255 三界流転
「……こいつは……なんだよ……」
「わあ……なんでこんなに明るいの……?」
次に出現した扉を開けた俺の前に信じられないような光景が広がっているのが見え俺は思わず呆然とした気分にさせられる。
扉を開けた後巨大な石造りの広間に出たのだが、その風景には見覚えがあったからだ……広間は銀色の柱が天井に向かって建てられており鏡面のような細工が施されているが、非常にシンプルだが金属ながらこの世界に転生してから一度も見たことがない素材……ステンレスのようなものに見えた。
「……うわ……天井から陽の光が差してる……」
ヒルダが感心したように見上げた天井は非常に高く、どこかの王城かのように美しい装飾が施され天井に嵌め込まれている天板には陽光が差し込むガラスの窓が付いており、その窓から火の光が差し込んでいる。
これは……全て同じではないけど東京駅の丸の内改札南口か? 俺の心がざわつき始める……いや落ち着け、全て同じじゃない、改札の向こうに続いているはずの光景は暗く真っ暗な空間が広がっているし、改札の上に掲示されていたはずの改札南口の表示は理解が全くできない文字が刻まれている。
「……どういうことなんだ……俺の記憶を読んでこれを再現しているとか?」
そしてそれに気がついた瞬間、突然それまで明るく陽がさしていたはずの空間が薄暗く、不気味な雰囲気へと変化していく。
自動券売機があった場所には、似たような色とりどりに光り輝く目をもち、券売機の取り出し口である場所にはパクパクと何かを喋ろうとしているのか蠢く人間の口と、そこから伸びる赤い蛇のような舌がチラチラと伸びているのだ。
改札口に並ぶ自動改札機も規則正しく天板が開いては閉じ、中から呻き声のような不気味な声が漏れ出す悪夢のような物体へと変化していく。
近くにあったはずのコンビニ店の店内には乱雑に並べられた手や足、そして恨めしそうな顔でこちらを見つめる誰かわからない男女の顔などが並べられているのが視界に入り、その視線に気がついたヒルダの顔が青ざめる。
「う……なにあれ……」
「悪趣味だな……あまり見ないようにしよう」
記憶にある日本の記憶を冒涜したかのように雑に再構成された気分になって内心イライラとするが……やはりこの
不安そうな顔で俺の腕をギュッと強く握るヒルダ……俺はそっと彼女を抱き寄せると悪夢のような広間の先に見える光に向かって歩き始める。
「まあ、待ちなさいよ……そう簡単に逃げられても困るんだわ」
ギギギギッという軋むような音を立てて、コンビニ店を模した空間のドアが横に開くとそこからニヤニヤと笑う白髪赤い目をした美女……モーガンが現れる。
その手には骨を組み合わせて作り上げたように見える
「……一人で出てくるとは……それより聞きたいことがある」
「ムフフ……何だい? 聞きたいことがあるなら答えてあげるよ」
「……
俺は周りに軽く視線を向けてから彼女へと問いかける……俺の記憶? いやそんな記憶を簡単に引き出すことはかなり難しい……実際には出来ないわけではないし、
それにしてもネヴァンは俺の本当の記憶は読むことはできていなかった……深層心理よりもさらに深い位置にある
「クフフッ……なんだろうねえ? 私もこの
「
「さあ? 読まれて困るようなものでもあるのかい?」
モーガンがクスクス笑いながら周りを軽く見回す……チラリと唇の周りを舌で舐め回すような仕草をすると、手に持った
彼女の周りにゆっくりと不気味な影が一〇体以上怨嗟の呻き声を上げながらユラユラと立ち上っていく……
「……ヒルダ、
「実体がないから武器が効かない、生物の命を吸収する……だっけ?」
「そうだ、だからこれが必要だ……
俺の詠唱と共に彼女が右手に持つ
それを見た
モーガンは歪んだ笑みを浮かべたまま
「そうでなきゃね! あんたは私が相手してやるよぉ!
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