203 アルピナとの再戦
「なんだあの化け物は……」
俺は帝国軍の布陣する陣に向かってあまりに巨大な不気味すぎる外見の巨人が歩いていくのを見て絶句する……。
馬を走らせているアイヴィーも流石に巨人の姿を見て息を呑み……彼女の後ろにいる俺の顔を不安そうに見て口を開く。
不安そうに彼女の揺れる瞳を見て、俺も彼女の言いたいことをある程度理解した。
「クリフ……この戦場は何かおかしいわ……私達はそこへ行こうって話だけど、このまま逃げても文句は言われないと思うの」
「わかってる、でも俺はセプティムさんのために戦いたいんだ……ごめんよ我儘で。もしついていきたくなければすぐに俺を降ろして引き返してくれ」
アイヴィーはそれまで走らせていた馬を手綱を引いて止め、じっと俺の顔を見つめている。
俺は彼女の腰に回している手に力を込めて、少しだけ馬上で彼女を抱きしめるような格好になる。そんな俺の手にそっと手を添えると、アイヴィーはぽん、と軽く俺の手を叩くような仕草をすると笑顔を見せる。
「わかってるわ、私はあなたが赴く場所に必ず同行する……あなたが死ぬときは私も一緒よ、もう決めたの」
「ありがとう……でも君を死なせたくはないな。俺も死にたくないし……」
これは本心だ、誰もまあ死にたいと思って戦場なんかに赴かない。俺だっていつも戦う時は死ぬ危険をできるだけ回避したいと思って戦っているからだ。
でも目の前の巨人はそんな自信や自負をかき消すような不気味な姿をしている、まるで蛙のように潰れた頭部に金色の瞳、そして幽鬼のような青白い巨体を震わせながら巨人は歩いている。
こんなバカみたいな敵を呼び出すのは
「お熱いのね……少しだけ妬いちゃうわ。トゥールインではあんなに素直だったのに」
「アルピナッ!」
いきなり声をかけられて俺たちは咄嗟に馬を降りて武器を構える。この声に聞き覚えがある……
俺は声の方向へ
「クリフ……あんなに私は尽したのに、どうして出ていってしまったの? 私はあなたに全てを捧げる気でいたのよ?」
「バカなことを……クリフが貴方に籠絡されるわけはないでしょう?」
紫色の舌で軽く舌舐めずりをしてから、アイヴィーへと
そんなアイヴィーを見てクハッと歪んだ笑みを見せるアルピナ……俺は苦笑いを浮かべながら彼女へと話しかける。
「あの巨人はお前が呼び出したのか? なら倒すしかないが……」
「そうね……あの
アルピナは俺に笑みを浮かべる、恍惚としたような目で俺を見つめる……やはり最後までやらなければいけないということだろうか? 俺はトゥールインでの彼らの言動や、表情……そして少しの間だけだが、なんとなく分かり合えたような気分が全く意味がなかったという事実を感じて、ため息をつく。
やはり敵でしかない、ということだろう……あの時俺を介抱したり、優しく語りかけたのは仲間に入れるための行動でしかないということなのだろうな。
「分かり合えないな……お前らはやはり敵でしかないな」
「そうね……では殺し合いましょう、愛しい人よ……命なき貴方の死体を愛でるとしましょう」
その言葉にアルピナは嬉しそうに笑う……彼女の背後に複数の
「無茶苦茶だな!」
俺は
子供の頃にアルピナの魔法を見て必死に模倣して作り上げた魔法……これしかない。
<<対象……
<<
<<
「くらえ!
俺の詠唱と共に、
アルピナはその様子を見て本当に嬉しそうに笑う……まるでわかっていた、と言わんばかりの、さらには明らかに快感を感じているような……大きく歪んだ笑みを見せて
「やらせないっ!」
「クハハッ! クリフの伴侶……あなた実に可愛いわよぉ!」
アイヴィーが俺とアルピナの間に割り込むと、
その攻撃を受けて、肉体からドス黒い血を流しつつさらに
思いがけない一撃にアルピナは杖の部分を叩き込まれた顔面を押さえて後方へと飛び退るが、その顔は歓喜に歪み、大きく口を歪めた笑みを浮かべている。
「ぐはっ……接近戦までこなせるように……ッ! さすが……さすがクリフ……貴方はやはり……私を受け入れるべきだわ!」
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