るわ」





言いたい放題言った後やまちゃんは

帰宅した。


最近高崎と言いやたら俺のプライベートに首突っ込んでくる人ばかりな気がする。



「あいつら誰の味方なんだよ。意味わかんねー」




リビングの電気を消し、仕事部屋に移動をして赤いソファーに深く座った。


Twitterを開いて町子ちゃんだけをフォローしたアカウントを作った。

アイコンはほんの少しだけいたずらをした。


自分の手と眼鏡。


やまちゃんにあんな事言ったくせに自分は

何をしているのだろう。



結局多分気づいて欲しいのかも知れない。

我ながらめんどくさい。



俺の本を読んで動画を見ているのを知っていた。

新刊も読むのはわかっていた。

だから…短編集の最後に渡せない恋文を書いた



届けばいいけれど






◇◇◇◇◇少年、ギターを弾く◇◇◇◇





昔の俺は勉強ばかりだった。

ただ町子に会いたくてその日を夢みて

勉強に必死だった


兄が昔人間の世界に旅立って

あんな兄でもいなければ寂しいなと部屋に入ったとき置き去りにされた赤いギターやCDを見つけた


「いらないのかな…」


CDを再生すると胸が高鳴った

すごくかっこいい…!その日から

俺は兄が残していった雑誌やCDを聴きあさり

自分でも買うようになった


調べるとバンドをやるとモテると書いてあった、

あの子にも好きになってもらえるかもしれないと

思い必死に勉強の合間に練習した

これがあちらの世界の俺。


こちらにくる時に兄が残したかっこいい服を着て兄が残したギター

を手荷物として持ち込み他は宅配にした

兄は俺の姿をみて「置いてきた黒歴史が…」と恥ずかしがっていた。

失礼すぎた。俺はかっこいいはず



孤独なキッズ時代からの俺の相棒のギターはお古だし年季が入っている。

でもメンテしながら大切にしていた。


先日兄は大切な人を葬儀に出した

しばらく抜け殻の様になり、少し回復すると

やたら俺や町子にウザ絡みをしてきたがきっと寂しいからなんだと

わかっていたから適当に相手をした


先日仕事を終えて住居に帰ると抜けがらになった兄がふらふらと寄ってきて


「さっくん、なんでも好きなもん1つ買ってやるよ…」

と言い出した。

本気で気持ち悪かった


「いや、マジで買うから買わせて。町子ちゃんにも買ったから…」

兄が指さした方向をみると町子がトランペットに憧れる少年の如くサイトを見まくっていた

ジュラシックパークのクッソでかい高級フィギュアがリビングに飾られていた。


「町子ちゃん欲しいものないとか言うから俺が選んだ…」

あの子天使なの?欲なさすぎない?と震えていた。


兄が何故いきなりこんな事を言い出したのかは全くわからない


「じゃ、じゃあ…ギター…新しいの…」


「おう、いいぞ…」

兄は諸事情で決められた範囲しか移動出来ないので

通販する事になった。


「PlasticTree有村竜太朗モデル、夜想・改…」

「え?あのプラまだ活動してんの?懐かしい…」


兄は驚きつつ高いねこれ…と言いながら

購入してくれた。


本当に何故買ってくれたかはわからない

ただ「懺悔…罪滅ぼし…」


とわけわからない事を何度も口にしていた。

たしかに俺は中々ひどい仕事を手伝っているし

マウントポジでボコボコにされたり

後悔罪滅ぼしの心当たりはそれなりにはあった

だからありがたく受け取る事にした。


それからソワソワしながら数日待って欲しかったギター夜想が届き俺は嬉しかった。


兄と町子の前で一曲弾くといい感じと拍手がもらえた。


町子はとても喜んでくれた。

俺は兄みたいに小説も絵本も書けないけど

ギターは弾けるから町子の為にオリジナル曲を作ろうと決意した


大変かも知れないけど。




俺は今日もギターを弾くし

ポイントも稼ぐし、町子をひっそりと守るし…

なんか俺ちょっとヒーローっぽくない?と

思ったりして。





◇◇◇◇初恋は実らない◇◇◇◇




私天のマネージャーは私の最愛の双子の兄だ。

私が今の身体をもらった時に兄は体の持ち主を探しにきたこの子の兄の身体を奪った。

兄も同じ業界に入ればよかったのに目立つのは好きじゃないとマネージャーになった。


私は私の身体の元の持ち主と兄を愛してる

好きで好きでたまらない

けど、兄はたまに私に気紛れに触れるだけで

他にモデルをやってる彼女も居るし、私にそもそも興味なんか無い。色恋管理をされている様な物だ


初恋が叶わないのは自分の経験からもわかっている


幼い恋は自分の気持ちだけが大切で

夢みがちになってしまう。

フィルターがかかってしまうし

中々夢から目を覚ませない

私も。


でも、2度目だと…無くさない為に…ね?


私は友達にとっても、失っておかしくなってしまった朔の兄の事を考えても


あの二人が繋がればいいのにと

思った。あの子が傷付いたりは私は見たくないなとなんとなく思ったから


でも、そうなったらストーカー気質の幼馴染は

病んだ末全員殺して無理心中しそう

あの家なんかドロドロしすぎよね。

複雑すぎるから誰か解決してくれないかしら

お金払ってもいいわ。なんて思いながら

車の窓を開けて夜風を車内に招き入れた


持ちたくもないけど使っている私には似合わないと思っているGUCCIのショルダーから


町子にもらった本を取り出した。感想を送る為に真面目に読む事にした。感想なんてどっかの誰かのをパクればいいのに私ってすごくいい子と

自分を褒めながらページを読み進める



「なにこれ」


最後の短編はまるで遺書や遺言のソレだった


「天、窓閉めな雨降るよ」


私は自分の兄の言葉が一瞬理解できなくなったくらい無理文章をみて硬直した。



小説の最後は、


《俺がいなくなる事で君達は幸せになれる》


《俺は死を以て君達に祝福を贈る》



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