207 歴史に名を残す者
「こっちだ、こっちだ! ほらかかってこい!」
ジャジャースルンドとロスティラフは巨大な
正直言えば、この攻撃は嫌がらせ程度の威力しか与えてはいないのだが……それでも
「案外……知能は低そうですな。こんな陽動に簡単に引っかかるとは……」
「ああ、予想以上にコントロールが難しい化け物なのかもしれない、先程までは整然と行軍をしていたところを見るとクリフとアルピナが戦闘中なのだろうな」
ジャジャースルンドは
投石は巨人の腹へとぶち当たり、傷をつけるが小傷のレベルだ。恐ろしく外皮が硬い……ジャジャースルンドのスリング攻撃は人間なら頭を吹き飛ばすくらいの威力だ、それが通じないと言うことは今持っている武器で倒せるだろうか? ロスティラフを見ると同じ思いのようなのか頷いて
「こちらはなんとか突き刺さりますがね……決定打にはならんでしょうな」
ロスティラフの矢は巨人の足へと刺さるが……これもまた硬い皮膚に阻まれておりそれほどの効果は出ていない。二人は再び走り始めると、その後を追って
あまり知能の高そうな生き物でなくてよかった、と思いつつジャジャースルンドはどうやってこの化け物を倒せばいいのか悩みつつ、クリフの仲間であるロスティラフがまた信頼のおける人物であることを再認識していた。
実はセプティムから依頼を受けて、ジャジャースルンドは部下の
そのためこの冒険者パーティは、司令塔役のアドリアの指揮の元、盾役のロラン、撹乱接近戦をアイヴィー、遠距離と補佐をロスティラフ、魔法攻撃をクリフと恐ろしくバランスの良いメンバーで構成しているのが最大の特徴で、相互に連携をすることによって最大の戦闘能力を発揮していると認識している。
彼らの作成した報告書はセプティムの手から
「さすがだな……クリフも良い仲間と巡り合ったものだ……」
「私の能力……いや仲間のことはご存じでいらっしゃるでしょう? だからこそ私を同行させたのでは?」
不意に放たれたロスティラフの言葉で、流石に誤魔化しきれないなと感じたジャジャースルンドはスリングを放ちながら口を開く。
ロスティラフもジャジャースルンドと視線を合わせずに
「……いつから気がついていた?」
「大荒野で冒険をしているときに視線を感じましてな……最初はアイヴィーのお目付け役かと思っておりましたが、一向に視線が減らないので。流石にあれは気が付きますよ」
ジャジャースルンドは流石に敵わないと言ったふうに牙を剥き出しにして笑う。いかんな、部下にもっと隠密行動や斥候の訓練をしなくては……。
「いや……参った。部下の訓練不足であるな……皆傑物とは思っていたが、不快に思っていたなら申し訳ない」
「アイヴィー、ひいてはクリフがこうも手際よく償還されるなどおかしいと思いますからね……でも、他の仲間は気がついておりませぬよ」
ロスティラフの放った弓矢が、巨人の肩口へと突き刺さり、巨人は大きく咆哮して腕を振りかぶる。二人は別々の方向へと一旦回避し、攻撃対象を分散させると巨人の攻撃は地面へと叩きつけられる。
二人はその行動を見ると再び少し離れた場所で合流し射撃を続けていく。
「わかってはいたがクリフは良き仲間に恵まれているな……戦争が終わったら帝国に残る気は?」
「クリフが残るのであれば。そうでないなら彼について冒険者を続けるつもりです……私にとって彼は友人でもあり恩人なので」
ロスティラフの言葉にジャジャースルンドは笑顔を浮かべ、巨人へとスリングを打ちかけていく。良い仲間と出会ったな……クリフ。
お前は本当に人に愛されておるな……小さかった頃のクリフの笑顔を思い出して少しだけほろ苦い気分になる。
「そうか、残念だ。貴殿なら素晴らしい斥候頭となったであろうに。だが……クリフは帝国で押し込めていい人材ではないな」
笑顔を浮かべるジャジャースルンドの横顔を見て、ロスティラフも少しだけ表情を緩める。この
だからこそ成長していくクリフのことを見守ることが正しいと信じているのだろう。
「そうですな、私は彼が歴史に名を残す人物になると心より信じておりますよ……仲間もそう思っているでしょう」
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