250 平和なんて儚いもの
「さ、出かけるかー……」
俺は仲間と共に荷物を持って歩き出す……馬車は
というのも命失われし沼地とやらはシャアトモニアから数日の距離にあり、途中に村などは存在せずしかも馬車が通れるような街道は整備されていないのだとか。
まあ
ということで馬は戦闘に向いていないし、いざ
とはいえ徒歩での冒険というのはかなり久しぶりで、最近は長距離移動なども多かったために徒歩での移動などは本当に少なかったが、割と懐かしい気持ちで俺は目的地まで歩き出している。
「元気ねえ……ったく……」
「あれ、すぐに疲れますよ、断言します」
アイヴィーとアドリアがやれやれと言った様子で俺を見ており、ロランとロスティラフも苦笑いを浮かべて俺の後をついてきている。
ヒルダは少し元気がなさそうだけど、その後ろをとぼとぼと歩いておりまあこちらも問題ないだろう。
俺は歩きながら
低級の
モーガンが再現しようとしている神話、
魔法大学にいた
「なあクリフ、
なぜか不安そうな顔をして俺に尋ねてくるロランだが、あれ? この人こんな表情をするような人だっけ? と今更ながら少し意外な気分になるが、魔法に精通している俺たちと違ってロランは普通に
「伝説の存在だけど、本当にいるかどうかってのはわかってなかったと思うよ」
「そっかー……俺さガキの頃によく不死の魔法使いが来るよ! って脅かされて……人間相手の戦闘なら遅れを取る気はないんだけど、
「あれ? なんですロランはもしかして不死の魔法使いが怖いんですか?」
アドリアはイタズラっぽく笑顔を浮かべてロランに微笑む……まあ彼女も魔法学は散々学んできているから、実際に不死の魔法使いなんてものが存在していないというのは頭で理解できているわけだしな。
だがロランはそんなアドリアに黙って頷くと、大きくため息を吐く……あれ? 戦士として勇敢な彼にしてはかなり珍しい表情だな。
「そりゃガキの頃に散々刷り込まれてんだぞ、怖くない訳あるか……アドリアだってそういうのあるだろ?」
「私は全然怖くないですねえ……不死の魔法使いなんてものが存在しないって学びましたからね、あくまで伝説でしかないって」
「そういや魔法大学でもそんなこと言ってたね」
アイヴィーとアドリアはお互いに顔を合わせて同意するように微笑んでいるが、まあ俺が子供の頃に学んだ
だが俺の知識、いや取り込んだアルピナの知識になるがそれが間違いだ、と知らせてきている……
それはまごう事なき現実であり、いつか俺たちの前にも姿を現すかもしれないという警鐘を鳴らされている気がしている。
「ま、冒険してりゃそのうち出会うかもしれないでしょ……今は目の前のモーガンとかいう魔女だよ」
「あら……ずいぶん強い魔力……」
傅く
魔女モーガン……ブランソフ王国の暗部とも言える命失われし沼地を拠点とする魔法使いは興味深げにその推奨に映るクリフをじっと見つめる。
「……冒険者にしてはずいぶん強力な魔力、もしかして
モーガンは少しの間考え込む……確かにこの沼地を拠点にして数十年、彼女は
つい先日、
モーガンが軽く指を鳴らすと沼地全体の雰囲気が一気に変わる……自らの身を守るために配置してある
彼女の支配下にある
「でもまあ、
水晶に映るクリフを眺めながら、自らが感じたことのない言いようのない不安と違和感を認めてモーガンはゆっくりと研究室を出て目の前に広がる広大な沼地の前でほくそ笑むとその見事な白髪をかきあげる。
その魔力の高まりの応じて沼地の奥底からゆっくりと巨体が姿を表していく……腐り切った肉体と泥に塗れた白骨が露出した巨体、一〇メートル以上の巨大な体を揺らしながら沼地より超大型の
「さあ、無粋な冒険者を駆逐しましょう……全ては
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