208 フィナーレへと向かう
「クリフ、もう一度言うわよ? 私のものになりましょうよ?」
「断る、何度も言わせないでほしい。お前はあくまで敵だ」
俺は目の前で不気味な姿へと変化し、笑みを浮かべるアルピナへと指を突きつけて応える。そんな俺の姿を見てアルピナは頬を押さえてなぜか蕩けるような笑顔を浮かべている。
「ああ、なんて男らしくなって……やはり私を孕ませてくれるのはあなたしかいないわ」
「いや、人の話聞いてるか? 嫌だって言ってるんだよ」
俺は吐き捨てるような答えを返すが……アルピナはそれでもニヤニヤと笑っている。恐ろしく余裕がある……それもそのはずだ。先ほどまでの攻撃で受けた傷が全て元通りに、と言うより先ほどまでよりもはるかに恐ろしい魔力を放出している。
正直言って一〇年前とは比べ物にならないレベルに感じる……なんなのこの化け物どもは。一度倒した相手が強力になって戻ってくる……セプティムさんが一度倒したというクラウディオは恐ろしく強かった。
まるで前世で見た漫画の主人公が死にかけると強くなっていくというアレだ、でも目の前でそんなことをされるとこちらとしては傍迷惑……いや恐ろしさすら感じる脅威でしかない。
「クリフ……」
アイヴィーが心配そうな顔で俺を見ている。大丈夫なんとかする……そんな気持ちを込めて俺は彼女に軽く頷く。再び前を向いた俺の眼前にアルピナの手があった。いつ動いた? アイヴィーも俺も全く反応できなかった。
咄嗟に防御姿勢を取ろうとするが、アルピナの手は俺の顔面を掴み……肌に彼女の鋭い爪が食い込んでくる。
「遅いわ」
「なっ……」
俺は顔面を掴まれたまま地面へと叩きつけられて俺はアルピナの手を両手で掴んで、それ以上の追撃を防ごうとするが……アルピナは笑顔のまま俺をさらに地面へと押し付ける。
アイヴィーが慌てて俺を助けようと
「びっくりした? ねえ? あなたが一〇年前に後ろから攻撃してきたでしょ……だからね私も対策を講じているのよ」
アイヴィーの攻撃を見る器官……つまりアルピナの顔はもう一つ、後頭部にもまるで
あまりの醜さにアイヴィーは少しひるむが……再び剣を構えてアルピナの攻撃を受け流していく。
「くそ……なんて醜い……これがお前の本性か!」
「あらお嬢ちゃん、本性なんて醜いものなのよ。貴族然としているけど……あなたの本性はクリフに抱かれることを喜びとした肉欲に塗れた阿婆擦れじゃないの」
アルピナの裏の顔……
俺はというと必死にアルピナが俺の顔を押さえつけてる腕を跳ね除けようと力を込めるが……まるでびくともしない。なんて馬鹿力なんだ。
「くそっ……この……」
「いいわねえ、クリフぅ……美しい女性の体を好きなだけ楽しめて……あの少し年上の女性や、あの王女様もそのうち手に入れる気なんでしょう? 美女を侍らせるのは男の夢だものねえ、楽しめそうねえ……クリフぅ」
ニヤニヤと笑いながら……舌をずるりと伸ばして俺の頬をピタピタと叩くアルピナ。カ、カレンとヒルダを俺がなんとかしようと思ってるとでも?!
あ、いやカレンはストレートに好意を向けられているのでちょっと考えちゃってるけど……ヒルダは守備範囲外だ。
俺は
「クハハハッ! 図星なのねえ……この色男さんは」
「ず、図星って……俺がそんなことするわけないだろ! 見損なうな!」
俺は咄嗟に
当たらない……アルピナの動きは恐ろしく速く、まるで小型の蜘蛛が人間では追えないような速度で動くことに似ている。だたあの大きさと重さでそんなことができるのは脅威でしかないのだ。
「クリフ! 聞いてたけど……ヒルダはダメよ?」
アイヴィーが俺に駆け寄る……が、次の瞬間俺の腕を少しだけつねると、不満そうな表情を浮かべている。え? なんでそんな顔してるんですか、この戦闘中に。
「クハハ……妬けちゃうわねえ……でもどうしようもなく腹が立つわ」
その言葉と同時に、彼女の背後に巨大な闇を凝縮した球体が生み出されていく……なんだこの魔力は。俺たちが身構えるとアルピナは再び歪んだ笑顔を浮かべる。
「ではそろそろフィナーレといきましょう、単純な話魔力を集めてぶつけるだけでも、魔法としては成立するの。だからこれは純粋に私の魔力を集中させただけ、受け止めてね」
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