結菜の本音


流生が隣にいないと、変な感じだ。

何故か寝付けない。

ユナも起きてるのかな?


「リンちゃん、眠れないの?ルイちゃんの部屋に行っても良いんだよ」

「!」


ユナの言葉に、ビクッとした。


「ううん、ここで寝るよ。少し話しても良い?」

「良いよ。私もまだ興奮してるみたいで眠れないから。ゲームだって分かってはいるんだけど、あんな怪獣と闘ったの初めてだから」

「プッ…」


軽く吹いてしまった。


「な、何?私、おかしな事言った?」

「ユナ、怪獣って…。本当に初心者なんだね」

「もう。初めてなんだから仕方ないでしょ。他の人達は何て呼んでるの?」

「モンスターって呼ぶのが一般的かな」

「モンスターか?確かに怪物だね。凄く怖かったよ。ルイちゃんの言う通り、初心者だけであんなのと闘ったら、トラウマになっちゃうよね」

「…普通の初心者は、あんなのと前衛で闘えないよ。VRはモニター見ながらやるゲームと違うんだから。そんなに流生の欲しがってる刀を取りたかったの?」

「…うん」

「たかがゲームだよ。トラウマになるほど怖い思いをする価値ある?」

「でも…、ルイちゃんが…」


この娘もヤンか?


「そんなに流生が好き?」

「…うん、…ごめんなさい」


こうなったら、腹を割って話そう。

聞きたい事も色々あるし。


「ユナ、ううん、として答えてね」

「な、何?」

「そんなに流生の事が好きなのに、貴女達の恋愛観に独占欲ってないの?」

「な、ない訳ないでしょ!」


即答なんだ?


「それって、いずれは流生を奪いたいって事?」

「ち、違う、そうじゃないの…」


上手く言葉が思い浮かばないのか、結菜は暫く考え込んだ。


「私達の独占欲って、1人で好きな人を独占したいって事じゃないの。認め合った女の子だけで独占する事なの。全く関係ない人が混ざるのは嫌。ルイちゃんが、そういう娘とチューしたりエッチしたら、嫉妬だってする」

「それって、何人かの女の子で流生を囲い込むって事?」

「…言葉は悪いけど、そういう事になるね。私達以外の女の子が、ルイちゃんに近付くのは嫌だから」


形が違うだけで、もしかして、この娘が一番独占欲強い?


「それじゃ結菜は、私が流生とエッチしても何も感じないって事?」

「…羨ましくは思う。私もして欲しいって思う。だけど、ルイちゃんとリンちゃんがエッチするのが嫌だとは感じない」

「……」

「私はルイちゃんのになりたいだけなの。リンちゃんから奪いたい訳じゃないの。アリサちゃんもヒマリちゃんも同じだよ」

「それって、流生が結菜のになるって事?」

「違う!確かにそういう人達も沢山いるけど、私は、…、私達は、ルイちゃん以外に彼氏なんか作らない!欲しいとも思わない!」

「それって矛盾してない?流生には何人も恋人がいて良いけど、女の子には他の恋人がいたらダメっておかしくない?」

「…ダメって事じゃなくて、私が嫌なの。ルイちゃん以外の男の子は嫌なの」


この辺は理屈じゃないんだろうな。

私だって、例え流生が許可したって、流生以外はお断りだ。


「これって生理的な感覚だと思う。理屈で上手く説明できない。ルイちゃん以外の男の子にエッチな事されるのは絶対に嫌。ルイちゃんが私以外の女の子に触られるのも嫌。…上手く説明できなくて、ごめんなさい」


何となく分かった。

ここで終わりにしても良かったのに、私は少し意地の悪い事を思い付いてしまった。

結菜を試してみたくなった。


「結菜は、私なら流生とエッチしても嫉妬しないんだよね?」

「うん、しないよ」

「じゃあ、今夜は流生と寝るわ」

「そう、ルイちゃんの所に行くのね。私はこのまま寝るわ。おやすみなさい」

「違うよ。流生をここに連れて来るの。ここじゃエッチは出来ないけど、寝る前に一杯チューすると思う。腕枕で、ギュッてして貰って寝るんだよ。見ているのが嫌だったら、帰ってログアウトしても良いんだよ」


我ながら意地が悪い。

流石に結菜も泣きだ…………さなかった。


「えっ?!ルイちゃんとチューするの見てて良いの?!」

「えっ?!……」

「他の女の子が、隣のベッドでルイちゃんとそんな事したら泣き出しちゃうと思うけど、リンちゃんがすると思うとドキドキする」

「……」

「早くルイちゃん迎えに行って」

「……」


引っ込みがつかなくなった。

渋る流生を無理矢理、私と結菜の部屋に連れて来た。



………………



………………



………………



「ちゅぴゅ、じゅりゅ、れろ、れろ、はふぅん♡、れろれろ、じゅりゅ、」


最初は、隣のベッドでチラ見している結菜が気になって仕方なかったが、流生の舌を吸ったら歯止めが効かなくなった。

流生もスイッチが入ったようで、舌を離す素振りを見せない。


ゲーム内で現実リアルの感覚が再現されるのは、ベロチューまでだ。

エッチは勿論、フェラもクンニも出来ない。

そもそも、アバターに性器は付いていないと思われる。

自分のアソコどころか、胸の先端すら見れないのだから。


チラリと結菜に目をやった。

さっきまで自分のベッドで横になっていた筈の結菜が、私のベッドの脇で膝立ちになり、両肘をベッドに付いて身を乗り出していた。

至近距離で、私と流生のベロチューをガン見している。


目は潤み、息が荒くなっている。

完全に興奮、いや発情している。


「リンちゃん、気持ちいい?」

「「……」」

「あ、ごめんね。邪魔するつもりはなかったの。遠慮しないで続けて」


何なのこの娘?

流生の事が好きなんだよね?

こんなの見せ付けられて、凹まないの?

そういう性癖じゃないよね?


お家に帰ってログアウトしてエッチして来ても良いんだよ」


結菜はそう言うが、そんな事を言われてログアウトできる訳ない。

明日から気不味くてしょうがない。

これ以上続けるのは無理だ。


「流生、もう寝ようか?」

「そうだな、部屋に戻るよ」

「ダメ!リンちゃんがルイちゃんの腕枕で寝るの見せてくれるんでしょう」

「「……」」

「ラブラブな2人を見せて」


結菜はベッドにかぶり付いたままだ。

そんな所で、そんな目で見られたら眠れない。

何を血迷ったか、私はとんでもない事を口走ってしまった。


「流生の反対側なら貸してあげるから、結菜もさっさと寝なさい」

「凛!何言って「本当!?リンちゃん、大好き!」


流生の言葉を遮り、結菜が喜びの声をあげた。

ガバッと私に抱きつき、顔を近付けてくる。


(えっ?!この娘、バイなの?ちょっと待ってよ)


ペロン


キスはされなかったけど、唇の横を舐められた。

流生の唾液が付いていたようだ。


「う〜ん。VRじゃルイちゃんの唾の味は分からないね」

「……」

「リンちゃんの許可が出るまでは、ルイちゃんにチューを迫ったりしないから、間接チューくらいは許してね」


いつもの結菜じゃない。

完全に舞い上がってる。

今更ダメとは言えない。


「えへへ、お邪魔しま〜す♡」


結菜がデレッデレに甘えた声を出して、ベッドに潜り込んだ。


「ルイちゃん、右腕貸して」


流生が私を見ている。

仕方なくコクンと頷くと、流生が動く気配がした。


「嬉しい。リンちゃん、ルイちゃん、おやすみなさい」


流生の腕に頭を乗せたようだ。

私もいつもように、流生の左腕に頭を乗せて、半身を流生に預けた。

私が流生に抱きつくのを待っていたように、結菜の腕が流生の身体に巻き付く。


私は何がしたかったんだろう?

結菜に見せ付けて、諦めさせたかってんだろうか?

自分でも良く分からない。


試してみて分かった事は、この娘達(少なくとも結菜)は、、誰が流生とイチャついても、本当に嫉妬心が沸かないという事だ。

複数人でのエッチにも、全く抵抗はないんだろう。


逆に私達以外の女の子を激しく拒絶する。

自分自身も流生以外は受け入れられない。

まるで動物の群れのような感覚だ。

そんな事を考えている内に眠りに落ちた。




翌朝、寝過ごしそうになった私達を陽葵達が起しに来た。


「「「!」」」


同じベッドで眠る私達を見て驚いたようだが、揉める事はなかった。

寧ろ喜んでいるようだった。


(ユナっち、リンコのOK出たの?!)

(ルイとチューした?した?)

(2人とも急ぎすぎだよ。ただ一緒に寝ただけ。そんなに急に進まないよ)

(次にルイっちと寝るの私の番だよ)

(その次は私ね)

(分かってる、順番は守るよ)


全部聞こえてた。

3人の中で、しっかりルールが決まっているようだ。

流石に先生は参加しないようだが、羨ましそうに見ている気がした。


「みんな遅刻するわよ。帰ってログアウトして支度しなさい」


先生に言われて、皆が帰って行く。

私達も家に帰り、いつも通り支度をして駅まで流生に送って貰った。

流生の口数は、いつもより少なかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る