194 変化させる能力
「凄まじい……これほどの魔力を発揮する魔法使い……」
煙の向こうから、クラウディオが姿を現す……左腕は爆発の影響で吹き飛び、肩口からちぎれてしまっている。左手に持っていた
「あれほどの魔法で……倒せてないだと?」
ベッテガが生きているクラウディオを見て……驚きつつも先程までの少し恐怖を浮かべた表情から、少しだけ普段の彼に近い顔に戻っている。
彼らにとっても初めて見た魔法だろうが、それまで魔法に対する絶対防御を誇っていた
「クリフ……やれるよ!」
カレンが
「神話の時代……フラウエンロープと呼ばれた希代の魔法使いが存在した……」
クラウディオが突然語り始める……彼は失った腕を確かめるように左肩をさすると、苦笑いのような顔を浮かべて俺を見据える。
「その魔法使いは魔法という技術を、体系化して大陸全土へと広めた……なぜか?」
俺が聖王国の魔法大学に入る前、サーティナ王国の魔法大学で学んだ歴史……魔道士の父とまで呼ばれた大魔法使いが突然現れ……弟子となる一三人の
魔法体系が組み上がる前の魔法とは……記録に残っている限りは、呪術のようなとても原始的なものだったと伝えられている。
「そもそも魔法の体系化をしよう、などという発想がどうしてできたのか……枠組みを作るという存在……それは一体なんなのか?」
それは俺も疑問に思っていた……原始的な魔力の行使しか知られていなかった状況から、恐ろしく体系だった魔法という存在を生み出したフラウエンロープとは一体どんな人物だったのだろうか?
歴史書を何冊も読んでもその答えは載っておらず……なんとなくその後俺は魔法を使っていたのだが……この
「あまり知られておらんが、フラウエンロープはどこで生まれ、どこで育ったか知られていない。急に、湧いて出たように歴史の中に名前が出現する……まるで
そうだ……歴史書を見ていて、俺もそれは疑問に思っていた……でも歴史の中ではいきなり公明な人物が台頭する、ということはそれほどおかしな話ではないため、あえて考えていなかっただけなのだ。
「クリフ、時間稼ぎだ! 耳を貸すな! ……きゃあぁっ!」
カレンが
カレンは数メートル一気に投げ飛ばされるが、相手を倒すためではなく距離をとるための投げだったため体をうまく丸めて着地すると、再び武器を構える。
「今私は使徒と話をしている……邪魔をするな」
クラウディオはとても……残念そうな顔でカレンを見ると、再び俺に視線を移す。ベッテガがカレンのそばに近寄るのを見てから、俺はクラウディオに視線を移す。
「お前の魔力は恐ろしく純粋で粗野だ……体系化されたはずの魔法は、その用途、目的、そして威力などが定められている。これは魔法を効率よく使うために構成された言わば
クラウディオは左手をグッと握りしめると……俺に向かって突き出す。……食らった俺だからこそわかる、とでもいいたげな顔だ。
「それで? 意図した魔法がそれ以上の効果を生み出すことだってあるだろう?」
俺は表面上は平静を保っているが、内心かなり焦っていた……クラウディオという目の前の
『何かに気がついている?』
俺の動揺を見透かしたように、クラウディオが再び歪んだ笑顔を見せる……その答えを待っていた、と言わんばかりの顔だ。
「そうだな……
そう……チートとも言える
「フラウエンロープの既成概念を壊す能力、そう……これは異能だ。それはなんだろうな?」
とにかく戦士だと思っていたクラウディオがあまりに冷静に状況と証拠から、何かを掴んできたことに驚きを隠せない。それ以上に何をいいたいのかわからないが、彼が言葉を使ってこの場を掻き乱そうと画策していることだけは理解できる。
そんな俺の顔を見たクラウディオは大きく声も発さずに笑うと、口を開く。
「我が主人
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