258 針葉樹の槍(コニファー)
「……
「あ、あなたは……誰ですか?」
アドリアの声に反応して
アドリアはふとその人物の声に強い望郷の念が湧くのを感じて、自らの心に違和感を覚える……聖王国に対してではなく魂の奥底、彼女の
ローブの人物はすぐに巨人へと向き直ると、槍を持っていない左手を軽く向ける。
「この
彼の左手に緑色に輝く不思議な魔力が集中していく……アドリアはその輝きを見てさらに強く自らの心臓が跳ね上がるのを感じて思わず胸に手を当てると、恐ろしいまでに高鳴る鼓動を感じた。
血が、彼女の中に流れる
「
ローブの人物がそっと囁くと、彼の左手に集中していた緑色の魔力が、一瞬圧縮されたかのように見えた次の瞬間、まるで
その光を見たアドリアはふと懐かしい記憶を思い出す……少し前、帝国とトゥールインとの戦闘を集結させたあの眩い白い閃光に似た何か、それに匹敵する圧倒的な魔力の爆発。
クリフはあまり多くを語らなかったが、戦場で見たあの
「……こ、これは……クリフと同じ……なんてデタラメな……」
だがあの時のような破壊的な光とは違って、ほのかな優しさ……何か暖かさを感じる光だった。
アドリアが呆然としてローブの男を見ている前でふうっと軽く息を吐き、左手を下げると緑色の光がまるで何事もなかったかのように消え、そしてその場に静寂だけが残る。
光が収まるとそれまで
仲間たちは無事だ……アイヴィーもロランも毒気を抜かれたように、一瞬にしてそれまで苦戦していた敵が瞬きの間に消滅したことに驚いている。
彼女の隣にいるロスティラフもあんぐりと開けてその人物を見つめており、手に持った武器を構えることもなくゆっくりと撮り落とした……それくらい凄まじい一撃だった。
「大丈夫かね? 君たちは冒険者だろう、なぜ
ローブの人物がゆっくりと
その声は優しくアドリアたちへと声をかけるが、呆然としている彼女たちを見て少し不思議そうに首を傾げると何かに気がついたかのように、慌てて深く被っていたフードをあげてその素顔を晒す。
黄金のような金色の輝く髪と、
「……顔が見えなければ警戒をする、人間はそうだったね。私は今は
「コ、
「そうか、
「……ありがとうございます!
ロランが慌てて直立不動となると、槍を立てて胸に手を当てるような礼を行う……その礼に答えるように
その笑顔はどことなく作られたようなもののようにも見えるが、だが敵意はない……アドリアもそれまで構えた武器を収めると軽く会釈をして助けられた礼を述べた。
「危ないところをありがとうございます、私たちは
「
「え? トニー? トニー・ギーニ?」
「は? な、なんでトニーの名前を……」
アドリアとアイヴィーが驚愕で目を丸くしながら
そんな二人を見て不思議そうな顔を浮かべると
「どうしてクリフ・ネヴィル殿がいないのかな?
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