山の一本道

ツヨシ

第1話

道に迷った。

しかも山道で。

この山道はそんなに長くはない。

しばらくすれば市街地に出られるはずだ。

何度も通ったことがある。

しかも分かれ道のない一本道。

迷いようがないはずなのだが、先ほどからいくら走っても一向に市街地に出ないのだ。

――いったいどうなってるんだ?

考えたがわからないし停まるわけにもいかない。

そして少し直線で先がカーブになっているところで、目の前の森に何かが浮かんでいるのが見えた。

よく見ればそれは青いワンピースの長い黒髪の女だった。

――えっ?

と思ったが、カーブにさしかかり女は見えなくなった。

――何だったんだいまのは?

考えた俺は気づいてしまった。

宙に浮かんだ女。

それは首を吊った女だ。

見た感じではそうとしか思えない。

細い山道だというのに、車のスピードが自然と上がった。

そして先ほどと似たような短い直線の先にカーブがあるところで、俺は再び青いワンピースで長い黒髪の女が浮かんでいるのを見た。

――ひえっ!

車のスピードがさらに上がる。

そしてしばらく走ると、前と同じような道で、三度浮かぶ青いワンピースの女を見た。

――!!

もう何が何だかわからない。

俺は狂ったように車を走らせた。

そして気づけば見慣れた市街地に出ていた。

あれはいったい何だったのか。

わからない。

ただ言えることは、少し近道だからといって、俺があの山道を走ることは二度とないだろうと言うことだ。


       終

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山の一本道 ツヨシ @kunkunkonkon

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