145 金色の女剣士と斧持つ闘士
「これより、冒険者
城の中庭に俺たち
「
山賊たちはアイヴィーへと侮蔑の言葉を投げつけ……この場では完全にアウェーだ。ただ彼女はその言葉が聞こえていないかのように、
風で彼女の美しい金髪が靡く……赤い目が煌めき、幻想的な光景が広がっている。
非戦闘員と山賊の一部は、中庭に差し込む日の光を浴びる彼女の美しさに見惚れ……口々に話をしているのが俺たちには聞こえている。
ふふふ、そうでしょう、そうでしょう。アイヴィーは美しいんだぞ、そして彼女の恋人はこの俺! もっと褒め称えてくださいな、俺のことも! ふと目が合った彼女が俺に笑顔で小さく手を振る……その視線の先にいる俺を周りの山賊が発見して、嫉妬や怒りに近い視線を向けてきた。
「クリフ、今ろくなこと考えてないですね?」
あまりの数の視線にたじろいだ俺に、アドリアがジト目でそっと囁く……すいません、でしゃばりすぎました……。
「ジブラカンの勇士……アンデルベリ、出ませい!」
パウルの宣言と同時に……巨大な
防具となるものは皮の肩当てだけを身につけ、腰に
「こんな小娘相手とは……腕の一本くらいは覚悟してもらおうか」
アンデルベリの視線にも動じず……アイヴィーは赤い目を煌めかせて咲う。
「やれるものなら、やってご覧なさい」
「では、はじめよ!」
パウルの宣言とともに、アイヴィーは
すぐにアンデルベリが距離を詰めて、
思っていたよりも攻撃速度が速い。力任せの一撃だが、きちんとした訓練を受けているのだろうというのがわかる。
じっと動きを観察している俺の顔を見て……パウルが得意げに笑っている。決闘の様子を見ているヒルダは無表情のままだ。
アイヴィーはひたすらに回避に専念している。彼女が反撃しないのは、単純に相手の疲労を待っているからだろう。その証拠に彼女は口元に笑みが浮かんでいるし……かなり余裕を持って戦っているのがわかる。
対してアンデルベリは当てようと必死に
「この、ちょこまかと……」
アンデルベリの攻撃が疲れで雑に、そして大振りになってきた。そろそろだな。大きく振りかざした
「さてと……まだやるかしら? もう一度立ち会いからやり直しても良くてよ」
アンデルベリは顔を赤くしたり青くしたり……まあ前世の信号機のように色を変えながら歯噛みすると、少し間を開けてから、
「俺の……負けだ……癪だが仕方ない」
その言葉にパウルががっくりと項垂れて、山賊たちが悲嘆に暮れた叫び声を……一部は怒号を浴びせているが……中庭に凛とした声が響く。
「決闘は終わった! 神はジブラカン王国に採決を下した! 目の前にいる冒険者と新たなる約定を交わせと! 異論はあるか!?」
ヒルダが椅子から立ち上がって全員に聞こえるように宣言する。よく見ると少し目に涙が浮かんでいる。細い肩も震えているように見える。生まれ育った場所を捨てる……いや、捨てさせられる。それがどれだけの屈辱だろうか?
しかも決闘に負けて……だから。俺にはなんとなく、その気持ちがわかったような気がした。俺も前世という居場所を強制的に捨てさせられたようなものだから。
その宣言で山賊たち、非戦闘員も含めてが首を垂れて……ヒルダの前に跪く。人によっては涙を流しながら、中庭に人々の悲嘆の声が響いている。
ヒルダはそっと涙を拭うと、一度自分の臣下を見渡した後に、そっとパウルの肩に手を置き……優しく微笑むと俺たちに向かって向き直り、頭を下げる。
「冒険者……
俺は向き直るとそっと跪き……ヒルダ……いや、ジブラカン王国の正統なる後継者であるヒルデガルドへ頭を下げて口を開いた。
「ヒルデガルド王女殿下……私クリフ・ネヴィルはジブラカン王国の代表たる殿下との交渉に、責任を持ってあたらせていただきます」
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