195 仮面の美少女剣士(身バレ)
「お、おいクリフあいつは何を言っているんだ?」
「クリフ……何で答えないんだい……」
不安になったのかベッテガとカレンが俺の顔を見つめて不安そうな表情を浮かべている……やられた……ご丁寧に今いる仲間が急造の仲間で、俺と行動している時間がそれほど長くない、ということを利用して離間を諮ってきたのだ。
「俺は……普通の……人間だ……それ以上でもそれ以下でもない」
苦し紛れに俺は言葉をなんとか発するが……その言葉が上滑りしている気がするのは、自分でも認識している。
カレンが何かを言いたけに、口を開こうとしてグッと奥歯を噛み締める。
ベッテガは俺の顔とクラウディオの顔を交互に見ながら、まるで人ではない何かを見るような目で……そして、何かを言おうと口を開きかけた、その瞬間。
「さて……ここまで長々と話を聞いてくれてありがとう。私の目的は、使徒を取り戻して仲間に引き入れること……つまり、今のお前たちなら容易に、目的が達成できる」
その言葉と同時にクラウディオが俺に向かって走り出す……あまりに自然な動きにベッテガが進路を妨害するための動きが遅れる。
「し、しまった……!」
焦って
「目が! な、何?!」
彼女の眼前で炸裂したのはいつぞやのガエタンが用いた炸裂する小石……カレンは思い切りその炸裂を受けてしまい、目を押さえて立ち止まる……クラウディオは凶暴な笑みを浮かべて、とても鎧を着ている重装甲の戦士とは思えない速力で俺に迫ってくる。
「
俺は最速で放てる一手として魔法の槍を放つが……クラウディオは超高速で飛来する槍を
「うげぇっ!!」
凄まじい……まさにハンマーのような衝撃を受けて俺は悶絶しながら数メートル後ろに弾き飛ばされ、地面に転がる……慌てて飛ばされた勢いを使って、着地し体制を整えようとした眼前に、
「さて、足を破壊させてもらおう……次は逃げられんようにな」
「「クリフ!」」
ベッテガとカレンの悲鳴に近い声が響いた次の瞬間に、風を切る音が聞こえ……クラウディオがその音に反応して
「な、なんだ?」
「はっはっは! この腐れ
底抜けに明るい、そして俺が心から大事に思っている女性の……アドリアの声が響く。
「あ、アドリア?!」
俺が声の方向を見ると、そこには勝ち誇ったような笑いを浮かべるアドリアと、その隣で混合弓に次の矢をつがえているロスティラフの姿があった。目を押さえているカレンにはヒルダがいつの間にか彼女を守るように立っている。
「な、仲間……? ガッ!!」
クラウディオがつられてその方向を見ると、その横顔に
「はっはっは! 見たか
アドリアがなぜか勝ち誇り……仮面をつけたアイヴィーは、俺の呆然とした視線に気がつくと急にモジモジし始め……勝ち誇っているアドリアにアイヴィーが本当に恥ずかしそうな消え入りそうな声で呟く。
「あ、アドリア……流石に仮面の美少女剣士はちょっと……恥ずかしいんだけど……」
その言葉にアドリアがアイヴィーに指を差して語りかける。
「ダメですよ! 仮面の美少女剣士って設定じゃないとあなたがここにきたことがバレちゃうでしょ!」
「で、でも……みんなもう私だってわかってそうな顔してるし……」
ま、まあ俺も一発でわかったくらいだし……ベッテガはポカンとした顔をしていたが、急に状況を理解したかのように笑い出す……。カレンはようやく視界が戻ったようだが、周りを見渡してポカンとした表情をしている。
「仮面の美少女剣士……ってねえ……ワハハ! いや助かったよ」
思い切り腹を抱えて笑い出すベッテガに、仮面をつけたアイヴィーはムッとしたかのように少し肩を怒らせるが……どうやらクラウディオはまだ来ないとわかって、俺に駆け寄ってくる。
「大丈夫? もっと早くこうするべきだったわ……あなた以上に大切なものなんて、なかったのに……ごめんなさい……」
彼女はそっと俺を抱きしめると、少しだけ体を震わせる。そうか……彼女も色々あったんだな……俺はホッとした気分で彼女を強く抱きしめ返す。
「ありがとう……来てくれただけでも本当に嬉しいよ」
ああ、懐かしい彼女の匂いだ……俺はとても幸せな気分に浸って、少し気が抜け始めていた。
「クフフ……フハハ……」
突然笑い声が響き……倒れた木々を押し退けて、傷だらけになったクラウディオが姿を現す……その姿は満身創痍だが、目は爛々と輝いており口から青い血を流しながら……笑う。
「まさかここに仲間が来るとはな……使徒はよほど慕われているようだ……仕方ない」
クラウディオは懐から何かの袋を取り出すと、それを地面に向かって投げつけ……一瞬大きな音と、黒い煙が濛々と立ち上る。
「な、なんだ!?」
「トゥールインに帝国軍として攻め寄せてきた時に……次はどちらかが死ぬまで……戦い会おうぞ、使徒よ!」
その言葉とともに濃密な彼の気配や殺気が溶けるように消えていく。黒い煙は俺たちの目や喉にかなりの刺激を与える匂いを発しており、その場にいる全員が涙ぐみ咳き込んでいる間に、完全に姿を消していた。
「くそっ……逃げられた……」
俺は歯噛みするが……あのまま戦っていたら確実に俺は足を砕かれて、
俺の腕にしがみついたままのアイヴィーを尻目に、そっと俺の胸にポスン、とアドリアの体がぶつかってくる。俺が彼女を見ると、アドリアはそれまでの笑顔から一転して、今にも泣き出しそうな顔で俺を見つめる。
「……心配したんですよ……死んだかもって言われて……私……そんなことになったら耐えられない……」
アドリアは俺の背中に手をそっと添えて、強く自分の顔を俺の胸に押し付けた。俺はそんな彼女の頭をそっと撫でる。
「ごめん、本当に心配かけた……」
そんな俺たちの様子を見て、カレンが少しだけ寂しそうな顔で見つめている。そんな彼女のそばにベッテガがやってきて、肩にそっと手を置く。
「カレン大丈夫か?」
「……あんなの見ちゃうとね……あいつ本当に愛されてるんだな、って少しだけ嫉妬しちまうよ……」
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