ルイスとカリン

「そこ、計算間違ってますよ」

数学の問題を解いてると、流生に間違いを指摘された。


〜〜〜6時間前


明日から始まるTGOのβテストの話で2人で盛り上がっていると、思い出したように流生が言い出した。


「凛さん、宿題終わってますよね?」

「…まだ、です」

「……」


流生にジト目で見られた。


「後で、ちゃんとやるから…」

「ダメ!手伝ってあげますから、やっちゃいましょう」

「へっ?」

「手伝うって言ったんです。持ってきて下さい」

「…あの、私、高校生だよ。ウチの学校、進学校だよ。君、まだ中学生だよね?」

「高1の範囲なら大丈夫です。それと『君』じゃなくて『流生』です」


(何コイツ、生意気!解けるもんなら解いみろ!)


どうせ直ぐに諦めると思い、タブレットに配信された宿題を流生に見せた。


「どう?中学生には無理でしょ?」


ちょっと意地悪だったかな。


「これなら何とかなります。躓いたのは、ここですか?」

私が解けなかった問題を流生がスラスラ解いていった。


〜〜〜そして現在


半分近く残っていた宿題が8割がた片付いていた。


「大分捗りましたね。残りは明日やりましょう。タブレットを同期させれば、TGOの中でも出来るでしょうから」

「……」

「凛さん、どうしました?」

「…流生って私の義弟になったんだよね?私が義妹じゃないよね?」

「凛さんが義姉で間違いないですよ」

「そうだよね…」


何なのこの子?

姉の面目丸潰れだよ。

落ち着いてるし、頭良いし。


「そろそろ晩ご飯だね。流生はこの後、どうするの?」

「ご飯食べたらシャワー浴びて、TGOのアバター作って、明日に備えます」

「シャワー?お風呂入らないの?」

「どっちが先に入っても、凛さん抵抗があるでしょ?夏場だし、シャワーだけで良いですよ」

「…ゴメン。気を使わせちゃうね」

「気にしないで良いですよ。ゆっくり、慣れていきましょう」


ママの言ってた「とっても良い子よ」が分かった気がした。

本当に、弟じゃなくて兄になってくれた方が良かったのに…


「じゃあ、一緒にアバター作ろうか?」

リビングここで?」

「お風呂上がったら、流生の部屋に行く」

「無理しなくて良いですよ」

「無理はしてないよ。流生、変なことしないよね?」

「…しない、と思う」


何、今の間?

もしかして意識してるの?


この日は、初めて家族4人での食事となった。

ママと謙介さんが、入籍して1ヶ月以上経っていた。

流生が緩衝期間を作ってくれたおかげか、ぎこちなさは感じなかった。


お風呂を上がると、私はゲーム機を持って流生の部屋を訪れた。

フルダイブ用のヘッドギアをゲーム本体に接続すると、VRの世界に入れるのだが、流生は本体とタッチパネルのモニターを接続した。


「一緒にアバター作るなら、2人で外から見れた方が良いでしょ?」

「ああ、そうか。フルダイブしなくても、こうやって使えるんだ」


流生が用意してくれたクッションは、間を空けて座るように置かれていた。

何気なくクッションを近付けて流生の横に座ると、明らかに彼の挙動がおかしくなった。


「凛さん、近いです…」


流生が耳まで赤くして、訴えて来る。

やっぱり、私の事意識してる。

何か可愛くなって来た。


「あれ?もしかして流生、エッチな事考えてる?」

「……」

「流生って、女の子慣れしてると思ったんだけどなぁ」

「慣れてないですよ」

「ドキドキしちゃってる?意識しちゃってる?」


私って、Sっ気があったのかな?

流生が可愛くて、ちょっと意地悪したくなっちゃった。


「メチャクチャ、ドキドキしてますよ。自分の顔、鏡で見た事ないんですか?」

「へっ?!どう言う意味?」

「…凛さんが可愛いって言ってるんですよ。風呂上がりに、そんなに近づかれたら、頭沸きます」

「……」


嘘?流生って、こういう事言える子だったの?

ヤバい、私もドキドキして来た。

これ、完全に自爆だ。

一旦、離脱しよう。


「の、飲み物持って来るね。何が良い?」

「お、俺が持ってきます」

「良いから、私が持って来るから」


改めて意識すると、部屋全体から流生の匂いがする。

1人でここに残るのはマズい。

いや、もう手遅れだ。

私も流生を男の子として意識し始めてる。


「それじゃ、無糖のアイスコーヒーお願いします」

「分かった。ちょっと待っててね」


トレーにドリンクをのせてキッチンから戻ると、流生がトレーを受け取ってくれた。

2人で並んで、クッションに座る。

クッションの位置を戻し忘れて、再び肩が触れそうな程近付いてしまった。


「………」

「………」


また、ドキドキして来た。

自慢じゃないが、男の子から告白された事は何度もあった。

だけど、こんなに男の子を意識したのは初めてだ。

流生じゃないけど、頭が沸きそうだ。


「る、流生はどんなアバターにするの?」


何とか平静を装って、本題に入った。


「そのまま、自分の姿を投影します」

「…何で?身バレするかも知れないよ」


確かに流生のルックスなら、ちょっと幼さが残ってるけど、イケメンキャラで通用する。


「俺、他のゲームの攻略で、動画サイトとかに結構顔出しされちゃってるんです。今更隠しても手遅れです」

「…私達、VRで会った事あるかもね」

「かも知れませんね。それに、この姿で一緒にTGOやれば、凛さんも早く俺に慣れるんじゃないかって思って」

「そこまで気を遣わなくて良いのに」

「いや、俺も早く凛さんと打ち解けたいですから。HNも『ルイス』にします。これなら、リアルでもVRでも『流生』って呼べますよね」

「…じゃあ、私もこの姿投影するわ。HNはそうね…『カリン』にするね。流生も私の事、『凛』て呼んでね。リアルでもVRでも呼び捨てで良いわ」

「呼び捨ては、ちょっと…」

「照れないで呼んでみて」

「…凛、これで良いですか?」

「口調もタメで良いよ、姉弟なんだから」

「分かりま…、分かった」


流生との距離が、ドンドン縮まって行くのが分かる。

流生の傍は、居心地が良すぎる。

これ、多分ヤバい。

私って、こんなにチョロかったっけ?



「流生、ピアスしてみて」

流生のアバターに、2人で手を加えていく。

髪は男の子としては少し長目で、カラーはミントグリーン。

私のリクエストで、左の耳にピアス。


(左の片耳ピアスって、由来は『貴女を守ります』って意味なんだよ。流生、知ってる?)


悪戯が成功してニヤニヤしていると、ビックリするぐらいカッコ良いアバターが出来上がった。

実際に流生は、こうなれるって事だよね?



「次は、凛の番だよ」

私のアバターがモニターに映し出された。

私はシレッと、流生の片割れのピアスを右の耳に着けた。


(これで私が、流生の守る女の子になったんだよ)


髪型はルーズサイドテールに決まり、カラーは2色に絞られた。


「赤も可愛いな」

流生が真剣に髪の色で悩んでいる。

それにしても、よくもまあ、可愛いとかサラッと言ってくれちゃうわね。

そのアバター、私の実写なんだけど。

さっきから、顔が熱くて仕方ない。


「じゃあ、アバターをチェリーレッドにして、リアルの方は、明日美容院でアッシュグレーにして来ようか?」

「マジで?」

「うん、流生の好みなんでしょ?」

「あ、なんか、押し付けちゃった?」

「そんな事ないよ。流生が気に入ってくれるなら、私も嬉しいから…」

「………」

「…何か、2人ともテンションおかしくなっちゃったね」

「…我に帰ると、メチャ恥ずかしい」

「言わないで!私も頭、冷えて来た…」


最後は2人で真っ赤になって、アバターの作成を終えた。


「そろそろ、寝ようか?」

「そうだね。おやすみ、流生」

「おやすみ、凛」



急いで流生の部屋を後にし、自室のベッドに潜り込んだ。

リモコンで部屋の電気を消すと、流生の顔が脳裏に浮かんだ。

無意識に右手が股間に伸びる。


ショーツの下に指を潜り込ませると、思った以上に湿っていた。

クチュッと音を立てて、指が膣口に吸い込まれる。

入口付近を掻き回しながら、左手の指でクリを弄る。

「少しだけ」と自分に言い聞かせたが、流生を思い浮かべると指が止まらなくなった。


「あぁん♡、流生、もっと触ってぇ、きちゃう、やぁあん♡、きちゃぅうう、」


腰が浮き上がり、背中が弧を描く。

身体がビクンと跳ねた後、クタッとベッドに崩れ落ちた。

余韻で身体がヒクヒクする。


やはり我慢出来ずに、最後までしてしまった。

今日から、一緒に暮らすんだよね。

ヤバいなぁ、流生に迫られたら、多分拒めないよ。

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