幕間その2 亜里沙の恋愛観

「ルイィ…」


ルイを思い出すと、指が止まらない。

普段ひとりエッチで、胸に触れる事はあまりない。


ここを何度もルイの背中に擦り付けたんだ。

そう思って胸を触ると、お腹の奥が熱くなる。


ルイに触って欲しかったなぁ。

ユイナは正面からルイの頭を胸に抱え込んでたっけ?

ズルいなぁ。

あの娘、絶対ルイにおっぱい吸わせてたよね。


自分をユイナに置き換えて、ルイを思い浮かべる。


「ルイィィイ…」


ルイの事を考えながら胸を触ると、怖いくらい感じてしまう。

私は一度指を止めて、ボンヤリした頭で、これからの事を考えた。


〜〜〜〜〜


私の母親は結婚していない。

所謂ポリアモリーで、父親が誰かも分かってない。


調べようと思えば調べる事は簡単だが、母親の恋人達のルールでは、それをしない事になっている。

彼らの間には私のような子供が、他にも何人かいる。

恋人の男性達は、平等に養育費を負担している。

勿論、私の母親も仕事をして収入を得ている。


結菜の親は事実婚で、しかも複数婚だ。

父親が何人もの女性と事実婚関係にあり、結菜の母親もその1人だ。


陽葵の両親は法律婚をしているが、オープンマリッジだ。

お互いの他に、恋人を作る事を了承し合っている。



日本人の結婚観も昔とは大分変わってきている。

少子高齢化の原因が非婚率の高さだったという考えも、今では否定されている。


フランスを例に挙げると、21世紀の初め、日本の既婚者数はフランスの約3倍だった。

これに対して、日本の人口1000人当たりの出生率は、フランスの65%となっていた。

未婚の母親から産まれる子供も、フランスでは全体の60%に対して、日本は2%だった。


日本の出生率の低さのは、単純に日本が子供を育て難い国だという事実に起因していた。

未婚での出産は、既婚者に比べて更に子育てが難しくなる。

諸外国では未婚、既婚に関係なく『子供の親』であれば、平等に国の支援が受けられる事が当たり前だった。


少子高齢化が深刻になり、日本全体が限界集落のようになるまでの年数が試算されて、やっと政治家が重い腰を上げた。

重婚を認める法案を出す馬鹿もいたが、先進国の殆どから法律婚が消えていく中、完全に時代に逆行していると、審議にも上らなかった。


財源確保には相当な無理をしたようだが、最終的には出産・子育てのインセンティブが大幅に強化された。

その上で、インセンティブに於いて、未婚・既婚の区別を撤廃した。

遺産相続や社会福祉に於いても、事実婚(内縁関係)が法律婚と同等に扱われるようになった。


強化されたインセンティブを以ってしても、出産・子育てに伴うディスインセンティブと相殺し切れて無いとの意見もあったが、この政策が当たり、日本の出生率は右肩上がりとなった。


未婚で子供を産む女性が増えると、それに対するマイナスイメージも薄くなった。

結婚に関しても劇的に事実婚が増えた。

夫婦関係自体が、法律に縛られない為、その形態も多様化した。

その結果、私達の親のように、恋愛に対してリベラルな考えを持つ者が急増した。


当然の事ながら、子供達の恋愛観は親から受ける影響が大きい。

ルイが私達3人の誰かの恋人だったら、複数人での関係に発展しやすかっただろう。


しかし、リンの母親は亡くなった前夫とも、ルイの父親とも1対1の法律婚だ。

リンも1対1の恋愛が当たり前の環境で育っている。

結菜と一緒にお風呂に入った時も、この話になった。


「アリサちゃん、随分ルイちゃんにご執心みたいね」

「…ユイナだって人の事言えないでしょ、隠す気も無いみたいだけど」

「自分でも気付かなかったけど、ルイちゃんの事は中学の時から好きだったんだよね。こんな形で再開できるとは思わなかったよ」

「私も完全に落ちたわ。私の好きなタイプ話した事あったよね。分かるでしょ?」

「頼りになる可愛い年下だっけ?」

「そうよ。ルイみたいな子、初めて見たわ」

「まあ、ルイちゃんみたいな子がそこいら中にいたら大変だけどね」

「それは言えてる」

「……」

「…ユイナはリンから奪いたいと思ってるの?」

「まさか、ルイちゃんの彼女になれれば十分。誰でも受け入れられる訳じゃないけど、ルイちゃんに他の彼女がいる事自体は問題ないよ」

「だよね〜、私達はそうだよね。リンはどう思うかな?」

「…リンちゃんは私達と違うからね。認めて貰うのは大変そうね」

「でもユイナは諦めないんでしょ?」

「そうね。諦めないんじゃなくて、諦められないって言った方が正確かな」

「…今みたいに積極的なユイナ、初めて見るよ」

「それよりヒマリちゃんはどうなんだろう?」

「う〜ん、好印象持ってるのは間違いないね。あの娘、ちょっと分かり難いところ有るからなぁ、でも私達ほどメロメロにはなってないんじゃない?」

「もし、そうならその時に話し合おう」

「そうだね、無理に誘う事じゃないしね」

「ねぇ、それより今夜さ…」




…………




…………




…………




「マジで?」

「うん、アリサちゃんがしなくても、私一人でもする。ルイちゃんに強烈に覚えて貰う。話をした事が1度しかなかったから仕方ないかも知れないけど、もう覚えていて貰えないのは嫌なの」

「…私もやるよ。ルイに女として意識して欲しい」



テンションが上がっていた私達は、ルイにエロい悪戯を考えた。



〜〜〜〜〜



また思い出しちゃった。


「ルイィ、ルイィ、」


一度止めた指が、また動いてしまった。

ルイを思い浮かべて、何度も果てた。


「はぁぁ、はぁぁ、はぁぁ、」


凛は今頃、ルイに抱いてもらってるのかなぁ?

そう考えると、どうしようもなく虚しくなった。


「ルイィ、私も欲しいよ」


眠りに落ちるまで、ルイの事を考え続けた。

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