259 流血
「……するとあの
「はい、後に残された
どうもこの奇妙な間は慣れないな……とアドリアは考えているが、目の前の
「あの……助けていただいたのは有難いのですが、仲間を追いかけないと……」
「やめた方がいい、君も学んだのであれば
この時代においては伝説となっているが、数多くの魔法使いがこの
まさかその防衛機構が目の前に現れるとは思っていなかったアドリアだが、この
「確かに
「仲間を想う気持ちは理解している、だからこそクリフ・ネヴィルは君たちに危ない賭けを望むだろうか?」
「……なんで貴方にそんなことがわかるんですか?」
「トニーから聞いている、クリフ・ネヴィルは愛するものが望んで死地に赴くのを良しとはしないだろう……」
まるで心の奥底を見抜かれているような、何もかもが知られているような不気味さを感じるが、思いの丈をじっと見つめられているような気がして羞恥心を掻き立てられる。
「……そ、それはそうですけど……」
「どちらにせよ時間をおいて
その言葉にアドリアが反論しようとして言葉を詰まらせる……そうだ、学んだ知識では
反論がないと判断したのか、
「クリフ・ネヴィルが私の認識している存在なら、
「クリフっ!」
「ダメだ、離れろ!」
腹部に突き刺さった骨の槍がそれ以上食い込まないように柄を握る……モーガンの膂力はそれほど強くないため俺の腕力でも十分抑えることができる。
だが油断した……魔法使いが接近戦を仕掛けてくるなんて普通思わないからな、腹部には焼けた鉄が押し当てられたように鈍い痛みが走り苦痛に顔が歪む。
しかも突き刺さった傷口から漏れ出すように魔力が逃げていくのを感じる……
巨人はその手に握る武具を作ろうと考え、様々な武器を作り出した……クラウディオが握っていた
竜が珍重されるのはその骨にも特殊な魔力が篭ることだ……
そして俺の腹部に突き刺さっている
「う、うげええっ……こ、こなくそ……」
腕に力を込めて無理矢理に押し戻していく……モーガンはそれ以上突き刺すことが難しいと判断したのか、舌打ちをすると一気に槍を引き抜き、大きく後ろへと跳躍して距離をとった。
引き抜かれる時にさらにずるり、と何かが抜けた気がして呻き声を上げてしまう……寒い……出血はそれほど多くないのにそれ以上に魔力がそのあたりに撒き散らされている感覚がある。
モーガンはそのことに気がついたのか侮蔑の表情を浮かべて吐き捨てた。
「あらやだ、貴方どれだけの魔力を体に取り込んでるのよ、気持ち悪いったらありゃしない……」
「く、クリフ! こ、こんなに血が……ッ!」
膝をつく俺を心配してヒルダが俺の元へと駆け寄るが、彼女は恐怖と混乱で涙を流しながら出血を止めようと必死に俺の腹部を両手で押さえる。
俺は大きく息を吸い込む……いや大丈夫出血はすぐに止められるし、魔力も再び集めることができる……少しつづ何かが漏れ出すような感覚はあるが致命傷じゃない。
俺はボロボロと涙をこぼすヒルダにそっと微笑むと、ゆっくりと立ち上がる。
「……お前だって変わんねーだろモーガン。人の身でそんな化け物武具使ってるやつなんざ見たことねえぞ?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます