ダンジョン

学校から帰ると、俺は直ぐに凛をベッドに押し倒した。

昨夜凛と結菜に挟まれて寝てから、性欲が抑え切れない。

凛は気付いていないかも知れないが、俺は結菜の匂いも胸の感触も、現実リアルに紐付ける記憶がある。


(メッチャ柔らかった)


普段から凛が横で寝ているだけで、我慢出来なくなる。

その上一晩中、あの胸を押し付けられたのだ。

登校前に凛を襲わなかっただけでも褒めて欲しい。


セックスを覚えて直ぐに自覚した。

俺は人並み外れて性欲が強い。


いつもは、凛を気遣ってセーブしている。

時々箍が外れ、凛を失神寸前まで責めてしまう。

それでも、何とかそこで踏み止まっている。


2人で果てた後、俺と凛は抱きあって身体を休めた。


「ねえ、もう皆待ってるんじゃない?」

「大丈夫。19時集合って連絡してある。それまでは自宅かホームで自習してる。美玖さんもまだ仕事中だよ」

「ゴエモンさんは?ダンジョンの攻略に参加しなくて良いの?」

「中間試験が終わるまでは、余り参加出来ないって言ってある。他のプレイヤーのレベルも俺達に追い付いてないし」


何かを察したのか、凛が俺の脇腹を軽く抓った。


「…流生のエッチィ。私とエッチする準備を整えておいたんだ?」

「そ、そうだよ。昨日もお預けだったし、下手したら今日もホームで寝るんだろ?」

「そんなに私としたかったの?」

「…したかったよ」

「ふふふ、流生、可愛い〜♡一杯して良いよ」




2人とも満足した後、軽く食事を取りログインした。

既に皆揃っていて、出掛ける準備を整えている。

全員が俺の指示を待つ。


「今からデュッヘルンの北のダンジョンに向かう。今日は皆にダンジョンに慣れてもらうのが目的だ。最前線に出る必要はない」

「ルイっちの授業は?」

「勿論やるよ。21時までにホームに戻って、各自夕飯と入浴を済ませて再集合だ」

「ルイ君にしては、随分ゲームの時間が短いのね」

「ノナだけ1人でゲームしてても良いよ。中間試験が終わるまで、凛達はゲームは1日2時間迄だ」

「…また意地悪言う。私も一緒に行動するわよ」



ホームを出ると、第1期で見つけた馬のレンタルの店が、2日目にして既にオープンしていた。

ここで馬を3頭借りた。

俺とノナは馬に乗れるが、あと1人はどうするか?


「ユナ、馬に乗ってみないか?」

「うん!ルイちゃんが言うんなら何でもするよ」


(ユナってヤンぽいから、流生の言う事なら何でも聞いちゃうよ。無茶はさせないでね)

(…ああ、気を付ける)


単純にユナが一番運動神経が良さそうだから選んだんだが、凛の言う事にも気を付けよう。


実際にユナは、かなり運動神経が良い。

馬の乗り方も直ぐに覚えた。

俺・凛、ノナ・レイ、ユナ・リサの組合せで、3頭の馬に乗った。


俺は凛を前に乗せ、その背後から手綱を握った。

俺達にとっては、これがデフォルトだ。

他の4人は、手綱を握る者が前に乗っている。


誰も何も言わないが、チラチラこちらを見ている。

凛も視線が気になるようだ。


「ああもう、分かったわよ!そんな羨ましそうな目で見ないでよ。テストのご褒美は、流生と馬の二人乗りで良い?」


ヤケ糞気味に、凛が大きな声をあげた。


「リンコ、良いの?」

「リンちゃん、本気にしちゃうよ」

「ヤバッ!メッチャ気合い入る」


結菜達から歓声が上がった。


「良いわよ、そのくらい。必ず流生の期待に応えてよ」


3人が大きく頷いた。


「わ、私はテストの問題持って来たら、ご褒美貰える?」

「ノナ!」


いつか言い出すんじゃないかと思ってた。


「バレたら、懲戒処分を受けるぞ。凛達だって、Aクラスどころか退学だ。俺の合格だって取消になる」

「…あぅ、あ、ご、めんなさい」


ガックリ項垂れるノナを見ると、これ以上叱る気にならない。

この人にも、飴が必要なのか?

本当に大人か?


「はぁあ、ノナは4人全員の英語の点数がAクラスの平均点を超えたら、ミッションクリアだ。それで良いか?テストの問題は漏らすなよ」

「…はい」


ノナは返事はしたものの、かなり凹んでいた。

どうしたモノかと考えていると、凛がこちらを向きウィンクした。

任せろって事か?


「…先生、そんなに落ち込まないで下さい。私も少し期待しちゃってました」

「リンコの言う通りですよ。もしかしたら、教えてくれる内容に試験問題が入ってるかもってズルい事を考えてました」

「私も同じです」

「私も」


デュッヘルンに着く頃には、4人のフォローでノナも持ち直していた。

そのまま街を抜けてダンジョンに向かう。


ダンジョンに近付き、最初に目に付いたのは、戦国時代の合戦を思わせる陣だった。

六文銭の幟旗が立っている。

名前は忘れたが、長野県出身者で構成されたクランだった筈だ。


「よう、ルイス。テスト勉強は良いのか?」


この人、いつも俺達を見付けるの早いよな。


「第1期振りですね、ゴエモンさん。あの県人会みたいな人達もTGOに来たんですね」

「抽選に漏れた奴も結構いるみたいだけどな」

「ダンジョンの方はどうですか?」

「お前の見付けた攻略法なんだけどよ、ケシシの葉の採取で手間取ってる」

「ああ、怖いお兄さんのモンスターが手強いですからね。因みに、今ダンジョンに潜ってる人達のレベルって、どの位なんですか?」

「レベル3が一番多いな。チラホラ4に上がる奴も出て来てる」


やっぱり八岐大蛇の経験値は破格だった。

もしかしたら、ケルベロスを倒せるかも知れない。

予定を変えて、最前線に出るか?


「凛、ケルベロスを倒せるか試してみないか?」

「何か手があるの?」

「無くはない。それよりも俺達のレベルが第1期とは違う」

「ルイ君、私も第1期で散々な目にあったの。手があるなら、やってみたいわ」


ノナも乗り気だ。


「どうやって、倒す気?」


凛も興味が出て来たようだ。


「正攻法だよ。ユナがヘイト集めて、俺が3つの頭を同時に斬り落とす」

「物理攻撃で頭3つを同時なんて無理よ」

「本来なら凛の言う通り、物理攻撃じゃなくて範囲魔法で倒すような相手だと思う。だけど、天叢雲剣は遠距離攻撃が出来るんだよ」

「どういう事?」

「斬撃が飛ぶみたいなんだ。ユナとノナが正面でタゲ取って、横から俺が首を斬り落とす。単純だろ?」

「試し斬りをしたいって事ね?良いんじゃない。失敗して全滅したら、今日は終わりにしてテスト勉強すれば良いだけだしね」

「そういう事」


ゴエモンさんが、背後で俺達の話を聞いていた。


「色々聞きたい事があるんだけどよ。レベルがどうとか、天叢雲剣とか。一番はパーティーの人数が増えてる事か。ノナまでいるし。時間が出来たら話を聞かせろよ」

「はい。今日は急ぐんで、これで失礼します」


ゴエモンさんと別れ、ダンジョンの入り口に向かった。

ダンジョンに入る前に、ケルベロス戦の作戦を確認する。


「絶対にルイちゃんの方にはいかせないよ」


ユナの気合いが凄い。


「頼りにしてるよ」


俺が返すと、ユナが嬉しそう顔でコクンと頷いた。


「行くぞ」

「「「「「うん!」」」」」


ダンジョンは第1期と同じ仕様で、現在攻略中の階層まではショートカット出来るようだ。

しかし、俺達はユナ達3人をダンジョンに慣れさせるために、ショートカットはせず、マップ通り1層から進んで行った。


エンカウントする雑魚は、リーパーのなり損ないみたいな骸骨のモンスターと、ケルベロスの劣化版みたいな狼のモンスターだった。

狼はケルベロスとは違い、頭は一つだけだ

尻尾の先端が槍の様に尖っている。


『スケルトンとスピアウルフですよ』


ウィンディがモンスターの名前を教えてくれた。

この程度のモンスターなら、既に俺達の相手にならない。

スケルトンの剣も狼の突進も、ユナが危なげなく盾で受け止める。


ユナの練習には物足りないが、リサとレイの攻撃魔法の練習にはちょうど良かった。

ノナと2人で態と混戦状態を作り、味方を避けて魔法を当てる練習をさせた。

凛の指示を受け、タイミングを計り魔法を放つ。


「ごめんルイ、また当てたちゃった」

「ルイっちごめん、態とじゃないの」


何度か俺とノナに誤爆したが、満足の行く上達具合だ。

2人のMPが0になる頃、目的のケルベロスの近くまで到達した。


「凛は、みんなにコクーンを掛けてくれ。リサとレイはMPをフルに、ユナもHPをフルに回復しておいてくれ」

「「「「うん!」」」」

「ルイ君、私は?」

「ノナは言われなくて自分で分かるだろ」

「カリンちゃんだって指示いらないじゃん?」


ノナが口を尖らせて抗議して来る。

そんな事で膨れるのか?

最近、幼児退行してねぇか?


「ノナもHPをフルにしておけ」

「うん!」


満面の笑みでポーションを飲むノナを凛達4人が呆れ顔で見ていた。


ケルベロスが索敵スキルに反応する距離まで来ると、戦闘音が聞こえてきた。

どうやら先客がいたようだ。


「流生、アイツら…」


見覚えのあるプレイヤーがケルベロスを取り囲んでいた。

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